
3月3から7日まで都内で開催中の「GFTNフォーラム・ジャパン2025」内で4日、サークル(Circle)の日本カントリーマネージャーを務める榊原健太氏とN.Avenue/CoinDesk JAPAN 代表取締役 CEOの神本侑季が「USDCと国内のデジタル金融」をテーマに対談した。
同日、井藤英樹金融庁長官が開催中の「FIN/SUM 2025」にて「ステーブルコインの取引業を認可」と発言。その後、SBI VCトレードが国内初の「電子決済手段等取引業者」(登録番号 関東財務局長第00001号)として登録を完了し、3月12日から米Circle社のステーブルコイン「USDC」の取り扱いを開始すると発表した。そうした中で行われた対談では、国内のステーブルコインのユースケースや今後の展望について意見が交わされた。
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ステーブルコインの成長とUSDCの展望
榊原氏は冒頭、USDCが2018年にローンチされてからの全取引量が23兆ドルを超えたと紹介。アメリカのマネー供給量(M2)約21兆ドルのうち、約1%がステーブルコインとされるなか、「そのうち4分の1程度をUSDCが占めている」と説明。「今後さらに成長の余地がある」と述べた。
世界のステーブルコイン市場の成長率は著しく、2020年から2025年の成長率を比較すると、ビットコインが約14.6倍であるのに対し、ステーブルコインは約39倍と推定されるとの調査結果もあり、神本は「暗号資産全体の成長と比較しても、ステーブルコインの伸びは著しい」と応じた。

国際送金が最大のユースケース
今後、ステーブルコインは、不動産などRWA(リアルワールドアセット)のトークン化とともに、デジタル資産市場の決済手段として需要が高まると予想される。
榊原氏は、海外のユースケースとして、VISAやマスターカードが銀行向けのステーブルコイン戦略を進めている点や、特に国際送金の需要が拡大している点を指摘。2024年10月にサークルが、100カ国以上で即時決済を手掛けるThunes(チューンズ)と提携し、USDCを活用した送金の効率化とコスト削減を進めている事例を紹介した。

その背景として、チューンズのような決済事業者は銀行の営業時間外では取引が制限されるため、事前に現金を確保(プリファンディング)する必要があるが、USDCを活用することで24時間取引が可能となり流動性が向上したと説明。また、銀行インフラが未整備なアフリカなどでは、銀行口座を持たない人々のデジタル決済需要が高く、USDCの活用が求められていると指摘した。
シームレスな接続が普及への鍵
日本では電子マネーが普及している一方で、「○○Pay問題」などと呼ばれるように、決済サービスが多数あるものの互換性が低い点がしばしば指摘される。

こうした状況を踏まえ榊原氏は、ステーブルコインのマスアダプションに向けた課題について、「異なるエコシステム間のシームレスな接続が重要」と述べた。
さらに、ライトユーザーにも暗号資産を広めたメルコインの成功例を挙げ、ユーザーが複雑な技術を意識せずに利用できる環境を整える重要性を語り、ステーブルコイン普及に向けた取り組みを加速させると抱負を述べた。
|文・写真:橋本祐樹