GameFi、アジアで規制の壁に直面

今年最初の数週間だけでも、GameFi(ブロックチェーンを活用したゲームと金融の融合)における次なる大ブームを求めて、大きな資本が流れ込んでいる。

暗号資産(仮想通貨)取引所のFTXが1月に、ゲームを標的にした20億ドルのファンドを創設すれば、シンガポールのCrypto.comは2億ドルのファンドを5億ドルに拡大し、投資の強化を進める分野の1つがゲームであると語った。

ゲームに対する暗号資産投資家たちのこのような情熱は、既存ゲーム業界大手の一部幹部にも共通している。エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)やユービーアイソフト(Ubisoft)の経営陣は、ブロックチェーンテクノロジーやNFT(ノン・ファンジブル・トークン)が、ゲームの未来を象徴していると語っているのだ。

メインストリームの暗号資産ゲームはすでに、消費者らの関心の鈍さという課題に直面してきたが、業界はアジアの最重要市場のいくつかで、さらに大きな困難にぶつかっている。厳格な規制の枠組みだ。

既存の法律

暗号資産全般において、通常は、規制の不透明感という問題がほぼ当然のようにつきまとう。しかし、暗号資産ゲームに限って言うと、ゲームトークンから収益を上げることに関する法律が、韓国、日本、中国にすでに存在している。しかもそのような法律の一部は、20年以上も前に登場しているのだ。

韓国・ソウルにある、GameFiサービスを手がけるポスト・ボイジャー(Post Voyager)のオレグ・スマギン(Oleg Smagin)氏は、韓国のゲーム業界推進法の32条が問題となる可能性があると指摘。ゲーム通貨を現金に交換することを、明確に禁止する条項だ。

「この条項は、P2E(Play-to-Earn:プレーして稼ぐ型)ゲームやブロックチェーンが生まれるずっと昔から存在していたというのが、興味深い点だ。何万人もの韓国人が、悪名高い『Seatalkという』ゲームをプレーしていた2004年に、追加された条項なのだ」と、スマギン氏は語り、次のように続けた。

「このゲームではクーポンを獲得でき、それはほとんどどこでも換金できるようになっていた。あまりにも人気が高まり、政府は賭博の危険な形態と見なすようになったほどだ」

その法律が20年近くそのままになり、現在はアクシー・インフィニティ(Axie Infinity)のようなP2Eゲームの普及を阻止するために使われていると、スマギン氏は指摘する。「規制当局にとって、アクシーはSeatalkと何ら変わらない。取引所を利用して、ゲームで獲得したトークンを現金に変えることができるからだ」

韓国には、緩やかなウェブの検閲が存在し、主にポルノや、政府が違法や反体制的と見なすコンテンツがブロックされているが、アクシー・インフィニティは今のところ、オンラインでアクセス可能だ。

しかし、P2Eゲームを、モバイルアプリストアなど、同国にすでに存在するデジタル、あるいは小売の経路を通じて流通することはできない。大手のゲーム開発業者にとっては、これでは成功の見込みはないと捉えられる。

高麗大学校で国際的なサイバー法を研究し、暗号資産金融サービスを提供するデリオ(Delio)のディレクターも務めるメーガン・ファン(Megan Huang)氏は、韓国のゲーム物管理委員会はすでに、格付けを公表しないことで、P2Eゲームの「Infinite Breakthrough」と「Three Kingdoms Reverse」のモバイルアプリストアでの流通を阻止していると説明。

「(ゲーム物管理委員会は)アップルとグーグルに対し、アプリストアへのP2Eゲームのさらなる登録を阻止するよう、公式な要請を行った」と、ファン氏は語った。

さらにファン氏は、投機行為、賭博、景品を禁止するゲーム業界推進法28条が、新興のP2Eゲーム業界にとって問題となると指摘した。

しかし、ウェブベースのゲームに関しては、いかなる法律であっても、どれほど効果的になり得るのかという疑問が常につきまとう。ファン氏によると、韓国のゲーマーの多くはすでに、国家規模でのブロックを完全に回避できるVPNを使って、P2Eゲームにアクセスしている。

