「デジタル証券普及にブロックチェーンは必須ではない」ドイツ財務省が指摘する副作用

ドイツ財務省が、ブロックチェーン上の証券における規制づくりで提言書をまとめた。

連邦財務省は2019年3月8日に公開した報告書の中で、証券は書類という形態である必要はなく、電子フォームでの発行も可能だと述べた上で、ドイツの法律は電子証券に対してオープンであるべきだと強調した。

法律によりデジタル文書などを規制する枠組みは作られるべきであり、ブロックチェーン技術利用の実現性の変化に応じて柔軟に規制づくりに取り組む必要がある。技術水準やニーズは急激に変化し、技術の細かな部分を規制するための権限が付与されるべきである(報告書)。

電子化された債権から始め、株式に関しては後のフェーズで着手することが望ましいと、同省は指摘した。必要な規制のボリュームを考慮すると、株式の電子化を優先させた場合、 取り組み全体の遅延が予想される。これら全ての証券は、政府公認機関により登録され、改ざんなどを未然に防ぐ必要があるだろう。

また、「電子証券の買収や移動、善意の保護における別の規制を設けるべきである。デジタル証券が国内の然るべき取引場所で売買される場合、国の中央証券保管機関(Central Security Depository)にて登録されるべきである」と報告書は言及。これによって、個人投資家はトークン化された証券を金融機関を通じて購入することが可能になる。

「最優先技術として扱うべきではない」

報告書は、デジタル証券の普及において、ブロックチェーンの活用は可能だが、必須というわけではないと述べている。「パブリックブロックチェーンの開発においては時に多くのエネルギー消費が伴い、気候への影響を考えると、ブロックチェーンを最優先の技術として扱うべきではないだろう」

有効性や利便性を目的としたユーティリティトークンに関して、報告書は、証券の発行体に対する規制からは除外されるべきだろうと述べている。「現在の証券取引法において、ユーティリティトークン(一般に、便利なサービスを受ける利用料などに使われるトークン)は、証券または投資、金融商品に属していない。しかし、ユーティリティトークンの公募は、事前の情報開示がある場合に限り、法制化できるだろう。

練られつつある法案

今回の報告書は、STOに関する法案がまとめられている最中に発表された。

与党・キリスト教民主同盟の上院議員、トーマス・ヘイルマン(Thomas Heilmann)氏は、「これらの技術は極めて興味深いものだが、多くの人がまだ理解できていない」と、CoinDeskの取材で話した。

一方、ブロックチェーンのスタートアップ企業LitionのCEO、Richard Lohwasser氏は、法案は現在、あくまで「議論の材料」というレベルで、政治家や政府機関が非公開で話を進めていると話す。Litionは、同法案においてヘイルマン議員のアドバイザーを務めている。

セキュリティトークンにおける総体的な規制がなければ、多くの課題が未解決のままになるだろうと、Lohwasser氏。例えば、トークンの所有は、法的観点からは証券保有ということにならない。配当金の支払いも法に準拠するものではない。仮にトークンが売却されても、買い手は配当金を伴う法的権利を取得するということにはならないと、Lohwasser氏は続ける。

ドイツはヨーロッパの金融の中心として、トークン化された金融におけるリーダー的地位を確保し、ヨーロッパ全体におけるセキュリティトークンの規制を方向づけることになるだろうと、報告書は加えた。

法律事務所DLx Law(ニューヨーク)の弁護士、Lewis Cohen氏は、こう話す。

「アメリカ企業からすると、ドイツの資本市場はそこまで大きなインパクトをもたらすものではないが、ドイツの行政がセキュリティトークンの利用を促す動きは広く認識されることになるだろう。また、ブロックチェーンのコミュニティにとって、ドイツにおける取り組みは極めて重要であろう。何が機能し、何が機能しないのかが見えてくる」

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:German Finance Ministry headquarters image via Shutterstock
原文:German Finance Ministry Calls for Regulated Blockchain Securities Market