FATFが「ステーブルコイン」「暗号資産取引所レビュー」の報告書を公表──マネロン対策の現状と今後の国際協調

FATFが「ステーブルコイン」「暗号資産取引所レビュー」の報告書を公表──マネロン対策の現状と今後の国際協調

マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)が7月、これまでの議論や、FATF基準に対する世界各地の取り組みのレビューをまとめた報告書を相次いで発表した。一つはステーブルコインについて、もう一つは暗号資産や交換業者がFATFの基準を守っているかどうかのレビューについてだ。

FATFとFATF基準

FATFはFinancial Action Task Force on Money Launderingの略で、1989年サミットの経済宣言を受けて設立された、マネロン対策における国際協調推進を目的とした政府間機関だ。

FATFがアンチマネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)などを目的に設定した国際基準が「FATF基準」。具体的な義務を、個人と金融システムをつなぐ仲介業者(金融機関など)に対して課している。2019年6月には、予防措置の実施を暗号資産交換業者に対して要請すべく、基準を改訂している。

「ステーブルコイン」報告書──G20の要請にこたえ問題を分析・整理

今月公表された一つ目の報告書は、「いわゆるステーブルコインに関するG20財務大臣・中央銀行総裁へのFATF報告書」(「FATF Report to the G20 Finance Ministers and Central Bank Governors on So-called Stablecoins」)というもの。2019年10月に行われたG20財務大臣・中央銀行総裁会議で、G20からFATFに求められた要請にこたえるものだ。

この時、G20はFATFに対し、ステーブルコイン、特に大規模な一般ユーザーによる利用・流通の可能性がある「グローバル・ステーブルコイン」に関して、アンチマネロン・テロ資金供与対策上の問題を検討するよう要請。そこでFATFはステーブルコインに関する問題を分析、この報告書で整理した。

潜在的リスクと4つのアクション

FATFはこの報告書で、ステーブルコインは金融のイノベーションや効率性を加速させ、金融包摂を改善する可能性を秘めていると評価。ただし、匿名性やグローバルな普及、違法資金の多層化(による本人確認の困難化)の可能性という点で潜在的なML/TFリスクを抱えているとの認識を示した。

FATFは、現在の基準にもとづいて仲介業者に求められている予防措置が、現在存在しているステーブルコインによってもたらされるマネロン・テロ資金供与リスクの低減に機能していると考えており、現時点では、現基準を改訂する必要があると考えてはいない。しかし同時に、ステーブルコインが技術革新の速い分野であり、各法域は現基準を効果的に実施しなければならないことも認めている。

またFATFは、さらなるアクションが必要なステーブルコインの潜在的なリスクを特定。それは、▽AML/CFTの枠組みが脆弱もしくは存在しない法域に拠点を置くコイン、▽分散型ガバナンス構造で、AML/CFT上の措置が適用可能な仲介業者が存在しないコイン、▽規制された仲介業者を経由しないで取引が行われる場合──だ。

これらを踏まえ、FATFは今後自らが取り組むアクションとして、次の4点を提示した(主語はFATF)。

・すべての法域が、優先課題として暗号資産及び暗号資産交換業者に関する現基準の実施をすることを要請する
・2021年6月までに、現基準の実施状況及びその影響に対するレビューを行い、FATF基準改訂が必要かどうかを検討する
・ガイダンス改訂の作業の一環として、ステーブルコイン及び暗号資産に関し、各法域に対してガイダンスを提供する
・暗号資産交換業者の活動を監督する当局のグローバルなネットワークを発展させるため、各国監督当局の協力・情報共有および監督当局としての対応能力強化に関する、国際的な枠組みを強化する

「暗号資産・交換業者への12ヵ月レビュー」報告書──19法域が基準を未実施

公表されたもう一つの報告書は「暗号資産・暗号資産交換業者に関する新たなFATF基準についての12ヵ月レビューの報告書」。

FATFは、2019年6月にFATF基準の改訂版を公表した時、暗号資産セクターの犯罪類型やリスク、FATF基準がしっかりと実施されているかどうかなどを評価するために「12ヵ月レビュー」を行うとしていた。今回の報告書はその結果をまとめたもの。報告書に記載されたレビュー結果の要点は次の通りだ。

・調査を実施した54法域のうち35法域が基準を実施
・そのうち32法域は暗号資産交換業者を規制対象とし、3法域は活動を禁止
・残る19法域は未実施
・課題は残るがトラベルルールの実施のための技術問題に対して進捗が見られる
・このため、現在のFATF基準の改訂は必要性がない

トラベルルールとは、VASP(暗号資産交換事業者)などの金融機関が国外送金を取り扱う際、送金者の氏名、口座番号や住所等の情報を相手先の金融機関に送信しなければいけないというもの。

21年6月までに2回目のレビュー実施を明示

FATFはまた、暗号資産セクターは動向の変化が速く、技術の変化が大きいため、継続的なモニタリングと官民の連携が必要であるとしたうえで、「1年間は基準の影響や市場の変化を理解するためには短かった」と評価。そして、今後の方向性として、次の項目について合意したことを明らかにした。

・2021年6月までに第2回12ヵ月レビューを実施
・暗号資産と交換業者に関する改訂ガイダンスを公表
・2020年10月までに、疑わしい取引の参考事例・着眼点、抽象化した犯罪事例を公表
・暗号資産交換業者、ソリューション・プロバイダー、技術者、学者を含む民間セクターとの対話を継続・強化
・VASP(暗号資産交換事業者)の監督当局間の国際協力を強化するための検討プロジェクトを継続

文・編集:濱田 優
画像:FATF『FATF Report to G20 on So-Called Stablecoins』

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