手数料ゼロは仮想通貨にも──BlockFi、ビットコイン、イーサ、GUSDの手数料ゼロ取引を開始

仮想通貨レンディング・サービス・スタートアップのブロックファイ(BlockFi)は、普通ではない取引サービスを拡大している。手数料ゼロというモデルだ。

ブロックファイはギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)、ウィンクルボス・キャピタル(Winklevoss Capital)、コンセンシス・ベンチャーズ(ConcenSys Ventures)などが支援している。

取引データを機関投資家に提供

ブロックファイは、仮想通貨を売却することなく利益を得る方法を投資家に提供することで名を上げた。

顧客はビットコイン、イーサ、ステーブルコインのジェミニドル(GUSD)をブロックファイに預け、それらを担保に米ドルでの融資を受けたり、預け入れに対する利息を得る。一方、ブロックファイは、仮想通貨を取引のために必要とする大手機関投資家に貸して利息を受け取り、それを預け入れた顧客に還元する。

12月5日以降、ユーザーはもう1つの選択肢を手にする。顧客は口座残高を使って売買が可能になる。例えば、口座に預けているGUSDやイーサを使ってビットコインをさらに購入できる。

このサービスには取引手数料はかからない。異なる利益モデルを採用しているためだ。つまり、ユーザーの取引に関するデータを大手機関投資家に売却することで利益を出し、機関投資家はブロックファイで仮想通貨を売買し、マーケットメーカーとして機能することで流動性を提供する。

「マーケットメーカーは、どんな取引が行われているかに関する情報を欲しており、注文フローを受け取るためにサポートできる、可能な限り多くのプラットフォームと関係を持つことで彼らはそうした情報を手にする」と、ブロックファイのザック・プリンス(Zac Prince)CEOは述べた。同氏によると取引データは匿名化されて提供される。

取引事業に進出

これらのマーケットメーカーの一部は、仮想通貨レンディングではすでにブロックファイの顧客であり、サスケハナ(Susquehanna)、アクナ・キャピタル(Akuna Capital)、CMTデジタル(CMT Digital)などはブロックファイの出資者でもあるとプリンスCEOは語った。機関投資家がブロックファイで複数の取り組みを行うという事実は、彼らと戦略的関係を構築することに役立つとプリンス氏は述べた。

ブロックファイは、顧客への調査で、顧客が取引目的に仮想通貨を引き出すことが判明したため、取引事業への進出を決断したとプリンスCEOは語った。

「顧客に引き出しの際に『なぜ引き出すのですか?』と聞くと、最も一般的な回答は『取引するため』というものだった。我々の既存のユーザー基盤は取引を望んでおり、我々のプラットフォーム上で取引するためのプロダクトを開発することを求めていた」

ブロックファイの仮想通貨取引インターフェイス

初心者層の取り込みも狙う

ブロックファイはまた、利息獲得口座と取引にさらなる選択肢も追加する。12月11日以降、ユーザーはUSDコインとライトコインの預け入れと購入も可能になる。

ブロックファイは正確な数字を公開しなかったが、プリンスCEOによると、「数万人」もの人々が現在、ブロックファイに仮想通貨を預け入れしており、50を超える機関投資家がそこから仮想通貨を借りている。

しかし、それだけではまだ不十分。ブロックファイは経験豊富な仮想通貨所有者に加えて、初めて仮想通貨を買う人も引きつけたいと考えている。

そうした人たちのために、ブロックファイは法定通貨から仮想通貨への取引を開始する計画とプリンスCEOは述べた。法定通貨ゲートウェイは2020年第1四半期のどこかで運用を開始する予定だ。

現在、ブロックファイはコンプライアンスへの取り組みを強化している。同社は最近、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)からマネー・サービス・ビジネス(Money Service Business:MSB)登録の許可を得た。

さらに、多くの州で送金ライセンスの取得に向けても動いている。プリンスCEOは具体的な州名を明らかにしなかったが、ブロックファイは一部の州でライセンス取得に「かなり近づいている」と述べた。

そして、その野心はさらに広がっている。2020年下半期には、仮想通貨報酬クレジットカードのローンチを計画している。

「これまで、我々は既存の仮想通貨投資家が伝統的な金融と同じようなサービスを受けることができるような商品の開発に注力してきた。2020年は、仮想通貨エコシステムに新たな顧客を加えることができるような商品をローンチしていく」

変化する利率

顧客がブロックファイで仮想通貨を購入すると、顧客が選択した場合には自動的に利息獲得口座へと移され、利息を獲得し始めるとプリンスCEOは説明した。ブロックファイは3月、預け入れられたビットコインとイーサに最大6.2%の利回りをもたらす利息獲得口座をローンチした。

以降、同社は複数回にわたって利息獲得口座の条件を変更してきた。4月、25ビットコインまたは500イーサ以上の口座の利率が下げられた。5月には、低い利率が適用される範囲が250イーサまで拡大され、その後、5ビットコインと200イーサまで拡大された。

最近、条件は再び変更された。現在、10ビットコイン未満の口座には6.2%の利率が適用され、それ以上のビットコインに対しては年間2.2%のみの利率が適用される。イーサに関しては、1000イーサ未満は年間4.1%、それ以上はわずか0.5%となる。GUSDは、保有数に関わらず8.6%となっている。

プリンスCEOは、条件の変更は仮想通貨をブロックファイに預け入れている個人投資家と、取引のために仮想通貨を借りる機関投資家のバランスが関係していると述べた。

「当初、我々は預け入れの多さに嬉しい驚きを感じ、機関投資家が追いついてくることを待つ必要があった」とプリンスCEOは述べた。現在、「これほどバランスが取れていることは初めてのことで、毎日成長を続けている」と付け加えた

直近の変更については、「需要の増加が見られたため供給を増やしたかったこと、そして顧客にさらなる価値を提供したかったため、変更を行った」とプリンスCEOは述べた。

スタッフは2倍に

当初、コンセンシス・ベンチャーズ、ソーファイ(SoFi)、ケネティック・キャピタル(Kenetic Capital)、ギャラクシー・デジタルから支援を受けていたブロックファイは、8月のシリーズAの資金調達ラウンドで、ピーター・ティール(Peter Thiel)氏のバラー・ベンチャーズ(Valar Ventures)、ウィンクルボス・キャピタル、モルガン・クリーク・デジタル(Morgan Creek Digital)、アクナ・キャピタルを含む多くの投資家から支援を受けた。

最近調達した1840万ドル(約20億円)の資金はチームを大幅に拡大させることに役立った。この夏、ブロックファイで働いていたのは約30人だったが、同社は現在は60人を超える人員を抱え、その半数はエンジニアとプリンスCEOは語った。

金融業界の人材も獲得した。10月、ブロックファイは野村グループとシティー(Citi)でバイスプレジデントを務めたジェシカ・レイベック(Jessica Raybeck)氏を機関投資家クライアント担当部門の責任者として迎え入れた。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:BlockFi CEO Zac Prince / CoinDesk archives
原文:Crypto Lender BlockFi Rolls Out Zero-Fee Trading for Bitcoin, Ether, GUSD