アマゾン参入で激化するブロックチェーン競争──マイクロソフトにどう立ち向かうのか

クラウドサービスで世界シェアNo.1のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS) を有する米アマゾン(Amazon.com)は、エンタープライズ・ブロックチェーン領域でどのような戦略を描くのか?

アマゾンAWS・ブロックチェーン担当ゼネラルマネージャーのラフル・パタック(Rahul Pathak)氏は2019年5月14日(現地時間)、ニューヨークで開かれている「Consensus2019」カンファレンスに出席し、エンタープライズ・ブロックチェーンの未来をテーマにした議論に参加した。

アマゾンのラフル・パタック(Rahul Pathak)氏

パタック氏は、分散台帳を使った非中央集権型のサービスを求める顧客の声に応えるものが「アマゾン・マネージド・ブロックチェーン(Amazon Managed Blockchain)」だと述べ、そのセールスポイントはオープンソースのハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)やイーサリアムを使用して簡単にブロックチェーンのネットワークを作れることだと説明。

各産業におけるユースケースとして、シンガポール証券取引所の支払いや資産取引における決済スピードの向上、ガーディアン生命・保険部門の取引における検証可能性の維持、米銀大手のウェルズ・ファーゴにおける取引記録などを例に挙げた。

数あるユースケースの中でも、ネスレのケースについては「サプライチェーンにおけるすべての取引を記録するためのインフラを自前で持ちたいと考える企業はいない」と述べ、複数のプレイヤーが参加できるブロックチェーンの有用性を強調し、こう続けた。

「サプライチェーンの99%を握っている企業ならば、中央集権型の仕組みで良いだろう。しかし、それぞれのプレイヤーがそれぞれで取引のコピーを持ち、何が起きたかを検証しようとする時、ハイパーレジャー・ファブリックのブロックチェーンがその役割を発揮するだろう」

クラウド領域では、アマゾンのAWSと世界シェア2位で追いかける米マイクロソフトが提供するアジュール(Azure)との競争が激しいが、エンタープライズ・ブロックチェーン領域でも戦いは続く。AWSは4月、米東部地域でマネージド・ブロックチェーンの提供をスタートしたと発表。一方、マイクロソフトはブロックチェーン開発キットを提供、アジュール・ブロックチェーン・ワークベンチ(Azure Blockchain Workbench)を立ち上げ、攻勢をかける。

他にも、グーグルはブロックチェーン企業と提携し、グーグル・クラウド上でブロックチェーンフレームワークを提供している。IBMは参加許可制のコンソーシアム型ブロックチェーンプラットフォーム「Hyperledger(ハイパーレジャー)」を主導し、世界最大の小売企業である米ウォルマートのサプライチェーンを手がけて、企業のコンソーシアムへの参加を呼びかけている。

エンタープライズ・ブロックチェーン領域は、クラウドソリューションで争ってきたグローバルIT企業の、次の主戦場となるか。

米CoinDeskが主催する「Consensus2019」は、ニューヨークで開催されるブロックチェーン・仮想通貨をテーマにした世界最大級のカンファレンス。この領域をリードする企業トップや開発者が集まり、5月13日〜15日の3日間にわたりさまざまなテーマで議論やプレゼンテーション、ワークショップ、ネットワーキングが行われる。CoinDesk Japanは5月30日、Consensus2019報告会を開催する。

文:久保田大海
編集:佐藤茂
写真:CoinDesk Japan