FTX騒動から学ぶ4つのこと【コラム】

FTX騒動から学ぶ4つのこと【コラム】

人によっては、FTXの破綻は元祖ビットコイン取引所マウントゴックスが2014年に破綻した時よりも衝撃的だったと感じているかもしれない。あるいは、2016年のThe DAOハッキング事件よりも重大と。その時には、ユーザーの資産を回復するために、イーサリアムが2つのチェーンにフォークを余儀なくされたのだ。

また、今年の春に破綻し、ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)やセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)も道連れにしたステーブルコイン発行業者テラ(Terra)の破綻よりも深刻と感じている人もいる。

FTX破綻の経済的影響は、前述の破綻の一部よりは小さいものであった。ではなぜ、存亡に関わるほど甚大に感じられるのだろうか?

もしかしたら、暗号資産がすでに厳しい弱気相場にあり、市場が活況の時よりもダメージが大きく感じられるからかもしれない。

あるいは、間違いなく破綻の鍵を握るFTX創業者のサム・バンクマン-フリード氏が、わずか1週間前までは、暗号資産界のホワイトナイトと思われていたからかもしれない。熟練した投資家や企業は、彼を業界で最も信頼できる人物の1人と考えていたのだ。

しかし、FTXの破綻がこれだけ重大に感じられる理由は、暗号資産業界が騙されたからではなく、騙されるだけの脆弱性を持っていたことを証明したからだと、私は考えている。

この区別は、些細なものに見えるかもしれないが、暗号資産が目指していたものの中核にある。それは、トラストレスなシステムを築くための基盤だ。FTXの破綻とその影響の伝播はまたしても、暗号資産の中核となるテクノロジーは別としても、暗号資産業界が伝統的金融システムと同じくらい信頼を基盤にし、腐敗しやすいものであることを証明しているのだ。

「暗号資産業界」と「暗号資産」は区別すべきだ

暗号資産と暗号資産業界をもっとしっかり区別する必要がある。

暗号資産はFTXによってダメになってしまうことはないだろう。イーサリアムやビットコインなどのプラットフォームを支える中核的なテクノロジーはいまでも、宣伝文句の通りに機能している。

FTXとその姉妹企業アラメダ・リサーチ(Alameda Research)は、ブロックチェーンや暗号資産を使っていたが、昔ながらの詐欺に身を滅ぼした旧態依然とした企業に過ぎなかった。

暗号資産業界の方は、FTX破綻によって激変するだろう。「分散型」で「トラストレス」なテクノロジーの神聖さについて好きなだけ語り合うことは結構だが、ここ数年で業界に注ぎ込まれた関心やマネーのあまりに多くが、FTXやブロックファイ(BlockFi)、セルシウスやボイジャーなど、規制を受けていない、トークン基盤の伝統金融の延長版のような会社に渡ってしまったのだ。

確かに、これらが本当に暗号資産企業ではないことを分かっている人たちもいたが、投資家、インフルエンサー、ユーザーらはその区別を気にせずにきた。これらの企業がベンチャーキャピタルに支えられた流動性を使って、トークン価格を吊り上げ、超高利回りを約束して個人投資家を惹きつけるのを許してきたのだ。

これらの企業が死に絶えていくのに伴って、バカげたほどの評価額や手軽に利益が入る仕組み、トークンを発行してお金を生み出す会計慣行など、今では暗号資産業界の象徴になってしまったような負の遺産も消えていくべきだ。

DeFiに対する期待が高まる

人々が中央集権型仲介業者抜きで取引できるようにするブロックチェーン基盤のツールである分散型金融(DeFi)は、FTXが行なっていたとされるような詐欺への対抗手段と謳われてきた。

クリプト・ドットコム(Crypto.com)などの中央集権型プラットフォームの支払い能力をめぐって懸念が広まり続ける中、アーベ(Aave)やユニスワップ(Uniswap)などの分散型プラットフォームは、ユーザーの資産を濫用することは、構造的に不可能だと主張している。

ユーザーに中央集権型組織ではなくコードを信頼するよう求める分散型プラットフォームは全体的に、FTX騒動の中でもレジリエンスを見せている。

元CoinDesk記者のアンドリュー・サーマン(Andrew Thurman)氏がツイートした通り、中央集権型プラットフォームでは、記録的なほどの資産の引き出しが起こっているのに対し、DeFiプラットフォームではここ1週間、アクティビティが大いに増加している。

