Web3には指数関数的に進歩したハードウェアが必要だ【コラム】

ハードウェアは常に進化を続けている。

ビットコイン(BTC)マイニングは初期の頃、シングルボードコンピューターのラズベリーパイしか必要としなかった。イーサリアム(ETH)は、消費者向けの一般的なノートパソコンのGPUでマイニングが可能だった。

今では、最新のブロックチェーンのバリデーターは、高速サーバー、ギガビットのインターネット接続、カスタムメイドの高性能ハードウェアを確保する必要がある。ハードウェア業界の成長とその需要は、今までになく大きくなっているのだ。

ブロックチェーンが進化を続け、新しいイノベーションが生み出されるに伴って、最適化されたコンピューティングに対する需要、そしてさらに、カスタムメイドのハードウェアの必要性も高まっている。

ウェブ2が最新のデータセンターを形作ったように、新しいウェブ3のプリミティブ(基本的な構成要素)にも、ソフトウェアのニーズに合わせてカスタムメイドされたハードウェアの新しい構造が必要とされている。

ウェブ2と3のコンピューティングニーズの類似

ウェブ1はもっぱら、シンプルなHTTPコンテンツの読み書きだけに限られていた。かなりシンプルなハードウェアによる、かなりシンプルで限られたニーズだけが存在していたのだ。

コンピューターは巨大で遅く、インターネットはブロードバンド(あるいはダイアルアップ)のスピード、サーバーは大きくてホストするのにも今よりコストがかかっていた。

そこに、ウェブ2が登場。ソーシャルメディアとストリーミングの時代だ。テクノロジーが成長するにつれて、消費者からの要求も高まった。ワークロードの新たなシフトが、ウェブ2データセンターの構造に影響を与えた。

フェイスブックは、膨大なリアルタイムの動画ストリームを処理する必要があり、それがフェイスブックのデータセンターのアーキテクチャを特徴づけた。アップルは、ユーザーがウェブ2を中心とした体験を最大限に楽しめるよう、M1チップを開発。アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の事業はすべて、囲われたネットワーク向けの閉鎖されたサーバーというウェブ2のニーズに応えるために作られている。

ビットコインの生みの親サトシ・ナカモトは、一般的なCPUでビットコインマイニングを開始したが、最も効率的なハッシュ化ハードウェアは徐々に、GPUということになった。

それから数年経ち、ビットコインはビットコインマイニングだけのために特別に作られたカスタムメイドのコンピューターチップ、ASICの巨大ネットワーク上で、組織的なレベルでマイニングされるようになった。これが、ソーシャルメディアの時代に生まれた、初のウェブ3のワークロードの進歩だった。

マイニングは、ハードウェアの成長の、最もシンプルなバージョンで、第1章だ。より多くのネットワークがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスモデルを使うようになり、DeFi(分散型金融)の預かり資産(TVL)が拡大を続ける中、演算に対する需要は増え、より優れたハードウェアとインフラに対する需要を生み出している。

高性能コンピューティングに対する需要の増大

現在、ブロックチェーンアーキテクチャ上で実行される主要な演算はハッシュ化だ。ゆくゆくは、ブロックスペースに対する需要が、ハッシュ化に基づくネットワークの演算の限界を越えるだろう。

ブロックチェーンスケーリングの演算基盤における次なる進展として、ゼロ知識証明が台頭してきている。ZKSyncやPolygon Hermezなどのゼロ知識(ZK)ロールアップは、レイヤー1チェーンを超えたスケーラビリティを実現し始めている。

DeFi、ゲーム、自律分散型組織(DAO)ガバナンス、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)などの巨大な業界を同時に支えるために必要なオンチェーンアクティビティに対応するためには、ウェブ3アーキテクチャにおけるこのような前進が求められる。

ゼロ知識証明:暗号学において、個人が他の人に、自分の持っている命題が真であることを伝える時、真であること以外の知識を伝えることなく証明できる手法のこと。

例えば、特定のウェブサービスにログインする際、ユーザーはパスワードを入力する代わりに、パスワードを知っている事実の証明を送る。また、本人確認を行う際、ユーザーは第三者に母親の旧姓などを伝達する代わりに、自分が本人である事実の証拠を送る。

問題は、伝統的なハードウェアは、ゼロ知識証明向けには作られていないという点だ。現在の汎用プロセッサは、非効率的にこなすことはできたとしても、このような演算向けには作られていない。

ひとたび演算が理解され、確固としたものになった後に、ビットコインマイニング向けにASICが登場してきたのと同じように、時が経てば、この目的のための専用ハードウェアが登場してくるはずだ。

同様に、MEV(マイナー抽出可能価値)は究極的には、最適化の問題となるだろう。イーサリアムの生みの親ヴィタリック・ブテリン氏が投稿した「Endgame」という記事では、とりわけ、ブロック提案者と開発者が別物になるにつれての、この先の方向性のいくつが検討されている。

そうなれば、ブロックごとのMEVが最適化され、よく構成されたブロック向けの別個の手数料市場が生み出されるはずだ。これも、ハードウェアによって最適化されたソリューションにつながり、できる限り最適化を追求することになるだろう。

ウェブ3のテーマ

ウェブ3が最終的にどのようなものになるかにつれて、皆が少しずつ異なった予想をしている。具体的なビジョンがどんなものであれ、分散化、オープンソース、非許可型インターネットアクセスという、ウェブ3のテーマを信じているならば、ハードウェアのワークロードもゆくゆくは、最適化されると信じているはずだ。

現時点では、確実に最適化されていないが、需要が拡大を続け、テクノロジーが成熟を続けるに伴って、次世代のインターネットの基盤となるハードウェアも、成長していくだろう。

サム・カサット(Sam Cassatt)氏は、投資会社Aligned Capitalの創業者兼CEO。イーサリアムブロックチェーンのインフラの開発を手がけるコンセンシス(ConsenSys)の最高戦略責任者を務めた経験も持つ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Exponential Software Requires Exponential Hardware