JPモルガンCEOがビットコインについて理解できていないこと【オピニオン】

JPモルガンCEOがビットコインについて理解できていないこと【オピニオン】

米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは11日、国際金融協会(Institute of International Finance:IIF)主催のイベントで、ビットコイン(BTC)に対する見方は厳しいものだとする従来の考えを繰り返した。

ダイモン氏はこれまでにも様々な場面で、ビットコインは「愚か者のためのゴールド」や「詐欺」と公言してきた。ビットコインを理解した上での発言だろうか。

ダボス会議に参加するような世界的エリートの指標となる存在のダイモン氏は、「個人的には、ビットコインには価値がないと考えている」と、現在では時価総額1兆ドルの暗号資産(仮想通貨)について語った。

もちろん、ダイモン氏には個人的な考えもあるが、それはJPモルガンのものとは一致していない。JPモルガンは近年、独自デジタル通貨の「JPMコイン」を立ち上げ、暗号資産リサーチにも本格的に着手。8月には、富裕層の顧客に対して暗号資産ファンドへの提供を開始した。

暗号資産の根本的価値に疑問を呈しながら、その業界から利益を出そうとするような人物として、ダイモン氏のコメントを偽善的と片付けるのは簡単だ。実際ダイモン氏は、ビットコインを詐欺と呼んだことは後悔したようだ。「私は広報担当者にはなりたくない。私には関心がない。私には何の違いももたらさない」と、ダイモン氏はIIFに語った。

彼の利益重視の態度は、ダイモン氏がなぜたびたびビットコインによって不意を突かれるのか、なぜ彼の批判にも関わらず、暗号資産業界が継続し、繁栄するのかを説明するのに役立つ。

ビットコインの供給量上限

理論的に2100万BTCを最大数とする、ビットコインの供給量上限についての、ダイモン氏の11日の発言を見てみよう。

「もう1つ、聞いてみたい。どうして2100万で終わりとなると分かるんだ?アルゴリズムを読んだのか?みんなそんなことを信じているのか?どうだろうか。私はそんなものについては常に懐疑的な人間だ」と、発言したとされている。

ダイモン氏による、ビットコインの長期的可能性への批判の中心は、規制上のリスクや取り締まりの可能性であり、この発言はその中核を成すものではないが、ビットコインの価値提案の中核に迫るものであることは確かだ。愚か者とは、バカげた質問をする人ではなく、答えを聞かない人だと、誰かがどこかで言ったとか。

簡単に答えるとしたら、2100万コインで終わるということも含めて、特定の約束をする通貨システムは、ビットコインだけなのだ、ということになる。それが、法定通貨モデルとビットコインを分ける点だ。

「ビットコインマキシマリズム」の背景にある根拠を論じた最近のフォーブスのコラムの中で、ビットコイン・インフルエンサーのピート・リッゾ(Pete Rizzo)氏は、ビットコインという独自の経済システムが保証する4つの「中核的権利」を挙げた。

1. 秘密鍵保有を通じた通貨に対する変更不可能な権利

2. ノード実行を通じた通貨供給を監査する権利

3. ビットコインの通貨供給と発行ポリシーを知る権利(「半減期」について聞いたことがあるだろう)

4. プロトコルに対する変化を拒否したり、暗黙に米ドルの覇権から手を引くことで、意義を表明する権利

これらの保証の一部は技術的なものであるか、ダイモン氏が指摘する通り、監査可能なコードに組み込まれているものだ。

一方、社会的なものもある。デジタルネットワークとしてのビットコインは常に、ユーザーが自らのコインを保有し、ピアツーピアで取引することを可能にする。同様に、人々は常にノードを実行し、通貨供給を監査することができる。コードに含まれているのだ。

供給量上限に関するダイモン氏の疑念は、よりややこしいものともなり得る。

開発者がビットコインの特定の特徴を変更するのを阻止するような、技術的な制限は課せられていないという点では、ダイモン氏は正しい。そして少なくとも、事の展開によっては、より多くのコインを追加する方に経済的インセンティブが生じる可能性はある。

ブロックタワー・キャピタル(Blocktower Capital)のアリ・ポール(Ari Paul)氏がダイモン氏にツイッターで次のように反応した通りだ。「つまり問題は、『人々はコードを変えるだろうか』ということになる」

ビットコイン・コアにかつて協力していたギャビン・アンドレッセン(Gavin Andresen)氏は先月、そのような未来の「可能性」の1つを扱うSFのようなものを書いた。

2つのビットコインがあるのだ。少しインフレ的で、マイニング補助金によって安全性を確保している、現在のバージョン。ビットコインネットワークは、「プルーフ・オブ・ワーク」と呼ばれるプロセスを通じてブロックチェーンを築くのにエネルギーを使ってくれる人たちに、予想可能な数のコインを与えている。そして、そのような補助金が無くなった後のバージョンだ。

2140年のどこかで、2100万ビットコインがすべて発行され、マイニングされる。ネットワークはセキュリティーのための支払いで、手数料に依存することになる。

そうなるとどうなるのかと尋ねたくなるのは、もっともだ。とりわけ、ビットコインの手数料経済はまだ成熟していないと指摘されている中では。ありがたいことに、ビットコインコミュニティーの大半の人々は、知らないと認めるだけの謙虚さを持っている。

「ビットコインの手数料市場が機能すると保証することはできない。そのようなデータはないのだ」と、名前は出さないがビットコインに強硬的な姿勢を持つ著名な作家が指摘した。

コミュニティーとしてのビットコイン

しかし、実験が失敗に終わったとしても、ビットコインが保証できるより大きな権利があるのだ。まず第一に、ビットコインは通貨であり続ける。

ポール氏が指摘する通り、誰でも好きな時にビットコインのコードを書き換えることができる。しかしそれより難しいのは、人々にそれを使ってもらうこと、マイナーにその安全性を確保してもらうこと、開発者にそれを基盤に開発してもらうことだ。

それが、ビットコインを安全にする社会的テクノロジーなのだ。コンセンサスがあれば、ビットコイナーたちは2100万の上限を変更することができる。しかしそれは、金銭的利害次第だ。

過去には、力のあるグループがビットコインの根本的特徴を変えようとして、却下された。ビットコインのソースコードを使い、いくつかのパラメーターを変えているアルトコインも多数存在してきた。

2100万という上限は、ビットコインに永遠にエンコードされたものではないかもしれないが、ビットコインの特徴的な要素となっている。それが変更されたら、もうビットコインではなくなる。

確かに、ビットコインブランドの一部ではある。しかし、ビットコインを信じる人たちが支持するもの、主に裕福な人をさらに裕福にするようなインフレ的な経済とは、一線を画したコインとしての特徴でもあるのだ。それこそが、ダイモン氏が理解できていない点だ。ビットコインは単なるコードではなく、コミュニティーなのだ。

ダイモン氏はビットコインに「関心」がないかもしれない。しかし、たくさんの人は関心を持っている。本当に多くの人が。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:24K-Production / Shutterstock.com
|原文:What Jamie Dimon Doesn’t Understand About Bitcoin

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