ビットコイン、勝利の日まであと何年?

ビットコイン(Bitcoin)は誕生から11年を迎えたばかり、このテクノロジーは何を達成したのだろうか。最初に他の例を見てみよう。

フェイスブック(Facebook)は誕生から14年、ツイッター(Twitter)は13年、リナックス(Linux)は28年、ワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)──あなたがこの記事を読んでいるネットワーク──は30年、TCP/IPは誰に聞くかによるが約44年。

グローバル・ブロックチェーン・ビジネス・カウンシル(Global Blockchain Business Council)の調査によると、もしあなたがビットコインに夢中なら、18歳〜34歳である可能性が高い。あなたはおそらく5年くらい前にビットコインを手に入れ、コインの一部か全部、あるいはもっと多くのコインを保有しているだろう。

私はTCP/IPと同じくらいの年齢、コンピューティングの進化が生み出すブームを見た世代の1人だ。もしあなたが私より若ければ、現代のネットワーク・テクノロジーは当たり前で、すべてが画面上で行われていなかった時代を覚えていないだろう。

しかし、ホワイトペーパーの発表から11年を迎えた今、我々は次のような疑問に直面している。

ビットコインが我々が毎日使っているツイッターやリナックスのようなものになるまで、我々はどれくらい待たなければならないのだろう? 10年? 20年?

ビットコインは純粋な普及という観点から見ると失敗している。しかし、依然として我々を導く灯台であり、現状を真に改革し、最終的には我々の仲間である地球市民との関わり方を変えることができる、我々にとっての最高のチャンスだ。

我々が毎日ビットコインを使うようになるのはいつだろう? 基盤となるテクノロジーはいつ我々の日々の金融との関わりの中に組み込まれるのだろう?

残念だが、わからない。

ベルギーより大きい

毎月、10億人がフェイスブック(Facebook)を使っている。ツイッター(Twitter)は3億3000万人。どちらも急成長したが、ここ数年で本当に軌道に乗った。

リナックスは一説によると全世界のサーバーの98%に使われている。しばらく時間がかかったが、ドットコム・ブームの後に成長した。ウェブは今ではどこにでもあるが、ここまでには20年かかった。

どれくらいの人がビットコインを使っているだろう?

匿名性を目的に作られた分散型ネットワークを正確に測定することは難しい。大まかな指標としては、CoVenture Researchは「少なくとも0.001BTC(約1000円)を保有するビットコインアドレスは1120万」存在するとしている。

大きな数字だ。ニューヨーク市の人口よりも多い。

もちろん、1ユーザーは複数のアドレスを持てるし、しばしばそうしている。だが、どちらかといえば、この推計は控えめ過ぎるかもしれない。ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)がハリス・ポール(Harris Poll)を使って2019年4月に行った調査では、アメリカ人の9%、つまり2700万人がビットコインを保有していた。

つまり、仮想通貨コミュニティーを国とするなら、ベルギー(人口約1140万人)より大きいと言って間違いないだろう。

とはいえ、アメリカの人口の3億3000万人ではなく、10億人でもない。平均的な投資家やプログラマーが注目するには十分で、ハリウッドがこのテーマはひどい映画を作るには十分面白いと考えることにも十分。しかし、11年で1100万人はビットコインにとっては良いことではない。

ビットコインは「死の谷」にいる

仮にビットコインがスタートアップなら、今は「死の谷(Valley of Death)」にいると言える。スタートアップの世界では、1100万人のユーザーを持つアプリは、いくらかの売上を生み出すためには十分だが、巨額の投資を引き付けるほど面白いものではない。

ビットコインはそういう感じだ。機能しているが、声高な少数派以外の注目を集めるには不十分。

では、ビットコインはどこに向かっているのだろう?

1100万人は十分なのか? 大規模に普及するまであと何年かかるのだろうか?

