ビットコインドミナンスの奇妙な動きが伝えること──変遷を詳細に振り返る【オピニオン】

ビットコインドミナンスの奇妙な動きが伝えること──変遷を詳細に振り返る【オピニオン】

落胆と失望(衝撃と恥と言うべきか?)の嵐が吹き荒れる今、ビットコインエコシステム参加者の多くは、ビットコイン(BTC)の暴落だけを心配していればよかった、単純な時代を懐かしんでいるに違いない。

ビットコインの下落は2011年、93%に達し、時価総額は1億7200万ドル減少した。2014年から2015年にかけての「暗号資産の冬」では、ビットコインの時価総額は80%以上減少し、113億ドルが吹き飛んだ。ああ、懐かしいあの頃。

もちろん、本気で言っているわけではない。当時の業界関係者にとっては間違いなく大きな痛みを伴うものだった。

マウントゴックスの破綻は一時、ビットコインの存続の危機のように感じられた。しかし影響を受けたのは、比較的少数の人に限られた。メインストリームのメディアでは、ほとんど報じられることはなかった。これはありがたいことだった。痛みを受けた人たちは、メインストリームの注目にさらされずに再建に取り組むことができた。

市場ではなく、業界の崩壊

現在の市場は、これ以上ないほど対照的だ。FTX破綻をあらゆる角度から捉えたニュースが世界中に溢れている。ニューヨーク・タイムズ主催「DealBook Summit」でのサム・バンクマン-フリード氏のインタビューはおそらく、数百万人とはいかなくとも、数十万人が見ただろう。

余波の規模はいまだにはっきりせず、伝統的金融に影響が及ぶかもしれないとのシリアスな議論もあり、懐疑派たちは再建に関わった方が良いのではないかと感じている。数千もの資産がダメージを受け、時価総額で言うと約1600億ドルが失われた。

2011〜2015年を振り返ると、ビットコインが市場のすべてだった。今はまったく異なっている。これは素直に喜べることだ。技術的なスピンオフやユースケースの進化の多様さは、初期から携わっている最も楽観的な人すらも驚かせただろう。関心と普及の急速な広がりが市場全体の価値を高めた。そして分散化によって、全体的な市場リスクも軽減した。

今回の破綻を考えると、最後の主張は場違いに聞こえるかもしれない。しかし、市場が崩壊したのではなく、業界の崩壊だ。市場はまだ機能している。

暗号資産は(いくつかの例外を除いて)まだ機能している。ビットコインは安全なブロックを生み出し、イーサリアムはステーキング報酬を支払い、DeFi(分散型金融)トークンはプラットフォームへの参加に対してインセンティブを提供し、価値はチェーン上を移動している。市場のインフラは変化したが、市場自体はそれほど変化していない。

ドミナンスの変遷

市場センチメントの重要な指標となる、ビットコインのドミナンス(市場占有率)からも、それは明らか。

当初は99%

イーサリアムが2015年に台頭するまで、ビットコインのドミナンスは約99%。イーサリアム(ETH)の初期の成功が、爆発的にイノベーションを加速させ、新しいトークンが驚異的なペースで次々に登場。2017年のICO(新規コイン公開)ブームが、ドミナンスを37%まで押し下げた。この低下は、約3カ月で暗号資産全体の時価総額が470%増加した時期と重なっていた。

BTCドミナンス(橙)とBTC価格(青)の推移(出典:TradingView)

こうした状況から、ビットコインドミナンスの大きな特徴が生まれた。市場センチメントを測るツールとしての役割だ。2017年後半など、投機熱が高まった時にはビットコインドミナンスが低下した。

ビットコインは、ステーブルコイン以外の暗号資産では最もボラティリティが低く、トレーダーや短期投資家が自信を持っている時には、より小規模なトークンのハイリスク/ハイリターンが好まれる傾向にある。

2018年の暴落後

2018年の暴落と、その後続いた弱気相場によって、そのトレンドは逆転。投機的資産は比較的安定したビットコインに比べて大きく下落し、ビットコインドミナンスは上昇。2019年8月には70%を超えた。

その後、市場は再び自信を取り戻し、新しいレイヤー1ブロックチェーンが関心を集め、ビットコインドミナンスは1年後には58%になった。

そこから、珍しい現象が起きた。ビットコインが素晴らしいパフォーマンスを見せた投機相場が展開した。2020年8月、マイクロストラテジーが大量のビットコイン購入を発表。その後、複数の企業、ヘッジファンド、ビリオネアなどがビットコイン保有を明らかにした。機関投資家の参入だ。

BTCドミナンス(橙)とBTC価格(青)の推移(出典:TradingView)

2021年前半には、新しいファンドやトークン、サービスが続々と登場し、機関投資家や有名人が他のトークンへと関心を移し始めるなか、ビットコインは一時、高値から下落した。

11月10日、ビットコインが史上最高値の約6万9000ドルを記録したにもかかわらず、時価総額の低いトークンへの注目がその勢いを上回り、ビットコインドミナンスは低下。下図では、通常は高いビットコインと他のトークンの60日相関関係がこの時期に大幅に低下したことがわかる。

