NFTにおける芸術と著作権侵害の狭間

NFTにおける芸術と著作権侵害の狭間

Netflix史上最も人気のある番組『イカゲーム(Squid Game)』は、9億ドル(約103億円)もの収益を上げたと推定されているが、製作スタッフはそれで満足するつもりはないようだ。

シーズン2に向けてさらに収益を上げるべく準備を整え、20以上の商標を登録して、様々な関連グッズやライセンス供与の契約をとりまとめている。

NFTと商標権

増収を目指す中で、Netflixは「Play Squid」と「Squid Game Card」のNFT(ノン・ファンジブル・トークン)コレクションを公認しなかった。プレーして稼ぐ型のコンテストと、「イカゲームメタバース」の2つのNFTは、世界最大のマーケットプレイスの「オープンシー(OpenSea)」において、合わせて245ETH(現在価格で約78万ドル相当)の売り上げをもたらしている。

どちらのNFTにも、Netflixや番組の製作者ファン・ドンヒョク氏は関わっていない。11月にラグプル(資金を持ち逃げする詐欺の一種)に終わり、多くの投資家を後悔させたイカゲームトークンも同様であった。

実は、オープンシーで「Squid Game(イカゲーム)」と検索すると表示される68万2569のアイテムのうち、知的財産権(IP)の保有者と関係があるものはひとつもない。IP保有者が、デジタルブロックチェーン資産にこの商標を使うことを誰にも許可していないからだ。

それでも、これらの派生アイテムや、はっきり言って盗まれた画像などが、オープンシーで購入・取引可能となっている。

ミームや派生アイテムは、インターネットやNFT文化の中心にあるものだ。絶えず進化する画像、オーディオ、テキスト、コラージュ、ビデオなどの組み合わせは、私たちの声や気持ちを代弁するのと同じくらいに、私たちに訴えかけてくる。

(人々はミームを使って、自分の感情を表すと同時に、フォローする人や友達のフィードの中で自らの見解が跳ね返ってくるのを目の当たりにする、ということだ)

しかし、クリエーター第1のマーケットプレースと、NFTコレクションが獲得できる価値を考えると、商標保持者たちは、なぜ他の人たちが自分の知的財産から利益を上げてるのかと、疑問に思い始める。

NFTそのものが問題なのではない。売り手がNFTを使って何をしているかが問題なのだ。

「NFTそのものには、著作権は関係ない。典型的には、画像につながるURLだけから構成されるからだ」と、ケンタッキー大学ローゼンバーグ法科大学院のブライアン・フライ(Brian Frye)教授は説明する。「しかし、URL先に画像を置くことは著作権に関わるもので、URL先に画像を置いている人が著作権を保持していないか、そのようにして画像を使う許可を受けていない場合には、一般的に著作権侵害となる」

芸術か?著作権の侵害か?

ブランドや弁護士が関わり始めた最近では、芸術や表現における「何でもあり」的なアプローチは制限され始めている。1980年代後半、音楽業界がサンプリングに関してヒップホップを批判した頃にも同じようなことが起こっていたが、その時に似たテクノロジー監視が、NFTにもやって来ているのだ。

ファミリー向けレストランチェーン、オリーブガーデンのバーチャル版の所有権を約束したプロジェクト「ノン・ファンジブル・オリーブガーデン」は先日、880のNFTの販売を開始した。

1つ20ドルで販売開始されたが、価格は高騰。数日のうちに、最初の価格の100倍で売られるようになったのだ。500人以上のコレクターが高値でトークンを購入し、ミーム的価値がツイッター上でも多くの話題をもたらした。

しかし盛り上がりが続いたのは、オリーブガーデンのオーナー、ダーデン・コンセプツ(Darden Consepts)社がオープンシーに対してDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づいた削除を申し入れるまでだった。オープンシーは申し入れに応じ、コレクションは削除された。

私たちは以前にも、こんな展開を目にしている。YouTubeの初期の頃、あまりにも多くのミュージックビデオや映画が投稿され、業界は対応しきれなかった。機械学習と広範囲なライセンス供与契約によってはじめて、流れを食い止めることができたが、現在でも完璧ではない。

著作権で保護されるべきものと、芸術的な表現との違いについての議論は続いている。「著作権法では、著作権保有者が独占できる『権利のバンドル』が与えられる。これには複製する権利、派生アイテムを作る権利、コピーを流通させる権利、公に上演したり、展示する権利が含まれる」と、NFTを専門にする弁護士モイシュ・E・ペルツ(Moish E. Peltz)氏は述べる。

しかし、知的財産権を専門とするフライ教授は次のように語る。「著作権で保護された画像が、批評、パロディー、学術のために使われた場合には、公正な利用とみなされ、著作権侵害には当たらない。注意が必要なのは、NFTプロジェクトは商業的利用に当たるという点だ。とりわけ、特定の画像のNFTを大量に販売している場合には、公正な利用には当たらない」

