「暗号資産の冬」は始まっているのか?

暗号資産(仮想通貨)市場は過去3カ月で、時価総額1兆2000億ドル(約139兆円)を失い、「暗号資産の冬(Crypto Winter)」という言葉が、再び聞かれるようになってきた。

2017年から2018年にかけてのビットコイン(BTC)市場の停滞で使われたこの言葉は、資産価格がしばらくの間一貫して下落する継続的な弱気相場の時期を表す。

前回の暗号資産の冬では、ビットコイン価格は84%以上下落した。パニックは暗号資産市場全体に広がり、アルトコインの大半も、並んで大幅に値下がりした。ブロックチェーン業界全体での人員削減、メインストリームへの普及の遅れ、ビットコインの価値がゼロになるという予想の再浮上など、連鎖的な影響もあった。

その後、暗号資産市場が回復の兆しを見せたのは、2019年半ばになってからであった。伝統的な機関投資家による記録的な投資が支えとなり、さらにアメリカと中国の貿易摩擦の深刻化が、ヘッジとなる資産を探し出す投資家の動きを促した。

その時と現在の事情は確かに異なっているが、新たな冬がそこまで来ているという噂が広まり始めている。果たして、暗号資産の冬が到来したと、本当に言えるのだろうか?

1. 暗号資産市場の当時と今

暗号資産市場はこれまでに、一度しか冬を経験していない。再び冬が訪れようとしているかどうか見極める方法の1つは、当時と今の市場を比較することだろう。

2018年の暗号資産の冬は、ビットコインが2017年12月、1万9850ドルの当時史上最高値に到達した直後に到来。その後51日間で、ビットコイン価格は70%も下落した。

一方、現在の状況を見てみると、ビットコインが史上最高値の6万8990ドルから下落を始めてから、1月28日で75日目。価格は52%下落し、回復の確かな兆しは見えていない。

より広範な市場全体を見てみると、CoinMarketCapのデータによれば、すべての暗号資産の時価総額は、2017年から2018年にかけて51日間で66%下落。一方、ここ75日間では、暗号資産市場全体の時価総額は48%減少している。

最後に、前回の暗号資産の冬では、ビットコインは84%値下がりして底値を打った。今回もビットコインが同じ割合で値下がりすると、1万1000ドル付近で底値に達することになる。

もちろんこれは、現在の市場と前回の暗号資産の冬を比較し、それに基づいた考察であり、新たな弱気サイクルが始まったことを確定するものでも、否定するものでもない。

2. 伝説の暗号資産4年サイクル

暗号資産市場は(近年では)、4年ごとに高騰と下落のパターンを繰り返すという考えが広まっている。これが自己充足的予言かどうかを見極めるのは困難だが、多くの人はこの仮説を、約4年ごと(より正確には、21万ブロックごと)に起こるビットコインの半減期のタイミングと関連づけている。

半減期が市場のダイナミクスに変化をもたらし、新しい市場サイクルが始まる、とされているのだ。

ビットコイン半減期では、ブロック報酬としてマイナーに与えられる、新しいビットコインの数が半分になる。2020年にあった前回の半減期では、ブロック報酬は12.5から6.25に半減した。

半減期に関して特に興味深いのは、半減期が起きてから約1年後に、暗号資産市場に対して繰り返し影響をもたらしているように見える点だ。

「Willy Woo(ビットコインのオンチェーンアナリスト):ビットコインの強気/弱気4年サイクルは、BTC半減期による売り圧力の緩和によって引き起こされる。その刺激が、完璧なタイミングでお風呂のお湯を叩いた時のように、水紋を引き起こす。刺激の時点で、魔法が起こるのだ」

ビットコインのブロック報酬が25から12.5に減少した2016年の半減期から1年後、ビットコイン、そしてその他の大半の暗号資産は、史上最高値を更新した。その次の半減期から1年後の2021年にも、ビットコインやその他多くの暗号資産が、新たな史上最高値を記録。

この2つのピークの間に4年間の隔たりがあったことから、一部の投資家は、暗号資産の冬にも同じ隔たりがあるのではと、心配になっている。4年のパターンに従うとしたら、前回の冬は2018年だったため、2度目の冬は今年やって来ることになるのだ。

しかし、当時と比べて成熟した市場や、整った規制、賢くなった投資家、間接的に暗号資産市場に投資するための金融商品がより豊富になったことなど、様々な要素を考慮に入れることが大切だ。

「Michaël van de Poppe(暗号資産顧問企業CEO):
正直に言って、大いに納得がいく。
今回のサイクルは、前回のものより長い。
4年サイクルは、マクロ経済学的影響によってもう当てはまらない。
今回のサイクルは、皆が見込んでいるよりも高く、長くなる。
#ビットコインは強気だ」

3. 事態を悪化させるマクロ経済的要因

暗号資産の世界だけでなく、グローバル市場全体においても、2018年からは多くが変化した。

世界中の金融市場は、新型コロナウイルスのパンデミックに揺り動かされ、米連邦準備制度理事会(FRB)は3年ぶりに利上げをすると見込まれ、多くの国で、インフレ率が数十年ぶりの高水準に達している。

さらに、アメリカ連邦政府の負債はここ10年で、2倍の28兆ドルまで膨れ上がった。暗号資産が生まれて13年、おおむね同業界を放っておいた世界中の当局は、新しい規制や法律で追いつこうと躍起になっている。

このような要因のために、借り入れはさらに高くついて魅力を失い、生活にかかる費用が高まる中、ここ1年で見られた機関投資家や個人投資家による軽率な投資が抑えられる可能性は大いにある。

その延長として、暗号資産の冬を引き起こすのに必要なより冷え込んだ状況がもたらされるかもしれない。

それでも、セルオフと暴落、暗号資産の冬の違いを理解することは大切だ。ニュースの見出しはしばしば、暗号資産市場の動きの深刻さを過大に伝える傾向があるが、暗号資産市場における修正の大半は単に、セルオフ(約5〜20%の値下がり)だ。

暴落とは、20〜50%の値下がりで、暗号資産の冬は(過去の事例をもとにすると)10〜12カ月におよぶ80%以上の値下がりを伴う。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Is a Crypto Winter Coming? 3 Things to Consider