- ビットコインは5月以来初めて9万8000ドルを下回り、主要な暗号資産の大幅な下落を主導した。
- 24時間で10億ドル超のレバレッジをかけた暗号資産のポジションが清算され、最大の単一損失は4400万ドル相当のビットコイン・ロングポジションだった。
- 中国の経済指標とFRBの利下げ期待の後退が、暗号資産市場と株式市場の下落要因となった。
アジア取引時間の朝方、新たな下落が見られ、期待していたトレーダーの損失が拡大した。ビットコイン(BTC)は5月以来初めて9万8000ドル水準を割り込み、主要暗号資産(仮想通貨)を急落させた下落傾向がさらに深まった。
イーサリアム(ETH)は8%以上下落し3500ドル前後となった。エックス・アール・ピー(XRP)、ドージコイン(DOGE)、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)も同様の下落を示した。市場は依然としてリスクオフのムードが強く、トレーダーがレバレッジをかけたポジションを解消し、現金化を進めたため、暗号資産はアジア全域で株式の下落に追随した。
清算データは流出規模を如実に示す。24時間で10億ドル(約1550億円、1ドル=155円換算)超のレバレッジをかけた暗号資産ポジションが消滅し、うち約8億8700万ドル(約1374億8500万円)がロングポジションによるものだった。
これは1カ月で最大級の強気側の清算事例となった。約23万5000人のトレーダーがポジションを強制的に決済され、最大の単一清算はHTXにおける4400万ドル(約68億2000万円)相当のBTCロングポジションだった。
主要取引所では、バイビット(Bybit)、ハイパーリキッド(Hyperliquid)、バイナンス(Binance)でそれぞれ1億8000万ドル(約279億円)超のロングの清算が発生した。これは全ポジションの85%以上を占め、先週の反発相場にトレーダーがどれほど積極的に乗り込んでいたかを反映している。
下落前の状況は脆弱だった。主要通貨ペアで資金調達率(ファンディングレート)がプラスに転じ、建玉残高は増加、現物取引量は減少していた。こうした条件は、勢いが反転した際に下落幅を拡大させやすい。
ビットコインが10万ドルを割り込むと、下落の過程で流動性が蒸発してエアポケットが生じ、9万7000ドルへの下落を加速させた。
マクロ経済の逆風も追い打ちをかけた。中国の最新データは経済活動の予想以上の減速を示していた。工業生産は前年比6.5%増(9月)から4.9%増に減速し、固定資産投資は1~10月期で1.7%減と歴史的な落ち込みを記録した。
この数値は即座にアジア株を直撃し、MSCIアジア太平洋指数は1.3%下落、特に半導体メーカーが下落を主導した。この弱気相場は数分以内に暗号資産にも波及して、第4四半期を通じて見られたパターンを再現した。暗号資産は高ベータのマクロリスク資産のように振る舞っているのだ。
同時に、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の当局者による一連の慎重な発言を受け、12月の利下げ期待は後退した。資金市場は現在、12月の利下げ確率を50%未満と織り込んでおり、週初めから大幅に低下している。この変化と世界的な株式市場の揺れが相まって、トレーダーが年末に向けてポジションを見直す中、暗号資産は新たな下落局面を迎えた。
暗号資産にとって当面の焦点は、強制的なポジション解消が終息したかどうかだ。
ビットコインが9万8000ドルを割り込んだことで、9万4000ドル付近の支持線が焦点となる。一方、アルトコインは株式市場の下落が継続すれば脆弱な状態が続くだろう。
しかし構造的には、清算主導のリセットは往々にして相場の疲弊を示す。この動きが繰り返されるかは、今後48時間でマクロ経済の変動が安定するかどうかに大きく依存する。
|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Plunges Under $98,000, ETH, SOL, ADA Down 8% as $880M in Bullish Bets Liquidated


