ビットコインの取引所流入量、「ブラック・サーズデー」以来の高水準

暗号資産取引所へのビットコイン(BTC)流入量は5月17日、15カ月ぶりの高い増加幅で急増したことがブロックチェーンデータから分かった。下落する市場において、より多くの個人投資家が保有資産を清算しようとする兆候の可能性がある。

ブロックチェーンデータ分析会社のグラスノード(Glassnode)がまとめたデータによると、暗号資産取引所各社は17日、30,749.89BTCの純流入量を記録した。これは「ブラック・サーズデー」と呼ばれる2020年3月12日、新型コロナウイルスを引き金とするグローバル金融市場でのパニック売りの中、ビットコイン価格が40%暴落した時以来、1日としては最大の数である。

投資家は通常、保有資産の清算を計画する際、ビットコインを移動させる。例えばブラック・サーズデーには、取引所への純流入量は40,000BTCを超えた。

CoinDesk 20のデータによると、ビットコインは17日、4万2102ドルまで下落し、先週の20%の値下がりを継続。2月8日以来の最低水準まで落ち込んだ。値下がりは週末にかけ、米電気自動車メーカーのテスラが保有するビットコインを売却する可能性があると、一部のツイッターユーザーたちの間で憶測が飛び交ったことで、さらに勢いを増した。

テスラのCEO、イーロン・マスク氏は17日、テスラはビットコインを売却していないと説明。しかしこれまでのところ、ビットコインは4万5000ドルを超えることはできていない。

1日のビットコインの取引所純流入量
出典:Glassnode

コインベースとバイナンスのデータ

グラスノードによると、17日に急増した純流入量の大半は個人投資家に好まれる取引所「バイナンス」に集中していた。一方、アメリカの取引所コインベースからはビットコインが移動し続けており、押し目買いを狙う機関投資家の持続的な需要を示唆している可能性がある。

「コインベースでは、BTCが前回のサイクルの最高値2万ドルを突破して以降、ほぼ常に正味での流出が続いており、そのトレンドは今週も続いた」と、グラスノードは17日付のウィークリーニュースレターで指摘。

「コインベースはアメリカの機関投資家の買い貯めに好んで使われる取引所であり、平均的な1日の引き出しの規模(1日当たり1万〜2万)を考慮すると、今回の価格修正期間中にも、より大口の買い手たちは積極的に買い集めを続けていると考えられる」(同ニュースレター)


バイナンスとコインベースにおける1日のビットコインの移動量
出典:Glassnode

バイナンスは17日、30,749.89BTCという全体の純流入量の80%以上(2万6000 BTC)を受け取った一方で、アメリカのコインベースは146BTCの純流出量を記録した。

これら2つの取引所は最近、ビットコインの流れにおいて異なるトレンドを見せている。コインベースに保管されているビットコインは4月19日以降、34,408BTC減少した一方、バイナンスに保管されているビットコインは同じ4週間で、95,397BTC増加。

バイナンスにおけるビットコインの流れの規模は、ここ数カ月、急激に拡大している。グラスノードはこれを、「バイナンスユーザーのマクロ感情におけるボラティリティ」のサインと指摘する。

「これは、最近のビットコイン流入が、新しい市場参入者(パニック売りをしている人たち)と、他の暗号資産への資金の移動の両方に突き動かされていることを改めて示唆している」と、グラスノードはニュースレターで説明。例えば、代替暗号資産を買うために、ビットコインをバイナンスへと移動させている投資家もいるかもしれない。

一般に、取引所に流入したからといって即座に清算が行われることを意味する訳ではなく、トレーダーはすばやく売れるように体制を整える。また、データが限られていることなどから、どれくらいのコインがすでに清算されたかを測るのは難しい。

トレーダーの一部は、より高いビットコイン価格を期待して様子見姿勢を維持する可能性もある。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Glassnode
|原文:Crypto Exchanges See Fastest Bitcoin Inflows Since ‘Black Thursday’ in March 2020