ステーブルコインに隠れた脆弱性、金融安定理事会が警告

主要国の中央銀行、国際機関などが参加している金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)は、各国の規制当局に対して、基準を見直し、リブラのようなグローバルステーブルコインが引き起こす可能性のある混乱に対処するよう警告した。

隠れた脆弱性の可能性

4月14日に発表された報告書でFSB──グローバル金融システムの改善方法を勧告するG20の組織──は、ステーブルコインに関する多くの活動はすでに規制上の枠組みによってカバーされているが、各国の規制当局の準備ができていないリスクが存在すると述べた。

FSBは、ステーブルコインに使われているテクノロジーとメカニズムの大半は大規模にはテストされておらず、主流として使われるようになったときに初めて現れる、隠れた脆弱性があるかもしれないと主張した。

「ユーザーが通常の支払いにステーブルコインを利用すれば、きわめて大きな運用上の混乱がすぐに実際の経済活動に影響をおよぼすかもしれない」とFSBは報告書で述べた。

「グローバルステーブルコイン(GSC)への大規模な資金の出入りは、それを支えるインフラが、大量の取引とより広範な金融システムの資金調達状況を処理する能力をテストすることになる」

FSBはまた、各国の規制当局はデジタル資産分野における急速なイノベーションを注視し、影響が出る前に脆弱性や規制の抜け穴の予測に努める必要があると述べた。

すべての加盟国は「規制当局の権限を明確にし、グローバルステーブルコインがもたらすリスクに適切に対処するために国内の枠組みの潜在的なギャップに対処」すべきだ。

連携の必要性を指摘

ステーブルコインは国境を超えて機能するため、各国は、他の国々のステーブルコインの規制方法について調整・協議すべきとFSBは主張した。

共同アプローチは一貫性を促進し、「分野や国境を超えた規制逃れの機会」を減らすことができるとFSBは述べた。

報告書によると、分野ごとに規制を適用している国々は、ステーブルコインが適切にカバーされるよう変更する必要があるかもしれない。

FSBはリブラを名指しで言及しなかったが、報告書はフェイスブック(Facebook)が2019年6月にデジタル通貨プロジェクトを発表して以来提起されている懸念の一部に触れた。

例えば、ステーブルコインが法定通貨に取って代わることになれば、発展途上国は海外機関の影響下に置かれることになるかもしれないと警告した。

包括的で透明性のあるステーブルコイン規制を求めるFSBの意見は、リブラを取り巻く他の疑問を反映している。

2020年2月、マスターカードの当時のCEOは、同社がリブラ協会(Libra Association)を離脱した理由の1つは、その曖昧な規制上の状況によって、マネーロンダリングを目論む人物や、他の犯罪者にとってリブラは安全な逃げ場となる可能性があるとの懸念からだったと述べた。

今回のステーブルコインに関する報告書は現在、公開協議の段階にあり、FSBはアメリカ、中国、EU(欧州連合)などの規制当局や、世界銀行、IMF(国際通貨基金)、BIS(国際決済銀行)などを含む、68のメンバーからのフィードバックを求めている。

公開協議期間は7月15日まで延長され、最終報告書は10月以降になる予定だ。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Shutterstock
原文:G20 Watchdog Warns Nations to Mitigate Risks Posed by Libra-Like Stablecoins