中国のブロックチェーン・プロジェクト:金融サービスから大手企業、政府の取り組みまで

中国のブロックチェーン・プロジェクト:金融サービスから大手企業、政府の取り組みまで

Brady Dale
公開日:2019年 11月 1日 07:00
更新日:2019年 11月 3日 21:53
  • 3月以降、中国政府に登録されたブロックチェーン・プロジェクトは500を超える。
  • 登録内容を参照すると、中国最大の銀行やテクノロジー企業がブロックチェーン技術を扱っていることが分かる。
  • 裁判所や税務当局など、複数の政府関係機関が行政業務を行うのにブロックチェーン・プラットフォームをテストしていることが、登録内容から明らかになっている。
  • 習近平(Xi Jinping)国家主席がブロックチェーン技術の支持を表明し、その翌日に議会が暗号法(cryptography law)を可決した。

習近平国家主席は分散型台帳技術の機会をつかむよう国民に呼び掛けたが、既に中国産業界の主要プレイヤーたちは何百もの企業向けブロックチェーン・プロジェクトを主導している。

中国サイバースペース管理局によって合計506件のブロックチェーン・プロジェクトが公開されているが、これは、監視強化のために2019年1月からブロックチェーン技術を開発する全ての組織に対して、プロジェクトの登録が義務付けられたことによる。

今のところ明らかになっている情報は2つのリストで、3月に発表されたプロジェクト197件と、10月の309件で、数百の企業向けブロックチェーン・プロジェクトが中国で進行中であるという実態を大いに物語っている。

追加でリストが公開される可能性はあるが、既にこの大規模な2つのリストには、複数の国有銀行や商業用技術のコングロマリットに加えて、今日の中国経済を形作る、多くの政府および公共部門プロジェクトが含まれている。

その他、潜在的に有力な開発プロジェクトが多数、関連子会社の名前でリストに掲載されることで、ある程度、正体を隠している。加えて、多くの名の知れたブロックチェーン・プロジェクトが上記2リストから漏れているが、おそらく今後の発表で公開される公算が大きい。

以下では、中国のテクノロジー産業の状況を変え得るような、企業向けブロックチェーン・プロジェクトについて概観していく。

金融サービス

トレード・ファイナンス(貿易金融)、資産運用、越境決済、サプライチェーン・ファイナンスの4つのユースケースが、上記2つのリストにおける金融サービス産業プロジェクトの中で最もよく見受けられた。

2つの主要な国有銀行と4つの地方銀行を含む6行が、14のブロックチェーン・プロジェクトを登録している。

資産残高で世界最大の中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China/ICBC)と、中国平安保険(Ping An Insurance)の銀行事業である平安銀行(Ping An Bank)は、2件ずつブロックチェーン・プロジェクトを登録している。

平安銀行は、データ分析のSASプラットフォームと、ブロックチェーンを基にした投票および意思決定システムを公開した。同行は2016年にR3のエンタープライズ・ブロックチェーン・アライアンスに参加した最初の中国系金融機関となり、データ共有とプライバシー処理を改善させるためにファイマックス(FiMax)というブロックチェーン・ネットワークを導入している。資産担保証券の取引の効率向上を目標に据えていた同行は、サプライチェーン・ファイナンスにおける課題に取り組んでいる。

中国でビザ(Visa)もしくはマスターカード(Mastercard)に相当する中国銀聯(Union Pay)は、デジタル証明書のアプリケーションとクロスボーダー資本移転のためのブロックチェーンベースの追跡プラットフォームを含む、2つのブロックチェーンサービスを登録した。

ICBC Xiブロックチェーン・サービス(ICBC Xi Blockchain Service)とICBCフィナンシャル・サービス(ICBC Financial Services)は、銀行顧客の取引を促進するブロックチェーン・プロジェクトである。中国工商銀行は中国の中央銀行である中国人民銀行(People’s Bank of China)と提携しており、2017年にはブロックチェーン技術の研究を実施し、中小企業向けのブロックチェーンベースの金融プラットフォームをローンチした。