日本では賭博と見なされる可能性

日本では、P2Eゲームは困難な状況にある。ゲームに関する法律ではなく、ゲーム内での行為の大半が、賭博と見なされる可能性が高いからだ。

東京にある創・佐藤法律事務所は9月、同事務所の分析に基づくと、アクシー・インフィニティのゲームの中核的機能は、違法な賭博行為と見なされるか、景品表示法の適応を受けると指摘した。

「2種類のアクシーを交配させて新しいアクシーを獲得するブリーディングについては、一定のSLPトークンの支払いが必要であること、(中略)そして排出される新しいアクシーがランダムに決定され、支払ったトークン+使用したアクシーの価値分の価値を下回るアクシーを取得する場合もあると思われるため、賭博罪が成立する可能性が高いと考えられる」と、創・佐藤法律事務所は説明する。参加費用のかかるトーナメントも、このカテゴリーに分類されるだろう。

創・佐藤法律事務所はまた、アクシー・インフィニティのファーミングという仕組みも、景品表示法の規制を受けるものだと指摘。景品表示法は、景品として提供できる物品やその他経済上の利益の上限を定めており、プレイヤーがゲームをプレーするために、初期投資を行う必要のあるP2Eモデルの場合には、景品には一定の上限が適応されることになると、同事務所は説明している。

中国では全面禁止

最大のゲーム市場の1つ、中国では、GameFiに対して最も厳格な禁止措置が徹底されている。韓国と同じように、規制の枠組みの一部はすでに、かなり以前から存在していたものだ。

2000年代半ば、テンセント(Tencent)がバーチャル通貨「QQコイン」を開発したと、深圳市にあるNFTプロジェクト「Prota-1」のジェイソン・フー(Jason Hu)氏は説明した。

QQコインは人民元と連動したもので、現金やその他の物品と交換することができた。しばらく存在していたが、中央銀行に当たる中国人民銀行が2007年に取り締まりを宣言した。

「人民元に交換可能なゲーム内の要素は、厳格に禁止されている。オンラインポーカーの多くも、トークンコインが人民元に換金可能なために、禁止された」と、フー氏は説明した。

中国人民銀行は2017年、暗号資産の取り締まりを表明し、GameFiの中国参入の可能性は全面的に排除された。

ファン氏によると、中国国内では、ゲームは許認可制の行為であり、同国でゲームの発売を計画する企業は、中華人民共和国工業情報化部からICP(Internet Content Provider)ライセンスを取得するとともに、国家新聞出版広電総局から承認を受ける必要がある。

「GameFiは、暗号資産ウォレット、取引所、トークンの取引など仮想通貨事業に関わるため、中国の法律では許可されていない」と、ファン氏は述べる。

海外のメーカーは、テンセントやNetEase(NetEase)、JD(京東商城)など国内企業と連携してゲームを公開する必要がある。しかし、中国のテック大手はすべて、NFTをめぐる投機を禁止する自主規制の誓約に署名している。

「(NFTコレクターは)NFTを収集し、購入したNFTデジタルコレクションを楽しんだり、表示することしかできないため、中国のNFT市場は、海外とはまったく異なったものになっている」と、ファン氏は話す。

またフー氏によれば、中国のメディアはNFTの代わりに「デジタルコレクション品」という言葉を使うよう推奨されており、トークンについて報じないように指示を受けている。

中国の厳格な規制枠組みは、GameFiが同国で成功できないことを意味しているが、フー氏は挫けてはいない。彼は中国が、ゲームやメタバースの「工場」となると見ているのだ。

「中国は、優秀な開発者の人材を抱えている」とフー氏は語り、人材養成のための多くの学校や、学位を伴わないコーディング研修の存在を引き合いに出した。

「ゲームスタートアップの未来は、マーケティングとデザインのチームはアメリカにいるが、エンジニアは中国にいるというものになるだろう」と、フー氏は予測している。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Ira Lichi / Shutterstock.com
|原文:GameFi Faces Regulatory Headwinds in Major Asian Markets