世界株・史上最高値を支えた「米国ひとり勝ち」──2020年、初シグナルはアジアから。そして日本は?

世界株・史上最高値を支えた「米国ひとり勝ち」──2020年、初シグナルはアジアから。そして日本は?

Brady Dale
公開日:2019年 12月 30日 08:00
更新日:2019年 12月 30日 08:00

全世界の株価動向を示す指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」が2019年12月、史上最高値をつけた。米国を代表する2つの株価指数であるダウ工業平均とナスダック総合指数の高騰が、2019年の世界の株高を支えた。

ダウ平均は、世界金融危機の2008年から3倍以上にまで上昇して、2万8000ドル超。米ジャイアントテックのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の急激な成長は、米国の経済成長を支えてきた。

2020年、「米国、ひとり勝ち」の構図は続くのか?

米中貿易戦争と「第3の波」:2020年の回復は?

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの推移(MSCIのHPより)

米銀最大手JPモルガン・チェースは12月、2020年の世界経済見通しを発表。その中で、世界は金融危機後の長期にわたる景気拡大サイクルの中で、3度目の減速と回復の小サイクルに突入していると述べ、この小サイクルを第3の波(Third Wave)と呼ぶ。

1度目の波は、2011年〜2014年に起きたユーロ圏の債務危機と回復のサイクル。そして、2度目の波は2014年から5年間にわたって発生した、新興国(エマージングマーケット)のクレジット危機と回復。

「今回の3度目は、米中貿易戦争で落ち込んだセンチメントの改善に伴い、若干の回復を見せている波」と、JPモルガン証券・シニアエコノミストの藤田亜矢子氏は説明する。「この第3波は、さほど強いものではなく、緩やかに回復していくと見ている」

それでは、世界経済は今後12カ月でどう動いていくのか。

初めのシグナルはアジア新興国から

インドネシア・ジャカルタのビジネス街

最初のシグナルは、2020年前半にアジアの新興国(エマージングマーケット)から出てくるだろうと、藤田氏は言う。JPモルガンは、アジア新興国における2020年上半期の実質GDP成長率(年率)を5.4%と予測。これは、2019年下半期の予想値4.9%を上回る。

次いで、ユーロ圏がアジア新興国に続いていくだろうと、藤田氏は説明する。

「特に過去1、2年でドイツとイタリアを中心に落ち込んでいたが、(2020年にかけて)循環的に戻ってくるだろう。一方、米国の第3の波における回復は、遅れてくるだろうというのが我々の見方」と藤田氏は言う。

JPモルガンが予測する、2020年上半期における世界の実質GDP成長率は、2.6%。2019年下半期の2.3%に比べて、わずかに改善する。内訳は、ユーロ圏が0.9%から1.4%へ、イギリスは0.8%から1.2%。アジアでは、日本がマイナス0.6%から0.8%%に改善。中国は5.6%から6.0%へ、そしてインドは5.9%から6.6%までに成長率を改善させる見通しだ。

米国の回復は遅れてやってくる

米銀最大手が独自の景気後退モデルを用いた定量的な計算では、米国が12カ月以内に景気後退に陥る可能性は、40%を上回る。これに定性的な判断を加えると、その確率は30%程度になる。

巨大な需要を抱える米国の回復が、少し遅れるという見方が、2020年の成長率がそこまで強いものにならない裏付けとして存在する。米国の実質GDP成長率は、2019年下半期の1.6%から、2020年上半期に1.4%に減速すると、JPモルガンは予想。

「過去2年間で、製造業の落ち込みが指摘されてきた。米国も景気後退になるのではという懸念もあった。景気サイクルが10年間続いていることもあり、景気が成熟期に入っていく中で、景気後退は意識せざるを得ない」(藤田氏)

しかし、JPモルガンは、世界が景気後退を回避できると予想する。なぜか?

米銀最大手が独自の景気後退モデルを用いた定量的な計算では、米国が12カ月以内に景気後退に陥る可能性は、40%を少し上回るくらいの確率だという。これに、JPモルガンの定性的な判断を加えると、その確率は30%程度になる。

世界が景気後退を回避できる2つの理由

「景気後退を引き起こすトリガーを引くようなイベントは、起きにくいだろう」(藤田氏)

藤田氏は、世界が景気後退を回避できる理由を2つあげた。

FRB(米連邦準備理事会)の金融緩和に続いて、他の新興国でも2020年にかけて金融緩和が継続される見通しがある中、世界的な株価の上昇は、消費を下支えしており、良好な金融環境が続いている。従って、景気後退を引き起こすトリガーを引くようなイベントは、起きにくいだろうと、藤田氏は述べる。

二つ目の理由として、藤田氏は、景気後退になる前提条件になるような問題の不在をあげた。

「景気後退は通常、過大投資や消費に伴い、金利上昇によって債務負担が増えることで生じる」とした上で、「今回の景気拡大は設備投資、耐久財消費、与信の拡大を伴っていない」と説明。

米連邦準備銀行・シカゴ地区連銀

藤田氏は、インフレ懸念が高まっていない中、多少のインフレの上昇を許容するということをするのであれば、利上げを行う可能性はかなり後退すると話す。米国は、2020年の利上げはほとんど見込まなくて良いだろうという状況になっている。

欧州も同様で、2020年に政策枠組みの見直しをやっていくが、利上げを見込むような年ではないという。

「むしろ2020年、我々はFRBが第2四半期に、もう一度利下げを行うという見通しを置いている。金融政策の緩和的状況は世界的に続きやすい状況だ。先進国がそういったことをするのであれば、新興国にも追加的な利下げ余地があるだろう」(藤田氏)

日本は東京五輪後に失速か

「2%のインフレ目標の達成は、予見できる将来に見通せず」(JPモルガン証券・チーフエコノミストの鵜飼博史氏)

最後に日本だ。

2020年の東京五輪の後、日本経済は失速するのでは?懸念の声は以前より、市場から聞こえてきた。

JPモルガン証券・チーフエコノミストの鵜飼博史氏は、日本経済は2019年第4四半期に収縮した後、経済対策などによって成長率は2020年夏にかけて、押し上げられるだろうと述べる。しかし、その後は緩やかに潜在成長率以下へ減速。国内需要の“点火”には至らないと言う。

物価はどうか。生鮮食品・エネルギーを除いたCPI(消費者物価指数)は、消費税増税後に上昇モメンタム(勢い)が弱まったまま推移し、2020年末にかけて前年比0.4%程度で、「加速することなく」推移していくと、鵜飼氏は話す。

「2%のインフレ目標の達成は、予見できる将来に見通せず。ただし、デフレに戻るリスクも小さいだろう」(鵜飼氏)

取材・文:佐藤茂
写真:Shutterstock