米フィラデルフィア連銀、デジタル通貨が商業銀行に与えるリスクを指摘

アメリカの12の地区連邦銀行の1つであるフィラデルフィア連邦準備銀行は6月1日、「Central Bank Digital Currency: Central Banking for All?」と題した32ページの調査報告書を発表した。

調査は、同行の研究部門とペンシルバニア大学、シカゴ大学が共同で行ったもので、口座型・中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入、つまり個人や企業にも中央銀行での口座開設を認めることが、金融仲介機関である商業銀行にどのような影響を与えるかを検討したものだ。

現在、中央銀行での口座開設は金融機関に限られている。「消費者が中央銀行で直接、口座を開けることができる」ことは、本質的には現在、商業銀行が担っている役割を中央銀行が奪うことを意味する。

商業銀行が担う「満期変換」とは?

報告書は、特に商業銀行が伝統的に担ってきた満期変換(Maturity transformation)にCBDCが与える影響に注目している。

満期変換(Maturity transformation)とは、金融機関が資金調達(主に預金)よりも長い期間で融資(資金運用)を行うことで、例えば、預金者から預かったお金を住宅ローンなどの長期融資にまわすこと。商業銀行は貸し手と借り手、それぞれのニーズを満たすとともに、リスクを吸収して、資金を市場に提供している。これは商業銀行の重要な役割とされている。

満期変換にはリスクもある。例えば、金融パニックや取り付け騒ぎによって、すべての預金者が一度にお金を引き出そうとした場合や、貸し手が短期融資を行わなくなり、金融市場で資金が枯渇するようなケースだ。

報告書は、商業銀行と中央銀行の併存は可能であり、商業銀行が現在担っている満期変換の機能はCBDC導入後も実現可能と結論づけた。だが同時にリスクもあるとした。

例えば、人が中央銀行にお金を預金するようになれば、商業銀行は融資に必要な資金を調達できなくなり、金融市場に悪影響を与えてしまう。中央銀行が「預金独占者」になる可能性は避けなければならないと報告書は指摘した。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:Shutterstock
原文:Fed Paper: Central Bank Digital Currencies Could Replace Commercial Banks – But at a Cost