ビットコインとその他のトークンの相関係数(出典:Coin Metrics)

奇妙な時期

そして、我々は奇妙な時期に突入している。

今年5〜6月にかけての市場のドラマと、比較的「安全」な暗号資産へのシフトのなか、ビットコインドミナンスは上昇。だが50%を依然として下回っている。その後、市場が落ち着きを取り戻すとともにドミナンスは低下。しかしその後、多くの恐怖の原因があったにもかかわらず、ほとんど変化していない。

BTCドミナンス(橙)とBTC価格(青)の推移(出典:TradingView)

FTX破綻の影響が暗号資産業界全体に波及していった11月、ビットコインの時価総額は15%減少。しかしドミナンスは40.0〜40.9%の間を推移した。市場センチメントが変わっていないはずはない。

市場から退出?

ビットコインドミナンスは市場センチメントの指標としての役割を失ってしまったのか? そうなると、ビットコインは「安全」な暗号資産としての役割を失ったことになる。それとも、何か別の事態が起きているのだろうか?

相対的な安全を求める代わりに、投資家がおおむね市場を出ていったために、ビットコインが他の暗号資産を上回るパフォーマンスを見せなかった可能性がある。

ビットコインのスポット(現物)取引高は、11月にパニックが高まるにつれて、大きく低下した。しかしそれでも、今年の初めよりは高い水準を保っている。一方、イーサリアムの取引高は大幅に低下している。大規模ではないが、市場から退出している気配がする。

BTCとETHの取引高
出典:CryptoCompare

多くの(普通の)投資家が市場から退出したことで、暗号資産市場の投機的性質が強まっているかもしれない。

ここ1年、不誠実な人たちによってポートフォリオや評判にダメージが及んだうえに、さらに投機と聞いたら、直感的に尻込みしてしまうような状況のなか、さらに心配になるだろう。

しかも、規制当局が市場リスクの高まりを抑えようと準備していることを想像するだけでも、たじろいでしまう。このような感情は当然、一方でリスクの高いバブルが弾け、暗号資産の潜在能力の建設的な側面にフォーカスできると、開発者やクリエーターが感じている安心感もまた当然だ。

しかし、バブルは消えていない。これは、横ばいになっているビットコインドミナンスだけでなく、小規模なトークンのパフォーマンスにも表れている。

暗号資産の歴史の中でも最悪の月となった11月、ライトコイン(LTC)は25%以上、オーケービー(OKB)は36%以上、バイナンスエコシステムのウォレットトークンTWTは110%以上、DEXトークンのGMXは33%以上上昇した。

ここ1週間では、ドージコイン(DOGE)、アーベ(AAVE)、ユニスワップ(UNI)などの中規模トークンが、10%以上上昇した。

FTX破綻は、投機を消し去ったわけではない。マクロの不透明感や、暗号資産と伝統的市場からの広範な流動性の撤退も同じことだ。投機を消し去るものはあるのだろうか? 何もない。投機は続くだろう。

投機の意義

投機は消えて欲しいと願う人もいるが、投機は自由市場の特徴だ。洗練された市場の特徴でもある。暗号資産には、そのどちらでもあって欲しい。

投機家はプロジェクトの成長に貢献することではなく、資産を買って、高い値段で売ること(あるいは資産を売って、安値で買うこと)ばかり考えているかもしれない。

しかし、それは市場の大切な特徴。適正と考える価格で売買する自由だ。異なる意見を表明することができなければ、市場は予測可能なものとなり、まったく面白味に欠けてしまう。

さらに、その有益性も低下する。投機家はボラティリティを高めるかもしれないが、資本の大きさによって重要性が大きくなる意見を反映すること、裁定取引のギャップを縮めること、市場退出のための流動性を提供することで価格発見の働きを強化する。

投機は無害ではない。レバレッジを伴う場合は市場を不安定化させることもある。しかし大半の場合、問題はトレーディング行為ではなく、トレーディングを仲介するプラットフォームにある。

希望の光

多くの批判的な人たちは、攻撃的なトレーディングと市場操作をひとまとめにして、投機の悪い影響の証拠として価格の歪みをあげる。FTX破綻の影響が広がるなか、業界関係者でさえも、信頼の裏切りではなく、投機が問題だったと考えている。

金融における自由と完全性を促す可能性に惹かれて暗号資産業界に携わる人の多くにとっては、リターンを求める必死の動きは、不愉快なほどに表面的なものに見える。

投機叩きは、暗号資産の中核的な価値観の多くと一致するかもしれないし、感情を浄化してくれる有用性があるかもしれないが、投機叩きそのものに意味はない。

ここ最近の混乱の中で見られたビットコインドミナンスの奇妙な動きは、市場の構成が変化したことを伝えている。ビットコインは依然として、他に大きく差をつけている重要な資産だが、そのボラティリティは弱まっている。これは資産クラスが成熟している証し。業界の最も厳しい時期にこのことが明らかになった事実は、希望の光と言っていいだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:TradingView
|原文:BTC Dominance Is Behaving Weirdly, and That’s Sort of Good

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