「ジャック・マーの門下生」。バフェット氏との昼食を5億円で落札した28歳中国人の評判

「ジャック・マーの門下生」。バフェット氏との昼食を5億円で落札した28歳中国人の評判

Brady Dale
公開日:2019年 6月 11日 16:00
更新日:2019年 9月 17日 14:40

著名投資家ウォーレン・バフェット氏とランチを共にする権利を、457万ドル(約5億円)という過去最高額で落札したのは、仮想通貨「トロン」の創設者で、「ジャック・マーの門下生」を自称する28歳の中国人起業家ジャスティン・サン(孫宇晨)氏だった。だが、サン氏の行動や言動に対し、中国の著名な経営者からは「売名行為」「品がない」と風当りが強まっている。

中国人4人目の落札者

2000年からランチの権利をオークションに出しているウォーレン・バフェット氏

バフェット氏は、慈善活動の一環として2000年からランチの権利をオークションに出しており、サン氏は中国人としては4人目の落札者となった。落札者は7人の友人を連れていくことができ、サン氏は仮想通貨業界の仲間たちを誘っている(既にSNS上で断った人もいる)。ランチ時の話題は原則自由だが、2008年に落札した中国人投資家が、バフェット氏に個別の株を勧めたことがきっかけで株価が急上昇し、その投資家が巨額な売却益を得たことから、「個別の株」に関する話題はNGとなった。

3日前から「匂わせ」投稿連発

ランチの権利を落札した「ジャスティン・サン」こと孫宇晨氏。

サン氏がバフェット氏とのランチの権利をオークションで落札したことは4日に発表されたが、彼はそれに先立つ1日、中国のSNS微博(ウェイボ)で、「ブロックチェーン業界に吉報になると信じている」「大きなことを成し遂げた。3日後に発表する」などと匂わせ投稿を連発。注目が集まっていた。

サン氏は2017年夏にエンターテイメント向けの仮想通貨「トロン」を発行。今回のバフェット氏とのランチ落札のニュースでも、「仮想通貨業界の起業家」と報じられたが、彼は北京大学在学中からさまざまな分野で発言し、中国の社会や経済で「90後」(1990年代生まれ)というキーワードが注目されるようになってから、常にその代表的な人物とされてきた。

2011年に雑誌「週刊アジア」が90後を特集した際には表紙を飾り、2015年には「90後」向けの音声SNSアプリ「陪我(PayWo)」をリリース。また同年、フォーブスの「中国の30歳以下起業家30人」に選ばれた。

数ある栄誉の中でもサン氏が最も誇らしく思っているのは、アリババ創業者のジャック・マー氏が2015年に創設したビジネススクール「湖畔大学」の1期生に、唯一の「90後」として入学を許されたことのようだ。当時、入学許可証を微博にアップして喜びを表現しているほか、微博のプロフィールにも記載している。実際、湖畔大学の1期生は150人の受験者のうち、合格者が30人という難関だった。

ちなみに、サン氏の元彼女はアダルトグッズのeコマース事業を立ち上げ、「90後の起業家」として有名な馬佳佳だ。

「90後の詐欺師」「仮想通貨界の賈躍亭」

だが、サン氏が仮想通貨事業に手を出し始めたころから、彼の評判は変化していく。サン氏は2017年8月にトロンをリリースしたが、その直後の9月4日に中国政府が仮想通貨発行による資金調達(ICO)を全面禁止。サン氏は九死に一生を得た形だが、政府の規制が発動する9月2日に国外に出たため、「海外逃亡した」との噂も出た。

トロンは中国では「詐欺コイン」との批判も根強く、「90後起業家の旗手」だったサン氏は「90後の詐欺師」「詐欺コインの発行者」という不名誉なレッテルも貼られた。

また、「打倒テスラ」を掲げて米国でEVメーカー「ファラデー・フューチャー」を立ち上げ、一時は「赤いテスラ」ともてはやされながら、経営危機に陥った賈躍亭氏になぞらえ、「仮想通貨界の賈躍亭」というニックネームもある。

サン氏のこういったネガティブな評判は、彼自身の言動にも起因しているようだ。

著名起業家たちと場外乱闘

サン氏は今年2月、微博で突然「2014年11月、捜狗CEOの王小川氏に、『お前は詐欺師だ。必ず失敗するだろう』と言われたが、3年も経たず私の会社は捜狗の時価総額を超えた」と投稿。検索ポータル大手「搜狗(sougou)」の創業者である王小川氏を名指しで攻撃した。

王小川氏は頻繁にはSNSに投稿しないが、サン氏がバフェット氏とのランチの権利を落札したと発表した今月4日、同氏の投稿を引用し、「成功者とは何か、詐欺師とは何か。地位や時価総額を成功の証とする者もいるが……」と、暗にサン氏を揶揄する文章を投稿した。

王小川氏がジャスティン・サン(孫宇晨)氏を暗に揶揄する投稿は5900以上のいいねがつき、2500回以上リツイートされた。

そしてこの王小川氏の投稿に、中国の著名経営者や投資家が一斉に反応した。

VCの熊猫資本(パンダキャピタル)パートナー、李倫氏

「ジャスティン・サンがバフェット氏とのランチを競り落としたのは、国際社会における中国人の面汚しだ。世界に中国人の価値観の間違ったイメージを広げた」

EVメーカー小鵬汽車の何小鵬董事長

「恥を知って勇気を持つことは本来いいことだが、恥を知らず人を騙し注目を集めるのは、馬鹿げている」

もっとも、サン氏を擁護する声もある。中国最大の配車サービス「滴滴出行(DiDi)」に買収された「快的打車」の創業者で、投資家の陳偉星氏は、「ジャスティン・サンはセルフプロモートに熱心すぎるだけで、本来勤勉な人間だ」と投稿。

「サン氏は直接的で楽観的で、もったいぶることを知らない典型的な90後だ」とかばった。

売られた喧嘩は倍返し

批判派は「金に物を言わせて」と表現し、支持者は「マーケティングに熱心」と形容する。どちらにしろ、今回のサン氏のバフェット氏とのランチの目的は、彼自身のプロモーション活動という見方で一致している。

そしてサン氏は、「売られた喧嘩」は倍返ししなければ気が済まない人物でもあるようだ。

王小川氏の先のツイートに対しては、@王小川とメンションし、

「創業者のプロダクトと時価総額は、創業者の力を現わすものだ。2022年6月に、トロンと捜狗の時価総額を比べてみよう」と挑発。

どこかで悪口を言われると、スルーできないようだ。

さらには、中国大手不動産グループ「万達集団(ワンダグループ)」の王健林会長の息子で、セレブ投資家兼起業家として有名な王思聡氏に対しても、

「王思聡が俺の悪口を言っているみたいだ」

「親の七光りが、自分の力で成功した人間をディスっている。80後が90後をディスっている。自分の事業に失敗した人間が、創業してまだ続けている人間をディスっている」と同じく@でメンションをつけて絡んだ。

サン氏は10日、微博に「バフェット氏とのランチの場所や時間が決まった」と書き込んだ。5億円を投じて手に入れた「バフェット氏ネタ」の実況中継はしばらく続きそうだ。

文・浦上早苗
編集・佐藤茂
写真・shutterstock, coindesk, weibo