バドワイザーの知的財産をNFT化──世界最大のビール会社の狙い

世界最大のビール会社、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev:ABインベブ)は、ノンファンジブル・トークン(NFT)を使った大規模なコンテンツ展開を計画している。同社グローバルブランド担当バイスプレジデント、リチャード・オピー(Richard Oppy)氏が米CoinDeskに語った。

同社はインターネット起業家のゲイリー・ヴェイナチャック(Gary Vaynerchuk)氏が設立した新会社「VaynerNFT」に投資するとオピー氏は述べた。

同氏によると、この取り組みは「長期的なビジネス」であり、提携によって、チケットから商品までABインベブのあらゆるものがNTFの素材となるという。

第1弾は、世界で最も価値あるビールブランド「バドワイザー(Budweiser)」の知的財産(IP)からスタートする。統計サイトのStatistaによると、同ブランドの価値は2020年、140億ドル(約1兆5000億円)にのぼるという。VaynerNFTにとっても、バドワイザーが初のクライアントになる。

バドワイザーのブランド力は、NFTに「参入する大きなチャンスになると考えた。これは単なる流行ではなく、将来、人々が考えるスポンサーシップのあり方を変えると考えている」(オピー氏)。

ベルギービールでの成功

ABインベブはすでに、ベルギービールの「ステラ アルトワ(Stella Artois)」でNFTに取り組み、成功を収めている。ここ数カ月、ステラ アルトワはNFTを使ったチャリティオークションを複数開催し、またイーサリアムベースの競馬プラットフォーム「ZED RUN」での競馬NFTのオークションなど、ユニークな取り組みを行っている。

「100万ドル以上の仮想馬を販売した」(オピー氏)

バドワイザーでの取り組みは、はるかに大きなものになるだろう。VaynerXのヴェイナチャック氏は、ABインベブのマーケティングチームと協力して、バドワイザーのIPを活用する方法を考えていると語った。

米CoinDeskとのインタビューで、オピー氏とヴェイナチャック氏は、1つの可能性として体験型NFTをあげた。これは、NFTを保有するスポーツファンや音楽ファンに、他では得られないスターとの交流などを提供するものだ。

マーケティングチームが新しいNFTを検討している一方で、オピー氏は、コレクターズアイテム、記念品、アパレル、商品、限定版、体験、スーパーボウルのチケット、ワールドカップのサイドライン体験のデジタルトークンなど、すでに作成したものをいくつかあげた。

「さらにいろいろなことが考えられる。例えば、世界中にある当社の醸造所から新鮮なビールを入手できるNFTはどうだろう」と同氏は述べた。

収益の向上

500を超えるブランドを持ち、Statisiaによると2019年のマーケティング予算が15億ドル(1650億円)を超えたABインベブは、NFTを展開するためのIPを数多く保有している。

広告やスポンサーシップに「我々はすでにお金を費やしている。それをどのように活用するかを再考することが重要」とオピー氏。

ヴェイナチャック氏は、NFTが流通市場に出回るようになれば、バドワイザーの長期的な収益につながると述べた。デジタルチケットの半券がいつの日か大金で取り引きされる可能性もあるという。

特にチケットはABインベブと密接に結びついている。バドワイザーは4月、10万枚のスポーツチケットを提供すると発表した。

「我々が世界中で関わっているチケットは、将来、すべてNFTになると考えている」とオピー氏。また顧客がNFTを使いこなせるよう、バドワイザーは重要な教育的役割を果たすだろうと述べた。

「我々はすでに、有名人や音楽関係者との契約方法の一部を見直している」とオピー氏。ヴェイナチャック氏は、2021年下半期には実際のプロジェクトが始まると述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Anheuser-Busch Taps Vaynerchuk to Lead Beer Giant’s ‘Long-Term’ NFT Play