ユーラシア最大と謳われたイベントの内幕【現地レポート】

ユーラシア最大と謳われたイベントの内幕【現地レポート】

イスタンブール空港では、エレベーターを降りると、荷物のターンテーブルがあるエリアや、出口のところには、暗号資産(仮想通貨)界の有名人が登場する大きな広告が、あちこちに貼られていた。

広告に使われた有名人の1人に、彼が登場する広告の写真を送ると、「わぁ!こんなところに使われるなんて知らなかったよ」と返信して来た。

イスタンブール空港に掲載されたブロックチェーン・エコノミー・イスタンブールの広告
出典:Amitoj Singh/CoinDesk

「こんなところ」というのは、7月27日から28日にかけて開催された「ブロックチェーン・エコノミー・イスタンブール(Blockchain Economy Istanbul)」というイベント。ユーラシア大陸最大のブロックチェーンカンファレンスとうたわれていた。

主催者によれば、戦禍のウクライナで暗号資産ムーブメントの顔になっているアレックス・ボルニャコフ(Alex Bornyakov)デジタル変革省副大臣を含めた50人の登壇者と、3000人の参加者が集まった。

目立つ不在

しかし、参加していない人たちの存在も目立った。暗号資産取引所のバイナンス、FTX、コインベースなどの大手企業による展示がなかった。バイナンスの創業者チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏は、カンファレンスと同じ日に、トルコの財務大臣とのバーチャル会談という形で登場していた。

参加者によれば、「世界トップクラスの暗号資産企業とブロックチェーン起業家の出会いの場」とうたわれたカンファレンスでは、4カ所の雑談エリア、6件の討論会、20のスピーチの場に、空席も目立った。暗号資産の弱気相場を考慮すれば、不参加も予想通りだったのだろう。

「宣伝されているのとは違っていた」と、暗号資産関連の税務業務をサポートするコインリー(Koinly)のトニー・ダンジャル(Tony Dhanjal)氏は述べる。「3000人には見えなかった。1000人にも満たなかったのではないか。参加者が少なかったのは、弱気相場の反映だろう」と続けた。

デジタル資産ブローカーBitazza.comの最高コミュニケーション責任者ディディ・ウィブーンマ(Didi Wiboonma)氏は、参加者の多様性を称賛したが、「タイから来たので、もう少し高度な内容を期待していた」とも語った。

「カンファレンスは思っていたほど混雑しておらず、心地良くて交流しやすい場だった」と、機械エンジニアの職を辞め、旅をしやすいように車を売ってワシントンDCのアパートも引き払った25歳のキミア・ホッセインプア(Kimia Hosseinpour)氏は語った。「歩き回るよりも、いくつかの討論会を聞く方が興味深かった」と、彼女は振り返った。

「メインホールには空席も見られたが、それは展示エリアに人々が集まっていたからだ」と主催者は語り、ランチ後の参加者数が大幅に減少したことを示すイベント後の報告書の数字も引き合いに出しながら、次のように続けた。

「参加者はスピーチを聞くか、展示を見て回ったり、人脈作りをするか自分で決めることができる。喫煙エリアも常に混雑していた。ワークショップも開催されていた」

マイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOもバーチャルで登場した
出典:Blockchain Economy Istanbul

講演者の中には、長年ビットコインを支持してきたマイクロストラテジーのマイケル・セイラーCEOの姿もあり、大きな人気を集めていた。しかし、ある参加者は、バーチャルでの登壇だと知っていたら、わざわざカンファレンス会場まで足を運ぶことはなかったと残念そうに語った。

「ビデオでの参加であることを示すために、セイラー氏の名前の横には電話のアイコンを掲載してあった」と、主催者側は説明した。

地元の盛り上がり

このイベントからは、もっと大切な現状も見えてきた。トルコでは、暗号資産が盛り上がっているのだ。ユーラシアには、あまり多くの有名な暗号資産ハブは存在しない。

そんな中、何世紀もこの地域の金融の中心地となってきたイスタンブールが、ハブの1つとして台頭してきており、今回のイベントでは大物が不在だったにも関わらず、大いに盛り上がっていた。

会場となったホテルの喫煙エリアでは、地元の人たちの盛り上がりが見られた。トルコの暗号資産支持者たちの多くが、タバコを片手に、プロトコルについての意見を交換したり、ジャーナリストに話をしたり、パートナーシップを協議したりしていたのだ。

イベントでのいくつかの発表は、展示ホールでも確認できた事実を反映していた。暗号資産の弱気相場をものともしない熱気だ。

暗号資産取引所のAAXは、トルコへの進出を発表。元バイナンススタッフで暗号資産を専門とする弁護士を、トルコでの責任者に任命した。AAXがトルコでの事業に自信を持っている根拠は、トルコの人口の16%に当たる約1360万人が、ビットコイン(BTC)を保有しているというレポートだ。

トルコ版『ゲーム・オブ・スローンズ』とも呼ばれる国際的評価の高いテレビシリーズ『Resurrection: Ertuğrul』のスターEngin Altan Düzyatan氏が、同番組をもとにしたメタバースゲーム『Medieval Empires: Ertugrul』を共同で立ち上げたと発表する場には、多くの報道陣が集まっていた。

トルコのスター俳優Engin Altan Düzyatan(前方右から2人目)も登場
出典:Blockchain Economy Istanbul

会場には、子供のような好奇心が満ち溢れていたが、それを特に体現していたのは、トルコの首都アンカラの大学のブロックチェーンコミュニティに所属する学生たちだ。

彼らは、レイヤー1ハイブリッドブロックチェーンQANとパートナーシップを締結。QANがゲスト講義や人材管理プログラムを提供することになった。

会場には、特に目を引く参加者もいた。15歳の暗号資産トレーダー、エフェ・ケレメシ(Efe Kelemci)君だ。彼は10代の若者たちに経済的自立を教えるという大きな目標のためにイスタンブールまでやって来た。

誕生日プレゼントで貯めた1000ドルを使って、13歳の時から暗号資産を通じてその目標達成のために取り組んできたのだ。今回のイベントではさらに踏み込んで、自ら立ち上げる予定のDeFiベンチャー企業のためのパートナーシップの締結を目指していた。

彼は暗号資産界の大物がやって来なかったことを、ケレメシ君は気に留めてはいなかった。地元の盛り上がり、ガリ・ネットワーク(Gari Network)やアップホールド(Uphold)、クーコイン(KuCoin)など、超大手ではないかもしれないがそこそこ名の知れた企業が参加していたことだけで、やる気に溢れた若者を満足させるには十分だったようだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像: 授賞式の様子(Blockchain Economy Istanbul)
|原文:Turkish Delight or Slight: Decoding Eurasia’s Largest Blockchain Event

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