もう一度言おう、わからない。

我々は毎日、CoinDeskで前に進む動きを見ている──プラットフォームのストーリーにつながる、さまざまな小さな変化を、あるいはムーブメントを。

これは、ビットコインと、より広範な仮想通貨エコシステムが受け入れなければならない重要な問題を表している。

フェイスブックとツイッターは、ビットコインの時価総額1650億ドルをはるかに下回る投資で現状の数字を達成した。リナックスとFOSS(フリーソフトウエアとオープンソース)は、開発者から十分に愛されていたため、彼らは喜んで自分の時間を惜しみなく提供した。ウェブは簡単に参加できたので自然に成長した。

ビットコインにはそうした特徴はほとんどない。

ビットコイン・スタートアップへの投資は冷え込んでいる。仮想通貨エコシステムは鎖国状態にあり、自己陶酔しているため、部外者の参加は難しい。このネットワークは、主に「数字が上がる(Number Go Up)」ことを原動力として断続的に成長している。

我々は、誰もがパイオニアである活発な初期段階の中にいて、前に進むための明確な方法は存在しない。内紛は開発者同士を敵対させ、目立ちたがり屋が主流メディアの注目を独占する。中心を1つにまとめているのは、小さく、献身的なグループだけだ。

これはビットコインにとって良くないことだ。

ツイッター、フェイスブックとは違う

そう、ビットコインは今後10年を生き残るべきではない。

リナックス、ツイッター、フェイスブック、PS4、ネットフリックス(Netflix)の商業的成功をもたらしたすべてが、ビットコインの台頭には見られない。ビットコイン上でハリー・ポッターの小説を執筆できるAI(人工知能)を作ることはできない。

ビットコインは、ツイッターのように世界の金融市場を動かすことはなく、フェイスブックのように監視されることもない。

だが、まだ存在する。

ビットコインをそれらと比較することはフェアではないと言う人もいるだろう。しかしビットコインは金融ツールであると同時に技術製品でもある。スタートアップのように、進行中の取り組みであり、もう少し時間があればβ版に移行するかもしれないα版プロダクトだ。成長するためは夏がもう1、2回必要というのは良い考えだ。

13年前にスポティファイ(Spotify)を初めて見たとき、CDから解放してくれる音楽ストリーミングの未来を見た。1998年にMandrake Linuxをペンティアム(Pentium)PCにインストールしたとき、有料ソフトウエアから解放してくれるマシンの将来を見た。

興味のないプログラマーの目を通してビットコインを見ると、数字や誇大広告や詐欺を目にする。しかし、次の大きな変化を掴みたいと思っている人の目から見ると、それほど遠くない未来のある日、ビットコインは銀行と商取引を大きく変える可能性がある。

「チャンネルはそのままで」

ここで述べたさまざまな他のサービスやツールはすべて頂点に達しつつある。ここからはずっと下り坂。ジョーカー(Joker)の言葉を借りると、ビットコインはちょうどウォーミングアップをしているところだ。

ビットコインはゆっくりと燃え上がり、実際に大きく成長するにはさらに5年、あるいは10年はかかるだろう。そしてそれが実現した時、フェイスブックやネットフリックスとは違って、目に見えるものではなくなる。

ブラウザーから削除されるわけではなく、リナックスのように我々の目には見えないところに隠れてしまう。

我々の生活、お金と世界のやり取りに深く根付いているだろう。人間とロボットの間で、そしてロボットとロボットの間で使われる通貨になるだろう。極めて便利なものになるため、意識されなくなってしまう。

ビットコインは11歳。どこへ向かうのか? いつ勝利するのか?

わからない。

だが、それ以前のすべてのものと比べると、ビットコインを止めるものはほとんど存在せず、ビットコインを前進させるための多くのエネルギーが存在する。

あとはただ、時間の問題だ。

※筆者はCoinDeskのマルチメディア・エディター。この記事で示された見解は筆者自身のものです。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:shutterstock、Bitcoin 2014 image via CoinDesk archives
原文:How Many More Birthdays Until Bitcoin Wins?