CoinDeskが以前、報じたように、リストには載っていないものの、最近になって2つの大手銀行がブロックチェーン・プロジェクトについてより詳しい情報を公開している。

中国の4大商業銀行に含まれる中国建設銀行(China Construction Bank)は、プラットフォーム上の取引高が530億ドル(約5兆7,700億円)に達したため、トレード・ファイナンスのブロックチェーンベースのプラットフォームを改良している。中国建設銀行のプロジェクトには、ファクタリングやフォーフェイティング、短期貸付の代わりに輸出業者に即座に現金を用意するといった、金融取引を促進するプロジェクトが含まれている。

また、中国銀行(Bank of China)は2018年に、特許取得済みのブロックチェーン決済システムを介してドルで韓国へ初の国際送金を完了させた。

百度、アリババ、テンセント

中国の検索エンジン大手、百度(Baidu)もリストに載っており、同社が発表したブロックチェーンに関するホワイトペーパーでは、ブロックチェーンサービスの基礎を成すインフラの提供を目的とした特許取得済みの超級鏈(Xuper Chain)について詳説している。

また、同社は2018年8月に分散型アプリケーション(dapp)のゲームで、インターネット上で大好評のクリプトキティ(CryptoKitties)と似たレッツドック(Letsdog)を発表した。同プロジェクトは百度の子会社「Duxiaoman」として10月のリストに登録されていた。

百度の別のプロジェクト2件が3月のリストに含まれており、デジタル・コンテンツの知的財産権保護のためにブロックチェーンを活用し、クラウドサービスやトークンを提供するバイドゥ・ブロックチェーン・エンジン(Baidu Blockchain Engine)などが該当する。

アリババ・グループ(Alibaba Group)は、百度、テンセント(Tencent)、それからインターネット複合企業のファーウェイ(Huawei)の4社で、どの企業が中国で最も進んだブロックチェーン・クラウドを開発するかという終わりの見えない首位争いが繰り広げられている。

登録データによると、4社ともブロックチェーン・クラウドサービスに関する情報を申請している。4社ともにブロックチェーン・ホワイトペーパーの中で、第三者へのインフラ提供企業としてブロックチェーンベースのクラウドサービスを開発することの重要性を強調していた。

アリババは特に積極的であり、ブロックチェーン関連技術に焦点を当てたアプリケーションでの特許申請数では、IBMやバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)をしのぎ、合計90プロジェクトで首位となった

メッセージアプリ「ウィーチャット(WeChat)」を擁するテンセントは、2017年に初のホワイト・ペーパーを発表して以降、一連のブロックチェーンサービスを構築し続けている。リストによると、インターネット大手のテンセントは、テンセント・ブロックチェーン(Tencent Blockchain)とテンセントクラウドTBaaSブロックチェーン(Tencent Cloud TBaaS Blockchain)の登録を申請していた。

同社のトラストSQL(TrustSQL)プラットフォームは、コアチェーンレイヤー、プロダクト・サービスレイヤー、アプリケーションレイヤーの3つのパートからなるシステムとして設計され、デジタル資産運用と認証を提供する。

テンセントはまた、IoTアプリケーション向けブロックチェーンの開発のためにインテル(Intel)とも連携し、一方で2017年には中国銀行とともにブロックチェーン金融アプリケーションのテストを開始した。

政府主導のプロジェクト

基幹通信網から法律や土地開発分野でのイノベーションに関するユースケースまで、リストに登録されている多数の大型プロジェクトに、中国政府自体も大きく関わっている。

クロスボーダー決済プロジェクトに関し、中国でのビザやマスターカードに相当する中国銀聯がリストでは言及されている。

ブロックチェーンのための「アンドロイドもしくはアップル(Apple)IOS」になることを念頭に置いたブロックチェーン・インフラプロジェクトである「ブロックチェーン・サービス・ネットワーク(Blockchain Services Network/BSN)」の立ち上げに向け、中国移動通信(China Mobile)や国家情報センター(State Information Center)などの5つの機関と共に行う中国銀聯のプロジェクトが、テスト段階に入ったことを10月に中国メディアが報じた

