産油国はドル以外の選択肢を求めている──だがビットコインではない【世界経済フォーラム】

産油国はドル以外の選択肢を求めている──だがビットコインではない【世界経済フォーラム】

世界経済フォーラム(WEF)に出席した中東のエリートたちの多くはビットコインに非常に懐疑的。だが、エネルギー分野でのクロスボーダー決済の可能性について語り合っている。

ドルに支配される中東の石油輸出国

エジプトの実業家でARTOC Group for Investment & Developmentの会長、M・シャフィク・ガブル(M.Shafik Gabr)氏によると一部の中東諸国はすでにビットコインでの石油契約の決済の可能性を模索している。しかし、同氏は詳細を述べることは拒否した。1月24日に閉幕した年次会議のためにダボスに集まったリーダーたちのほとんどは、ビットコインの非中央集権的な性質は断固として受け入れがたいと考えている。

同じエジプトの投資家でQalaa HoldingsのCEO、アハメド・ヘイカル(Ahmed Heikal)氏はビットコインはこうした大規模な取引のための「法的な枠組みを持っていない」ため、ビットコインに対しては否定的と述べた。仮に国やエネルギー企業がビットコインを使うようになるとしても、少なくともあと10年以上はかかるだろうと同氏は述べた。

オマーンからアラブ首長国連邦、サウジアラビアの代表者まで全員が資産としてのビットコインについて同様に否定的な見解を示し、しばしばビットコインをギャンブルへのパイプ役と呼んだ。だが、ビットコインが石油取引の決済に使われる可能性はあるかと問われると──特に石油輸出国のイランとイラクに対するアメリカの厳しい経済圧力を考慮した時──オマーンのある政治家は匿名を条件に「誰が質問しているかによる」と答えをはぐらかした。

トランプ大統領がヨーロッパに対して、「非友好的な」石油輸出国との貿易を控えることを求めたなかで、中東地域ではアメリカによる経済制裁が重要課題となっている。イラクのバルハム・サレハ(Barham Salih)大統領は1月22日の演説で、近隣諸国との関係を独自の条件で持つことはイラクの主権と述べ、これに反発した。

ビットコインは信頼に欠ける

サウジアラビアの実業家でAl-Kholi GroupのCEO、ハムザ・アルホリ(Hamza Alkholi)氏はビットコイン建ての石油契約はきわめて突飛なものになる可能性があるという考え方を否定した。

「我々は30年間努力してきた」と同氏は述べ、石油契約をユーロで決済することで米ドル以外の可能性を目指す取り組みに言及した。

「ビットコインが株式市場のように規制されれば、実現する可能性はある」

石油・ガス業界に多額の投資を行っているCrescent EnterprisesのCEO、バドル・ジャファー(Badr Jafar)氏も業界の大半の企業がドルから離れる緊急性はないことに同意した。政治家やビジネスマンは依然として仮想通貨を「信頼」していないと同氏は述べた。同氏はビットコインが広く利用されるようになれば、中央銀行が抵抗するだろうと予測している。

しかし、仮に石油契約がドル以外の通貨で決済されるとすれば、それはロシアと中国に関連した政治的要因によるものかもしれないとジャファー氏は述べた。

そしてまもなく、ドルに疲弊したエネルギーサプライヤーが代替的な決済システムを見つけることをサポートしたいと考えるデジタル通貨発行者が登場するだろう。「信頼性」についても同様の懸念があり、中国はコンプライアンスとグローバル市場での機会創出にきわめて重点を置いている。

デジタル人民元の可能性

中国の実業家たちは、ユーラシアの仮想通貨ベンチャーを複雑なコモディティ市場に取り組むための足がかりと見ている。

China Blockchain Delegationのダニー・ドン(Danny Deng)氏は中国のブロックチェーン・ベースの通貨──同氏は中国人民銀行(PBoC)が2020年に限定的な規模で導入すると期待している──はエネルギー市場にバックボーンを提供する可能性があると述べた。

「ビットコインのエコシステムはますます大きくなっている。だがまだ、こうしたコモディティの取引量に対応することはできない」とドン氏は述べた。

「石油やガスのトレーダーはレバレッジを使っている。レバレッジは金融システムによって支えられなければならない。イランのような地域はビットコインや他の決済システムを使うかもしれない。しかし、そうではない他の国々は、国家(仮想通貨)決済において重要な役割を果たすかもしれない」

同氏の見解では、法定通貨は厳密な商業的ツールではなく、政治的になりすぎている。中国で最も尊敬されているビットコイン専門家の1人で、上海証券取引所のコーポレート・ガバナンス諮問委員会から中国M&A協会まで10を超える組織の責任者を務めるワン・ウェイ(Wang Wei)氏は、ビットコインは決済において支配的な通貨になるチャンスを失い、代わりに主に価値の保存手段となると述べた。

中国政府や中国人民銀行と連携している複数の中国の実業家は、同行が2021年までにドル決済システムに代わるシステムを提供する可能性があることを認めた。例えば、China Blockchain Application Centerのチャン・シャオソン(Zhang Shousong)事務局長は、次のダボス会議までに中国人民銀行のデジタル通貨、いわゆるデジタル人民元は「中国だけでなく世界中で」利用可能になると述べた。

政府関係者の公式発言を踏まえると、デジタル人民元の開発は「急スピードで」進んでいるとドン氏は述べた。シャオソン氏は「リブラ(Libra)とは違い、間違いなくローンチに向けて進んでいる」と付け加えた。一方、リブラのローンチはまだ不明確なままだ。

新しいシルクロード「一帯一路」

一方、ウェイ氏は中国語に堪能なカザフスタンの起業家、ティレクテス・アダムベコフ(Tilektes Adambekov)氏を配下に置き、世界10位の石油輸出国カザフスタンで、アダムベコフ氏が認可を受けた仮想通貨取引所EBXを設立することをサポートした。アダムベコフ氏はダボスで中国代表団の昼食会に参加してグローバル市場の未来について議論し、中国代表団への感謝を述べたスピーチで毛沢東の言葉を引用し、大きな拍手を浴びた。

代表団から見れば、アダムベコフ氏は中国の希望に合致している。同氏は中国で8年間働き、その後帰国して、国境を超えてロシア語圏の仮想通貨市場にサービスを提供することに専念した。さらに、カザフスタンはオープンな規制フレームワークを持っており、中国の「一帯一路(Belt and Road)」構想のルートに沿った戦略的な位置を占めている。アダムベコフ氏は、同氏の取引所はトークン化された石油とガスのオプション取引のサポートを目的としており、国内の仮想通貨取引所で決済して、まだビットコインで流動性を提供していると述べた。

中国からオマーンまで、すべての実業家と外交官はコモディティ市場でのドルの地位は近い将来も維持されるとの見解で一致した。しかし、代替的な選択肢がすでに出現し始めている可能性はある。

そうした選択肢が2025年までにドルの地位を奪う可能性はあるかとの質問に対して、WEFの金融システム責任者マシュー・ブレイク(Matthew Blake)氏は、ドルの役割はきわめて顕著なため「有意義な形で置き換えるには4年以上かかるだろう」と述べた。

ビットコインはその変化に関与するかもしれないし、しないかもしれない。

「ビットコインは流通通貨が持つ、複数の特質を示している」とブレイク氏は述べた。

「ビットコインには課題もある。通貨の役割は本質的に安定した価値の保存にある。そのためには流動性が必要。ビットコインはまだそうした特質を備えていない」

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Image via Leigh Cuen for CoinDesk
原文:Notes From the WEF: Oil-Producing Nations Want Dollar Alternatives, Just Not Bitcoin

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