DeFiの分散化は「幻想だ」:BIS報告書

DeFiの分散化は「幻想だ」:BIS報告書

DeFi(分散型金融)は中央集権化の問題を抱えている。政策決定者たちは、DeFiセクター規制のためにそこを活用していくべきだ。国際決済銀行(Bank for International Settlements:BIS)が、最新の四半期報告書の中で指摘した。

各国中央銀行間の連絡調整、協調のための国際組織であるBISは、6日に報告書を発表。その中で、国際的な非銀行系金融仲介業者の世界における展開を検討し、政策の展望を提供している。報告書に含まれる5つの特集のトップでは、DeFiと、それが金融安定にもたらす影響を扱っている。

DeFiは、銀行や取引所といった伝統的仲介業者を、ブロックチェーン上の自動化されたスマートコントラクトで置き換えることによって、金融取引の効率性を高めることを目指している。12月3日時点では、DeFiの市場規模は1620億ドルと、4月から26%成長している。

仲介業者不在のシステムをどのように規制できるかについて、大いなる議論が行われているが、BISの報告書によれば、政策決定者たちにはエントリーポイントがある。DeFiには、中央集権型ガバナンスの「避けられない必要性」があると、報告書は指摘しているのだ。

「報告書の中で提起しているのは、自動化された取引だけを基盤として金融システム全体を運用するには限界があるという点だ」と、BISの経済アドバイザーで研究責任者のヒョン・ソン・シン(Hyon Song Shin)氏は、6日の記者会見で述べた。

DeFiプロジェクトには、再編成や判定を必要とする機会が出てくるだろうと、シン氏は述べた上で、「そのような中央集権的ガイダンス抜きで、DeFiプロジェクトをどれほど推し進められるかは不明だ。非常に慎重に注視していかなければならないと考えている」とコメントした。

報告書によれば、ブロックチェーンのコンセンサスメカニズムが、権力を集中させる傾向を持つために、少数のステークホルダーが大きな決断を下すことが容易になってしまう。

「DeFiに内在するガバナンス構造が、公共政策にとってエントリーポイントである」と、報告書は指摘する。

報告書によれば、急速な成長にも関わらず、DeFiは「自己完結型」であり、より大きな金融システムを混乱させる可能性は低いままである。しかし、DeFiが広範に広がれば、その「深刻な」脆弱性が金融の安定を脅かすかもしれない。

16ページにわたる特集によると、それらの脆弱性は、仲介業者抜きの貸付プログラムやステーブルコインの流動性の問題に起因する。ステーブルコインとは、資産にペグされた暗号資産(仮想通貨)であり、DeFiアプリケーションでの取引を進めるのによく使われる。その他の脆弱性としては、DeFiアプリケーション間の相互接続や、打撃を吸収する銀行の不在などが挙げられている。

分散化という幻想

報告書は「DeFiの分散型という性質は、政策の実行方法をめぐって問題を提起する」と指摘しながらも、「DeFiの完全な分散化というのは幻想であると、私たちは主張する」とも述べている。

報告書によれば、このような幻想を壊す可能性のある要素の1つが、DeFiのガバナンストークンだ。これは、分散型システムにおける投票権を表す暗号資産である。

ガバナンストークンの保有者は、提案やガバナンスシステムへの変更について投票することで、DeFiプロジェクトに影響を与えることができる。このような管理組織は自律分散型組織(DAO)と呼ばれ、1つのDAOが複数のDeFiプロジェクトを管理することも可能だ。

「このような中央集権化の要素が、DeFiプラットフォームを企業のような法的実体として認識するための根拠となり得る」と、報告書は指摘。例として、ワイオミング州では、DAOがLLC(有限責任会社)として登録できることが挙げられている。

「DAOや、それらのやり取りの基盤となっているガバナンスプロトコルが、政策決定者たちにとってのエントリーポイントである」と、報告書は主張しているのだ。

6日の記者会見の中でシン氏は、DAOという中央集権型組織を通じて、規制当局が対処できる3つの分野があると説明した。消費者保護、マネーロンダリングや犯罪行為への備え、そして、DeFiエコシステムが従来の金融システムとどの程度重なるかという点を通じた、金融の安定性だ。

「そして、これらの新しい組織、これらの新しい仕組みを、金融市場インフラの一部としてどのように考えるかという問題がある」とシン氏は語った。

このようなエントリーポイントは、DeFi業界があまりに大きくなって、金融の安定への脅威となる前に、DeFiに関連するリスクを当局が抑えられるようにするはずだと、報告書は指摘している。

脆弱性

DeFiブロックチェーンにおける意思決定の権力は、少数の大口投資家のグループに集中してしまうリスクがあると報告書は指摘。DeFiコミュニティーでは、そのリスクを乗り越えるための方法をますます活発に議論している。

「権力の集中は共謀を促し、ブロックチェーンの力を制限する可能性がある。少数の大口バリデーターのグループが、金銭的利害のためにブロックチェーンを変えるほどの権力を獲得するというリスクを生む」と、報告書は指摘している。

報告書によれば、大口のバリデーターはまた、自らのウォレット間での作為的な取引によってブロックチェーンを混雑させたり、インサイダートレーディングを行うリスクもある。

DeFiプラットフォームを通じた貸付は一般的に、超過担保となっており、担保として使われている資産の価値よりも、貸付が小さくなっていると、報告書は指摘した。

「しかし、借り入れた資産は別の取引で担保として再利用でき、投資家は担保の額に対して、どんどんと大きな投資をすることができる」と報告書は説明する。

こうして、レバレッジによって、当初の資本に対してより多くの資産を購入できるサイクルが生まれる。後に債務を縮小する必要が生じた時に、投資家はこれらの資産を手放すことを余儀なくされ、価格に下方圧力がかかるのだ(報告書)。

さらに報告書は、ステーブルコインの脆弱性にも警告を発し、テザー(USDT)のようなステーブルコインは、「流動性のない流通市場を持った短期証券」であるコマーシャルペーパーに裏付けられているため、「リスクと流動性がマッチしていない」と述べる。

暗号資産が裏づけるダイ(DAI)などのステーブルコインは、「それらの資産の価値がステーブルコインの額面価格をすばやく下回る可能性があるために、市場リスクにさらされている」と、報告書は説明し、暗号資産の世界には、厳しい時期に流動性を提供できる銀行のような備えが存在しないのだと、報告書は述べている。

DeFiと伝統的金融システムとの距離は、伝統的市場の参加者が暗号資産への進出を検討するに従って、狭くなっていくだろう。報告書によれば、これが波及効果のリスクを生む。

「これは、伝統的システムと暗号資産システムとの間のつながりを強化する可能性がある」と報告書は指摘するが、ビットコイン先物ETF(上場投資信託)がアメリカで今年承認されたことが、その一例である。

規制を受けていないDeFiセクターが急速に成長していることを鑑み、政策決定者たちは手段を講じ始めるべきだと、報告書は示唆する。

「規制による予防措置は、DeFiの革新的な潜在能力が、金融に全体としてのメリットをもたらす役にも立つだろう」と、報告書は主張した。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:スイス・バーゼルのBIS本部(rabantos / Shutterstock.com)
|原文:DeFi’s Decentralization Is an Illusion: BIS Quarterly Review

おすすめ記事: