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宙に浮く米ビットコイン先物取引。Bakkt構想が進まない理由

Brady Dale
公開日:2019年 3月 23日 10:00
更新日:2019年 3月 28日 08:50
  • 2018年8月、ビットコイン取引・保管プラットフォーム「Bakkt」構想発表。
  • ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社インターコンチネンタル・エクスチェンジ(Intercontinental Exchange=ICE)は、米商品先物取引委員会(CFTC)に構想の提案を申請。ICEは提案の中で、ビットコイン先物取引による現物受け渡しに利用されるビットコインを保管できるよう免除措置を求めた。
  • ICEは提案書を12月に提出したと報じられたが、同委員会が通例の30日間に及ぶ公開レビューとして、提案の詳細が公開されるか否かは不明。
  • レビュー期間を終え、CFTC委員によるBakktの免除申請が承認されない限り、Bakktの現物決済を伴う先物取引はスタートしない。

ICEがBakkt構想を発表してから半年以上が過ぎた。米金融界が注目するBakktのビットコイン先物市場の創設は、規制当局の判断に委ねられている。当初、ICEは12月中旬のスタートを計画していた。

仮にCFTCが今日にもICEの申請内容を一般公開したとしても、新たな市場は4月中旬までにその幕が開くことはないだろう。30日間に及ぶ公開レビューの後、パブリックコメントを精査した上で、委員による決議が行われる。

事情に詳しい2人の関係者によると、プラットフォーム上の取引においてビットコインの管理・保管を求めたICEの申請は2月末現在、CFTCの市場監督部署による審査が続いているという。

何が進行を妨げているのか?

12月22日から5週にわたって続いた政府の一部閉鎖(シャットダウン)は当然、CFTCや多くの政府機関の業務を停滞させ、行政のデスクには多くの未処理案件が積み上がった。全体の業務が遅延する中で、役所が喫緊の案件から手を付けるのは常である。

一方、野心的とも言われるBakkt構想には、事がそう簡単に前に進まない理由がありそうだ。

現物決済

ICE傘下にあるニューヨーク証券取引所(NYSE)(写真:Shutterstock)

Bakktの先物取引は、買い手が実際の商品(コモディティ)であるビットコインを受け取る現物決済となるが、これに問題があるということではない。

CME(米先物取引所運営大手)の現金決済でのビットコイン先物を審査する上での分析と、現物決済のビットコイン先物のそれは若干異なる点はあると、CFTC・市場監督部ディレクターのAmir Zaidi氏は話す。

いずれにせよ、先物商品が市場で価格操作・操縦(マニピュレーション)などの影響を受けやすいか否かを分析することになるとZaidi氏は述べる。この点は、現金決済の先物取引における懸念事項と言える。現金決済では、一方が他方にスポット価格と先物価格の差額を支払うが、仮にスポット価格が価格操作を受けるフィードを基に決定されれば、契約の双方のいずれかが騙されることになる。

Zaidi氏はBakktに関する具体的なコメントを控えた上で、Bakktのような現物決済においては「現金決済における懸念を考慮する必要はない」と述べる。それでは、Bakktのビットコイン先物取引構想の課題とは何か?

「奇抜で複雑」

米商品先物取引委員会(CFTC)のHP(写真:Shutterstock)

ICEが描いた計画は、現物決済の先物取引においてビットコインの保管をBakktで行うというものだが、この仕組みに物議を醸し出す理由がありそうだ。

商品先物(コモディティ)取引所は、一般に銀行や信託などのサービスプロバイダーを利用して有価証券の保管を行う。取引は銀行や信託で決済され、資産の受け渡しはクリアリングハウスの保護の下に行われる。当然、銀行や信託は当局の監督下にあると、元CFTC職員は匿名を条件に話す。

「(Bakktに関する)情報はあくまでも限定的だが、Bakktは取引所とクリアリングハウスに必要な条件で管理された存在としての承認を得ようとしているのではないだろうか」と元職員は推測されるする。

これまでに開示された情報を基に言えるのは、Bakkt構想ではBakktが当局の監督体制から外れてしまうのではないかという疑問が生じる。

「Bakktのアプローチは奇抜で複雑だ。現物の受け渡し場所をクリアリングハウスで行うのか?それとも大きな穀物サイロのようなところで行うのか?仮に後者であれば、規制当局の監督をどう受けるのか?」と前出の元CFTC職員は言う。

Bakkt申請の行方

12月、承認プロセスに詳しい関係者は、顧客に代わって自前の“倉庫”でビットコインの保管を行うという内容を含むBakktの申請は、CFTCの職員から委員へと送られたと、CoinDeskの取材に答えている。しかし、元CFTC職員によれば、申請内容に依然として疑問点がある場合、委員レベルから事務方に送り戻されることは珍しくないという。

2月、CFTC委員のBrian Quintenz氏は、Bakktの申請書は同委員に届けられていないと、ニューヨークで開かれたデリバラティブイベントで記者団に伝えた。Bakkt申請をパブリックコメントにかける準備が依然できていないととれる発言だ。

Bakktの申請に対するコメントを求めると、CFTCの委員たちは総じて同委員会が精査を進めている仮想通貨の「現物受渡」全体の話をする。Dan Berkowitz委員もその1人で、「これはCFTCにとっては優先すべきガイダンスの一つである。他にも多くの(仮想通貨に関連しない)案件も抱えている」と述べる。

Bakktが進める準備

一方、Bakktはシステムとプロダクト作りを着々と進めているようだ。最高経営責任者(CEO)のケリー・ローフラー(Kelly Loeffler)氏は1月、シカゴに拠点を置く先物ブローカーのローゼンタール・コリンズ(Rosenthal Collins Group)の資産の一部を買収したと発表。

発表文の中でローフラーCEOは、「暗号資産市場での規制された取引を始めるため、我々はCFTCの承認を待つためにただ単に静止していることはない」と述べた。Bakktの取引開始時期に関しては触れなかった。

また、同社COO(最高執行責任者)のアダム・ホワイト(Adam White)氏は3月、フロリダ州で開かれたデリバティブ業界のイベントで、一般論として当局とは連携して話を進めていると話す。

「申請書を作って、フェンスの向こう側に投げ入れ、承認を祈りながら待ち、さあ事業を始めようというものではない」と、ホワイト氏。「ハードフォークと何かとか、なぜこのブロックチェーンは使えるのに一方のブロックチェーンはダメなのか……規制する側がこの領域での理解を深めることができるよう、連携、協力すること。こういったアプローチで我々は進めている」と続けた。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Shutterstock
原文:When Bakkt? Bitcoin Futures Market’s Approval Appears Stuck in Limbo