SEC、ペイパルのステーブルコインPYUSDの調査を終了──規制上のハードルを撤廃
  • SECはペイパルのステーブルコイン「PYUSD」に関する調査を終了し、執行措置を取らないと述べたことを、ペイパルが30日に発表。
  • ペイパルは2023年8月にPYUSDをローンチし、これは短期米国債とドル預金に裏付けられている。
  • ステーブルコイン市場は拡大しており、ペイパルはより多くのユーザーを引きつけるため、PYUSDに3.7%の利回りを提供している。

米証券取引委員会(SEC)は、ペイパル(PayPal)のドル建てステーブルコイン「ペイパルUSD(PYUSD)」に関する調査を、執行措置を取らずに終了した。これにより、1年以上前に始まった規制上の出来事が終了したと、同社は発表した。

「2023年11月、当社はステーブルコインのペイパルUSDに関して、SEC執行部から召喚状を受け取った。この召喚状は文書の提出を求めるものだった。2025年2月、SECは執行措置を取らずにこの調査を終了すると通知した」と同社は今週の提出書類で明らかにした。

30日の提出書類は、SECが暗号資産(仮想通貨)企業に対する調査と訴訟を取り下げる最新の動きとなった。SECは10社を超える企業に対し、調査と訴訟を取り下げる意向を通知している。

米ドルなどの法定通貨にペッグされたデジタルトークンであるステーブルコインは、暗号資産の規制方法をめぐる議論の焦点となっている。規制当局は、これらの商品が証券やマネーマーケットファンド(MMF)に類似しているかどうかを疑問視しており、サークル(Circle)やテザー(Tether)などの発行者がより厳しい監視の対象となる可能性がある。ペイパルの関与は、その規模、ブランド認知度、伝統的金融とデジタル金融を横断する影響力から、さらなる注目を集めた。

ペイパルにとって、SECの調査が解決したことで、ブロックチェーンベースの決済への取り組みをさらに深めていくなかで、重要な規制上の懸念が解消されることになる。同社は2023年8月、短期米国債と米ドル預金に裏付けられたドルペッグのステーブルコインとして、PYUSDをイーサリアム上でローンチした。このステーブルコインは、ピアツーピア決済、商取引、分散型アプリケーションでの使用を目的としている。

激化する競争

このニュースは、ステーブルコインが暗号資産および伝統的金融(TradFi)企業の間で最もホットなトレンドとなりつつある時期に報じられた。リップル(Ripple)社、マスターカード(Mastercard)、ビザ(Visa)、オランダの銀行ING、ストライプ(Stripe)などの企業がステーブルコイン業界に参入している。リップルは、ステーブルコイン発行企業サークルを40億ドル(約5800億円、1ドル145円換算)から50億ドル(約7250億円)で買収することを提案したと報じられた。一方、ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz、略称a16z)は、ステーブルコインが送金における「WhatsAppの瞬間」を迎えており、インスタントメッセージが国際電話やテキストメッセージに革命をもたらしたように、決済業界に劇的な変革をもたらす可能性があると述べた。

競争が激化するなか、ペイパルは最近、米国ユーザーに対してPYUSD残高に3.7%の利回りを提供する予定だと発表し、ステーブルコイン戦争をさらに激化させた。コインマーケットキャップ(CoinMarketCap)のデータによると、この決済大手のステーブルコインの時価総額は8億8700万ドル(約1286億円)で、ステーブルコイン発行者のなかで6位に位置している。

|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Shutterstock
|原文:SEC Ditches PayPal’s PYUSD Probe, Removing Key Regulatory Hurdle for Its Stablecoin