これは、かなり大きな解釈のずれだ。NFTに関して、何が芸術とされるかの定義を限界まで広げようとするクリエーターにとっては、厳しいものとなるかもしれない。

ブランドの反撃

NFTをめぐる法的混迷の例をもう1つ。エルメスと、同ブランドの代表的バッグ「バーキン」をモチーフにしたNFT「メタバーキン(MetaBirkins)」を作ったアーティスト、メイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)氏との戦いだ。

ロスチャイルド氏はNFTコレクションの名前に「バーキン」の文字を入れただけでなく、このバッグの象徴的なシルエットも利用しており、他の作品にも、南京錠などの有名なアクセサリーを使っている。

法律上、ブランドはしばしば、ロゴマークだけでなく、トーンやシルエットなども商標登録できる。ハーレーダビッドソンはエンジン音、コカコーラはボトルの形の商標権を保有していることからも、エルメスが今回の件では、しっかりとした法的な拠り所を持っているようだ。

さらに、ロスチャイルド氏が芸術的な派生アイテムを1つも作ることなく、100もの非常に高価なデジタルアイテムの「プロダクトラインアップ」を揃えていることから、NFTマーケットプレース、ラリブル(Rarible)上に出品している彼は、アートギャラリーに作品を展示しているというよりも、店舗に商品を陳列しているのではないかと考えられてしまうかもしれない。

アンディー・ウォーホルによるキャンベル缶をモチーフにしたアートと、オリーブガーデンの店舗写真を並べたノン・ファンジブル・オリーブガーデンによるツイート。
「『芸術とは、無料のグリッシーニがもらえるものだ』- アンディー・ウォーホル」という、皮肉な偽の格言が添えられている。(オリーブガーデンでは無料のグリッシーニが提供されることから)

「才能あるデジタルアーティストの作品が盗作されるのを見るのはうんざりするが、ブランドの知的財産関連のものもあふれているようだ。しかもその大半は、丁寧さや想像力をあまり使わずに作られている」と、「Cryptokicks」と呼ばれるナイキによるNFTの商標権登録に携わったマシュー・デイビス(Matthew Davis)氏は語った。

「残念ながら、売買的な側面の方により重点が置かれているようだ。NFTがここまで派生的で乱雑、収益のためだけに作られていなければ、ブランドはもっと広い心を持てるような気がする」と、デイビス氏は指摘した。

文化的ブランドはおそらく、著作権侵害の餌食に最もなりやすく、最も幅広いコレクター層を抱えているだろう。シュプリーム、アディダス、プレイステーション、グッチ、レゴ、オフホワイトなどのブランドをNFTマーケットプレースで検索すると、数え切れないほどの結果が表示される。

その多くは、ブランドのクリエイティブディレクターに仕事を辞めさせたくなるくらい、ひどいクオリティだ。しかも、ファッション業界だけではない。Ford、IKEA、KFCをはじめとする多くのロゴが使われ、NFTとして販売や競売に出されている。

今後の見込み

ブランドと、NFTのクリエイティブな利用の境界線が曖昧なだけでなく、知的財産権の所有者と、そのコンセプトを最初に思いついた人のうち、どちらがNFT販売の権利を持つのかを決定するのも、厄介な作業となり得る。

クエンティン・タランティーノ氏が映画『パルプ・フィクション』の脚本、監督を手がけたことは、異論のない事実だ。それでも配給会社ミラマックスは、彼が手書きの脚本をNFTとして販売するのを阻止しようとしている。作品の知的財産権を同社が所有していると主張しているのだ。

オリジナルのミームの作り手に関しては、その作品に対して著作権が適用される。例えば、「ニャンキャット(Nyan Cat)」を生み出したクリス・トーレス氏は昨年、大いに複製されたミームの独自バージョンを60万ドル近くで売却した。

さらに多くの企業やブランドがNFTやメタバースの世界に進出するに従い、彼らとその弁護士チームが積極的に、彼らの商標から利益を上げようとする人たちに異議を申し立てるようになると見込まれる。

一方、Bored Ape Yacht Clubやクリプトパンク(Crypto Punk)などの人気プロジェクトも、同様の著作権侵害問題に直面するかもしれない。(Apeの模倣はすでに多く出回っている)

ウェブ2が分散型ウェブ3に移行するに伴い、多くの開発者やクリエーターたちには、大きなチャンスがもたらされている。しかし、音楽業界とYouTubeの歴史が教えてくれた通り、知的財産権の侵害は、長くは続かない。

さらに、ブロックチェーンには資産の所有権を追跡できるという特徴がある。そうなると今回は、クリエーターだけでなく、コレクターたちも報いを受けるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Balance Between Art and IP Theft in NFT Culture

おすすめ記事: