ビットコインのボラティリティはバグではない【オピニオン】

私はファイナンシャルアドバイザーで、ビットコイン(BTC)を保有する顧客もいる。顧客の数人は頻繁に、ビットコイン価格のボラティリティを話題にしていて、彼らはそれが問題だと思っている。

私もかつてはそのように思っていたが、私は間違っていた。ビットコイン価格のボラティリティはバグではなく、特徴であり、究極的には有益なのだ。

ビットコインは「デジタルゴールド」

その理由を理解するためには、まず、ビットコインはインターネットネイティブの「交換可能通貨資産」である、つまり「デジタルゴールド」であるということを考えよう。本物のゴールドは、通貨の主要な特徴をかなり良く満たしている。しかしビットコインは、さらに優れているのだ。

つまりビットコインは、現在約10兆ドルの価値を持つゴールド市場にとって、手強い競争相手なのだ。現在時価総額が約1兆ドルのビットコインは、ゴールドのマーケットシェアを奪うことで、10倍の成長可能性を秘めているということだ。

ビットコインは初期段階にある投資

しかし、投資家の間でゴールドのような信頼を築くには時間がかかる。ビットコインは全体的により優れた資産であったとしても、他の投資家もそのような結論に至り、ポートフォリをそれに合わせて調整するようになるには、数十年かかるかもしれない。ビットコイン誕生から12年以上が経っているが、ゴールドとマーケットシェアを競うには、まだ初期の段階だ。

ビットコイン投資をベンチャーキャピタルやグロースエクイティのように扱うことは、論理的には理にかなっている。ゴールドよりはるかに若く、時間をかけて価値のある競合であることを証明する必要があるからだ。

次のような思考実験をしてみよう。ビットコインが毎日絶え間なく取引できないとしたら?投資してから5年経たないとビットコイン投資の利益を確定できず、その間は投資の価値を原価で記録することになったら?

こうなるとベンチャーキャピタルや、プライベートグロースエクイティ投資に若干似ているだろう。数年間動けなくされ、投資の価値は定期的に記録されるが、本当に利益確定できるまでは、特に意味がないのだ。

12年に及ぶビットコイン価格の歴史の中で、ビットコイン投資をこのように扱ってきた人たちは、その投資の価値が大幅に上昇するのを見てきた。ビットコインの歴史において、5年間での平均値上がり幅は、かなり大きなものだ。

複数年という期間では素晴らしい投資だが、それより短期間では価格が大幅に下がることもある。つまり、ビットコインへの投資は、価格のボラティリティに苦しむ価値があるのかもしれない。

しかし、だからと言ってボラティリティが有益ということではないだろう?と疑問に思うだろう。実は有益なのだ。なぜなら価格のボラティリティがビットコインを「通貨ではなく」するからである。

ビットコインは「通貨ではない」

中央銀行関係者や著名な経済学者が、ビットコインは「通貨としてはボラティリティが高過ぎる」と言うのを何度聞いただろうか?

もちろん彼らは正しいが、いつまでもそうとは限らない。なぜなら、ビットコイン価格の平均ボラティリティは、時間とともに減少しているからだ。(価値が)大きくなればなるほど、価格を動かすのはより難しくなる。ビットコインという「船」が大きくなるに連れて、荒々しい海によって揺れ動きにくくなるのだ。

今のところ政府や規制当局、銀行は、ビットコインとそのエコシステムが成長し、ゴールドからマーケットシェアを奪うのをおおむね自由にさせておくことができる。それは、彼らにとってビットコインの現在のボラティリティが脅威ではないことのサインなのだ。先日ビットコイン先物ETF(上場投資信託)が取引開始したことも、このようなダイナミクスを裏付けている。

ビットコインの価格ボラティリティが、取引可能な通貨として使えるほどに低くなる頃には、(富裕層や権力者層も含む)あまりに多くの人が保有するようになり、政府が攻撃することは不可能になっているだろう。

このようにビットコインは「どっちに転んでも損はしない」投資となるのだ。

政府はボラティリティが低くなるまでは通貨のようには扱わず、ビットコインの価値が非常に高まり、幅広く流通して政府が攻撃できなくなるまでは、ボラティリティが下がることはない。その頃までには、価格ボラティリティは、人々が取引に使えるほどに低くなっているかもしれない。

ビットコインが取引のための通貨にならず、ゴールド市場から価値の半分を奪うだけだったとしても、それはそれで問題ない。その場合には、私の顧客は投資から5倍のリターンを得るだけの話だ。

しかし、ビットコインがその最大限の能力を発揮し、ゴールド、オフショア資産、(不動産や株式などの)その他の価値保管手段、そして最終的にはドル、ユーロ、人民元などからシェアを奪ったら、ビットコイン価格は現在よりもはるかに高くなるだろう。

これには、数十年かかるかもしれない。

それまでは、ビットコインは現在出回っている中で最高のリスク調整した投資機会であるというのが、私の見解だ。私は仲間のファイナンシャルアドバイザーたちに対し、ビットコインの価格ボラティリティを受け入れるよう伝えている。魅力的な投資リターンを伴っているはずだからだ。

ただ、通貨と呼ばなければ良いのだ。少なくとも今のところは。

※見解は筆者個人のものであり、WESCAP Groupでの投資アドバイザーとしての役割には関係ありません。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Why Bitcoin’s Volatility Is a Feature, Not a Bug