BSNの6社のうちの1社である、北京レッド・データ・テック(Beijing Red Date Tech)のCEOであるイファン・ヘ(Yifan He)氏は、発表時には既にBSNは中国の55都市とシンガポールでテストを行っていたと語った。

同ネットワークは、テンセント、ファーウェイ、アリババが現在、提供しているクラウドサービスよりも費用効率が良いと主張している。

法的な調停や税徴収から、移転した農家の損失補填のための追跡プラットフォームの日常管理まで、政府がサービスを提供するためにブロックチェーンを直接的に用いている例は数多くある。

北京インターネット裁判所(Beijing Internet Court)と広州インターネット裁判所(Guangzhou Internet Court)は、それぞれブロックチェーンベースのプラットフォームを登録している。中国国内のみならず、世界で初めてのインターネット裁判所が、2017年に中国南部に位置する杭州で開設された。

既にこれらのインターネット裁判所は、オンライン融資、オンラインIP係争、少額ローン契約係争といった、インターネット関連の案件を処理する権限を与えられている。裁判所は、起訴、示談、立証、判決などの全ての法的手続きをオンラインに移行している。

リーガルXチェーン(legalXchain)は、リーガルXチェーン、リーガルファブリック(LegalFabric)、ハイパーレジャー(Hyperledger)を基にする3つのブロックチェーンサービスを登録した。同社のウェブサイトによると、同社は中国の法律分野に特化したプロジェクトを設計するブロックチェーン技術の企業であると宣伝している。

その他のユニークなプロジェクトとしては、北京の60マイル(約96.5Km)南西にある沼地だった場所に作られた「新たな都市」に関係している。地元の農家から土地を購入し、「勇敢で平和」を意味する「雄安(Xiong’an)」を作ろうという意思のもと築かれた都市で、人口2100万人を越えている。透明性を保ちつつ、体系化するために、土地取引は今後、全てブロックチェーンを介して行われる。最近のブルッキングス研究所(Brookings Institute)の報告書によると、3800憶ドル(約41兆4200億円)がこの新たな都市につぎ込まれるという。

この新たな都市のためとしてリストに載っているプロジェクト3件の中には、その地域から立退いた住民に対する金融助成金の分配を担う、雄安ブロックチェーン土地補償分配プラットフォームと呼ばれるものも存在する。

政府は他にもブロックチェーンサービスを利用しており、国家税務総局(State Administration of Taxation)深セン支局のブロックチェーン電子インボイス(Blockchain Electronic Invoice)、国家外貨管理局(State Administration of Foreign Exchange)のクロスボーダー取引プラットフォームなどがある。

その他

他にも多くの企業名やプロジェクトがリストで明らかになっているが、全てを完全に特定するのは難しい。

他にも2件、有名企業が含まれており、1つは中国のネットフリックス(Netflix)に相当するビデオストリーミング企業のiQIYIで、ストリーミングサービス向上のための百度超級鏈スーパーノード(Baidu Xuper Chain Supernode)の使用を登録している。もう1件は最大級のライフサイエンスおよびゲノミクス企業であるBGIで、遺伝子解析を行うためのBGIブロックチェーンBaaSプラットフォーム(BGI Blockchain BaaS Platform)を登録している。

3つ目に紹介するのは、青と白の皿や花瓶で有名なジンデ・ポーセリン(Jingde Porcelain)の陶器製品の真贋証明をするスマートブロックチェーン・プロジェクトで、非常に興味深いユースケースである。

4つ目のプロジェクトは、当選くじの確認を行う深センチャリティーくじ流通センター(Shenzhen Charity Lottery Distribution Center)からの登録、5つ目は家電製造大手の美的集団(Midea)によるブロックチェーン上のインボイス処理プラットフォームである。

翻訳:石田麻衣子
編集:T.Minamoto
写真: Image via Shutterstock
原文:From Banking Giants to Tech Darlings, China Reveals Over 500 Enterprise Blockchain Projects