ニトリが物流にブロックチェーンを使う理由──LayerXと手を組み家具の流通を“アップデート”

家具大手のニトリホールディングスが、自社の物流網をブロックチェーン基盤にアップデートしようとしている。同社グループで物流を担う株式会社ホームロジスティクスの深作康太氏(CIO兼ソリューション事業本部本部長)が2月7日、都内で開かれたイベントに登壇。自社の物流にブロックチェーンを活用する方針について話した。

700億円の物流にブロックチェーンを

ホームロジスティクスは、700億円規模のニトリの物流を担う企業で、運送会社150社と取引し家具を消費者に届ける物流会社。深作氏は、レガシーな業界を技術で変えることをテーマとしたイベントLegacy Tech Conference 2020のパネルディスカッション「物流業界の仕掛け人、ニトリが牽引する群戦略としてのロジスティクス ~なぜニトリがBlockchain活用・Open API化を進めるのか?~」に登壇した。

深作氏は、物流というビジネスをアップデートする新規事業として、ブロックチェーンを含め検討していると明らかにした。また自社配送も検討していることにも触れ、契約から決済までを電子化するだけでなく、ドライバーが家具を配送するスキルを可視化することで、直接契約できるようにしたいと述べた。

深作氏講演資料より「物流業界における『平等な価値の連鎖』」

そして、ブロックチェーンを活用するパートナーとして、ブロックチェーンの研究開発に従事するLayerX(レイヤーX)を挙げた。パネルディスカッションにはレイヤーXの福島良典CEOも登壇、ブロックチェーンを活用する意味について述べた。

福島氏は、物流のサプライチェーン・マネジメントには、ニトリなどの荷主や運送業者、個別のドライバーなどさまざまな主体がかかわっていることを指摘した。それぞれが請求書や契約書を交わし、それぞれが原本を持って互いに照合するためコストがかかっている。そこで、ブロックチェーンという“改ざんできない共有の合意データベース”を用いることで、物流の本来の業務である「どういうルートで、何をどこに運ぶか」ということに集中できるというのだ。

レイヤーX福島氏「次の20年で業務の変化が起きる」

ニュースアプリのグノシー創業者でもある福島氏は、インターネットの20年を振り返り、これまで対面でのみ行われてきた業務に、デジタルという面も加わったという意味を込めて、「インターフェースが変わった」などと述べた。

その上で、次の20年は「業務自体の変化が起こる」と予測。デジタルを起点に業務が根本から再構築されると指摘、これからの20年の変化のほうが社会にとってインパクトが大きいことを示唆した。

パネルディスカッションには深作氏や福島氏のほか、AIによる配送ルートシステムを開発するオプティマインド社長、松下健氏が登壇。モデレーターは、起業家支援で同イベント主催者であるプロトスター顧問の山口豪志氏が務めた。

文・写真:小西雄志(トップ写真:左から深作、福島、松下、山口の4氏)
編集:濱田 優