FTX破綻で明確に、保険義務化の必要性【オピニオン】

FTX破綻で明確に、保険義務化の必要性【オピニオン】

第2のFTXを防ぐためには、新しい、どのような規制が必要かについて、お決まりの議論が繰り広げられている。何かが必要なことは明らかだが、これまでの経験から考えると、今の規制当局は再発を防ぐために十分な力を備えていない。

例えば、米証券取引委員会(SEC)がWeb3を十分に規制するために必要な知識と能力を備えていたとしても、その影響力はアメリカ国内にとどまる。バハマに本拠地を置くFTXの事例では、その影響力は240kmほど足りなかった。

保険の義務化で業界をより安全に

世界初の暗号資産・ブロックチェーンインフラ保険会社の共同創業者として私たちは、暗号資産取引所の破産やそれに関連する壊滅的な出来事によるダメージを防ぐための市場志向の手段として、規制当局による保険の義務化を提案したい。

自動車保険によって、自動車はより安全に、事故はより少なく、その程度も軽度なものになったように、保険のために厳格なアンダーライティングプロセス(保険の引受にあたり、対象となるリスクなどを精査し、引受の可否を判断することや、引受条件・保険金額・保険料率を決める一連のプロセス)を暗号資産取引所に義務付けることで、破産の可能性ははるかに少なくなり、万一、破産した場合の影響も緩和することができる。

連邦政府や規制当局が、重要なインフラを提供する企業に保険をかけるよう推奨、義務付けてきた前例は数多い。特に、法律の整備が追いつかないような、急速に進化するリスクをカバーできる。

テロの脅威を緩和するために、連邦政府と民間セクターとの連携のチャンスについて議論するなかで、当時の国土安全保障省のマイケル・チャートフ(Michael Chertoff)長官は次のように語った。

「ときには人々が一貫した形で動くことができるように、しっかりと調整された方法を民間セクターに見つけてもらうことも良いだろう。ときには、市場ベースのインセンティブをもっと積極的に使うこともできる。例えば、保険業界と連携したり、市場の力を活用するためにそれ以外の方法を試すこともできる」

サイバー保険と暗号資産保険には大きな違いがあるが、ネットワークセキュリティという共通の要素によって、サイバー保険は有益な参考例となる。

規制当局はインターネット企業に、サイバー保険の利用を推奨するための労をいとわなかった。その恩恵は、オバマ政権時に『Cyber-Insurance Metrics and Impact on Cyber-Security(サイバー保険の指標とサイバーセキュリティへの影響)』と題された報告書で詳細に報告されている。

「保険会社は、保証の前提条件として一定レベルのセキュリティを求め、より優れたセキュリティ施策を実践している企業は多くの場合、保険料が低くなる。このおかげで企業は、良質なセキュリティのメリットと、不十分なセキュリティのコストを実感でき、サイバーセキュリティへの投資の増大と改善につながる」と報告書は指摘している。

厳格なアンダーライティングのメリット

FTXほどの規模の企業向けに厳格なアンダーライティングが行われていれば、補償の条件として独立した活発な取締役会の存在が必要とされていたはずだ。

アンダーライティングにはさらに、関係者は身元と準備資産が十分であることを確認するために、主要な経営陣、口座、関連する暗号資産ウォレットアドレスの履歴の精査も行っただろう。そうであればFTXは、最高コンプライアンス責任者にもっと適任な人を選んでいたはずだ。

さらにアンダーライティングは、取引所のポリシーを検討し、顧客と会社の資産が完全に分離されており、顧客の資産が会社の債務返済やトレーディングに使われないようにするだろう。万一、破産した場合には顧客の資産が確実に返還されるようにもなるはずだ。

確かにFTXのサービス規約には、ユーザー資産を分離すると記載されていたが、実際にはそうはなっていなかったようだ。積極的に騙すことを意図していたなら、保険も規制も防ぐことはできない。

Web3に広がるリバタリアン的精神は、政府による規制強化の議論に強い反応を引き起こす。しかし、特にFTXほどの規模における回避可能な損失や破綻は、透明性・レジリエンス・検閲耐性の改善や取引における摩擦の緩和といった多くのメリットを備えたブロックチェーンテクノロジーの広範な普及という大きな目的にダメージを与える。

私たちは、規制当局による保険義務付けは、Web33コミュニティが現在と将来のユーザー、開発者、参加者、そして規制当局にも信頼を持ってもらうために必要であり、コミュニティとして受け入れることのできる機敏で反応の良い、正確な市場ベースのソリューションだと考えている。

ジャレド・グダンスキ(Jared Gdanski)氏レイモンド・ゼンキッチ(Raymond Zenkich)氏:暗号資産保険会社エヴァータス(Evertas)の共同創業者で、それぞれCEOと社長を務める。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像: Shutterstock
|原文:FTX’s Failure Highlights Need for Federally Mandated Insurance, Not More Regulation

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