「アンドリュー・サーマン:
DeFiプロトコルの大半は今週、ユーザー数、取引高ともに2桁の伸び。中央集権型取引所からは大量に資産が流出している。

FTX騒動にも関わらず、オンチェーンアクティビティで測れば、『暗号資産』は好調だ。

PRの視点から言えば、誰も微細な違いなんて今は気にしなかもしれないが、複雑なことではない」

DeFiは万能薬ではない

DeFiはツールに過ぎない。他のツールに比べて強みを内在しているのは確か(透明性など)だが、善にも悪にも使うことができる。

DeFiはFTXのせいで崩壊することはなかったが、既存のDeFiシステムは、より広範な寡頭的暗号資産エコシステムの影響から完全に自由ではないことも確かだ。

例えば、ここ数カ月の市場低迷ですでに苦しんでいたソラナ(Solana)のDeFiエコシステムは、FTX破綻で大打撃を受けた。

これは、バンクマン-フリード氏の暗号資産帝国がソラナのエコシステムに深く関与していたからだ。トークン保有数という点だけでなく、ソラナのエコシステムの中核にあるプロジェクトの開発において、FTXの開発者たちが果たした役割という点においてもである。例えば、ソラナの主要DeFiプラットフォームSerumは、FTXのエンジニアたちが開発、維持を行なっていた。

FTXはSerumの資産を簡単に盗むことはできなかったが、Serumのガバナンス権はバンクマン-フリード氏お抱えの開発者たちによってコントロールされており、Serumを管理するはずだった「Serum DAO」は、変更を行うという点において、権限を持たないに等しかった。

さらに、時価総額の低い一部のトークンをFTXとアラメダが大量に保有していたために、理論的には市場を操作することができていたのだ。

FTXからソラナへの影響の伝播は、DeFiの腐敗しやすさの唯一の例ではない。表面上は分散型を謳っていたテラも、個人投資家を誘い込むためにベンチャーマネーを使い、損失額600億ドルの破綻を引き起こしたとされている。

ユニスワップなど、分散化されているプラットフォームでさえも今週、監視の目にさらされている。ベンチャー企業アンドリーセン・ホロウィッツ(Andressen Horowitz)と中央集権型取引所バイナンス(Binance)が、ユニスワップのガバナンスシステム内で大きなガバナンス権力を掌握したのだ。

テクノロジーやメディアに関するニュースレター「Stratechery」を手がけるベン・トンプソン(Ben Thompson)氏は、DeFiに対する懐疑的な視点を次のようにまとめていた。

「FTXの一件は厳密には、暗号資産の実用性に関するものではない。かなり明快に、詐欺なのだ。さらに、真のDeFiに相対する(中略)中央集権化の問題でもあった。しかし、そのように言ってしまうことは、『共産主義は適切に実行されていないだけだ』という主張と同じ匂いがする」

「私はすでに、ある程度の規模においては中央集権化が避けられないと主張しており、実用性という点では、それ自体が問題のすべてなのだ。基盤となる資産という点で空白を抱えた金融エコシステムは、法的には違法ではないかもしれないが、本質的価値という点では、間違いなく詐欺的に見える」

英雄崇拝に終止符を打つべきだ

先週劇的に失墜するまで、バンクマン-フリード氏は暗号資産界の寵児のような存在だった。暗号資産界のJ・P・モルガンとまで呼ばれたバンクマン-フリード氏は最近、規制賛成の姿勢に対して、ツイッター界で批判を受け始めていたが、全体的に言えば、人々は彼の言葉に耳を傾けてきた。

アラメダとFTXの関係に関する長年の疑問にも関わらず、熟練投資家たちはバンクマン-フリード氏を信頼し、何十億ドルをも預け入れ、個人投資家たち向けにFTXを宣伝してきた。

メインストリームのニュースメディアや暗号資産メディア、暗号資産関連のツイッターでバンクマン-フリード氏がもてはやされていたことは、FTXの破綻がこれほどまでの痛みを伴うものになっている大きな理由であることは間違いない。しかし、バンクマン-フリード氏が市民の敵ナンバーワンになった今、ツイッターには独善的な批評家たちが溢れている。

ここ1週間でとりわけ声高にバンクマン-フリード氏を批判しているのは、テラの生みの親ドー・クォン(Do Kwon)氏、スリー・アローズ・キャピタルの創業者スー・チュー(Su Zhu)氏とカイル・デイビス(Kyle Davies)氏といった、業界の悪役たちだ。

数カ月にわたって声をひそめていた3人は、バンクマン-フリード氏への悪い意味での注目に乗っかって、返り咲きを試みている。みんなと一緒にFTX創業者を批判することが、自らの汚名挽回に役立つと期待しているようだ。

彼らの思惑が成功するとは思えない。しかし、彼らが再登場したことや、バイナンスのCEOチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏、トロン(Tron)の創業者ジャスティン・サン(Justin Sun)氏を支持するゴマすり的なツイートが相次いでいることは、英雄崇拝が暗号資産の「トラストレス」な世界で果たしてきた有害な役割を思い知らせてくれるものとして扱われるべきだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Sergei Elagin / Shutterstock.com
|原文:4 Key Takeaways from the FTX Fiasco

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