麻生財務相「伝染病対策にブロックチェーン役立つ」、デジタル通貨、分散型金融について議論【BG2C FIN/SUM BB 1日目】

麻生太郎財務相は8月24日、金融庁と日本経済新聞社主催のブロックチェーンイベントであいさつし、ブロックチェーンを用いた分散型金融など新たな金融システムはデジタル資産の分野に限らず、デジタルアイデンティティや貿易金融などの高度化に役立つと指摘。ブロックチェーンがプライバシーを保護しながら接触確認に利用できることに触れ、伝染病との戦いで解決策になり得るとの考え方を示唆し、「将来的なリスクを防ぎ、抑え込める」などと話した。

さらに麻生財務相は、規制当局が技術への理解が欠けると考え、イノベーションを阻害するものとして敵視する人もいるかもしれないとしつつ、「最良のガバナンスのもとでの適切な技術の使用を考えていくために、お互い協力し、そして共同していくこと」の重要性を指摘した。

このイベントは、当初3月に開催予定だった国際会議Blockchain Global Governance Conference (BG2C)、FIN/SUM Blockchain & Business (FIN/SUM BB)で、コロナウイルス感染拡大を防ぐ観点から延期されていた。8月25日まで開催している。

STOやカストディ、デジタル通貨などを議論

初日の24日は、松尾真一郎・ジョージタウン大学研究教授らがモデレーターを務めた「BG2C:デジタルカストディ問題の打開策ーセキュリティとレギュレーションから考えるー」や、住友生命などが参加した「ブロックチェーン Fintechの先へ」、さらには博報堂、NECなど参加の「超高度情報化社会におけるブロックチェーン技術の可能性」などが開催された。

午後には、「デジタル通貨が変えるビジネスと社会」が行われ、カンボジアの中銀デジタル決済・バコンを開発したソラミツの宮沢和正代表取締役社長、LINEグループでクリプト・ブロックチェーン事業を営むLVCの林 仁奎代表取締役社長CEO、あずさ監査法人金融事業部金融アドバイザリー部ディレクターの保木健次氏が登場。モデレーターは東海林正賢KPMGジャパン フィンテック・イノベーション部長が務めた。

保木氏はデジタル通貨による経済圏の構築とビジネス戦略について言及したほか、デジタル通貨によるビジネスの論点として、顧客数と普及率などについて話した。

宮沢氏はバコンの利用率について、「大々的な宣伝はしてないので利用者は数万人にとどまるが、銀行は大手24行のうち14行が加盟している」とした上で、「カンボジアはドルの利用が8割、現地通貨のリエルが2割くらいの割合だが、バコンでは逆転してリエルが6割、ドルが4割程度」であることを紹介。その理由として、農村部の人が使っていると見られることなどを挙げた。その上で、中銀デジタル通貨では中央銀行は紙幣の印刷や運搬など管理をする必要がなくなるので、コストが従来の50分の1程度で済むなどと述べた。

またLVCの林氏はLVCのビジネスドメインやLINEブロックチェーンビジョンについて紹介。デジタルアセットとしてのLINK、取引所としてのBITMAXとBITFRONT、クリプトファンドのunblockなどについて概要を話したほか、ブロックチェーンウォレットも準備していることを明らかにした。

LVCのビジネスについて話す林 仁奎CEO

本イベントは8月25日まで行われる。24日午後には「花開くか日本のSTO、金商法改正で本格スタート」「BG2C:新時代のKYCルール―暗号資産とFATFルールの共存に向けて」「ブロックチェーン技術を活用した貿易金融」などが行われる。25日には、イーサリアム財団エグゼクティブ・ディレクター宮口あや氏らが登場する「BG2C:イーサリアムコミュニティ」や、野村ホールディングス、セキュリタイズなどの代表者が登壇する「STOが拓く不動産市場の未来」などが予定されている。

文・編集:濱田 優
画像:BG2C FIN/SUM BB オンライン配信より