「Web3のYコンビネータ」に仲間入りする方法

「Web3.0のYコンビネータ」とも呼ばれる組織の次回ラウンドに加わるための応募受付が、現在行われている。

テックスタートアップ・アクセレレーター「Yコンビネータ(Y Combinator)」のWeb3版とも言えるシード・クラブ(Seed Club)は、駆け出しの組織やコミュニティが足がかりを得るために、12週間にわたるメンターシッププログラムを運営している。

シード・クラブは、暗号資産(仮想通貨)トークンにまつわるプロジェクトのみに「投資」すること、それも実際には「投資」ではまったくない、というところが違いだ。

「スタートアップ分野で何が起こっているかを指標とする代わりに、自分たちなりのやり方で始めたい」と、シード・クラブの共同創設者ジェス・スロス(Jess Sloss)氏は、Yコンビネータとの類似性を重視しない様子で語った。しかし、「一から作り直して」いる訳でもないのだと、スロス氏は付け加えた。

シード・クラブは、ブートキャンプであると同時に、成功したり、駆け出しの創業者や企業から成る自律分散型組織(DAO)という形態での「ネットワーク」でもある。そのミッションは、急速に成長する暗号資産ネイティブのクリエーターエコノミーを育むことだ。

この説明が曖昧に聞こえるとしたら、暗号資産を中心として構築できる組織の数がほぼ無限で、その業界の種類もほぼ無限だからだ。プラットフォームのためのプラットフォーム、ネットワークのネットワーク、DAOから作られたDAOなのである。

スロス氏に取材し、Web3の開拓時代において正当性を獲得するための最速の方法の1つとなり始めているシード・クラブについて、そして理想的な候補となるのはどんな組織なのかについて話を聞いた。

シード・クラブでは、法律面でのトレーニング、資金調達や開発のアドバイスを含む、トークンプロジェクト構築のための12週間の短期集中コースを提供している。

チームはシード・クラブに応募し、選ばれれば、プロジェクトトークンの3%をDAOへと寄与する。ひとたびローンチされると、シード・クラブの資金から助成金としてトークンを受け取り、シード・クラブのDAOのメンバーシップ、部分的ガバナンスを獲得する。

「まだ世界がどのように使ったら良いか理解できないが、私たちが検討するのに値するものがあると考えるような、奇抜なものを開発する人たちを(サポートするための)より初期の取り組みにおいて、はるかに幅広くなることもできる」と、スロス氏は語った。

そういう意味ではシード・クラブは、人々がトークンをビジネスやコミュニティに応用するための方法や場所を見つけるに伴って、常に拡大を続ける知識の泉だ。

これまでに、ロシアのアートコレクティブ「Pussy Riot」のDAOや、元ブルームバーグ記者マット・レイシング(Matt Leising)氏の手がけるメディア「DeCential Media」を含め、65のプロジェクトをインキュベートしてきた。

「これらプロジェクトに資本を投資している訳ではないので、従来のように投資に対して100倍、1000倍のリターンを見つけるという話ではない」とスロス氏は語り、「自らを存続させるための実現可能なモデルを持つような、限界を押し広げるような興味深いプロジェクトを探している」と続けた。

このことは、現在の経済的不透明感の中、テック業界全体で資金提供、採用が凍結されている広範な低迷状況を考えれば、一段と重要だ。Yコンビネータは実際、ポートフォリオ企業に対して、創業者たちに「最悪の事態に向けて計画」するよう勧める「景気低迷」と題された手紙を送った。

成長するDAO

スロス氏は、誕生から2年経ったシード・バンクのDAOは、「テレグラムチャットに参加する11人」から始まり、最初の8件の応募を受けるために、必死に懇願しなければならなかったと語った。現在は、5回目のラウンドに向けて準備しており、応募受付は8月15日までだ。前回のラウンドには300件の応募があり、選ばれたのは20件だった。

「1000件の応募があり、要件を満たすと考えるプロジェクトが10しかなければ、10のプロジェクトだけで話を進めていく」とスロス氏は語り、5回目のラウンドにはこれまでのところ、250人が応募していると語った。

シード・クラブは時とともに、ミッションを洗練させ、拡大させてきた。当初はよりソーシャルトークンを対象にして、人々が自分のブランドから収益を上げるための方法として作られていたが、シード・クラブは現在では、より幅広いテクノロジー用途に開かれている。

「今では、より多くのツールがツールボックスに入っている」と、シード・クラブの共同創設者ジュン・イアン・ウォン(Joon Ian Wong)氏は語った。それには、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)も含まれる。

このようなフォーカスのシフトは、ソーシャルトークンにまつわる規制上のリスクや、主要ソーシャルトークン・ローンチパッド「ロール(Roll)」のハッキング後に盛り上がりが冷え込んでしまったことも一因かもしれない。

成功する候補者

今回のラウンドでは、出願プロセスで新しいことを試していると、スロス氏は語った。メンバーが提案を精査し、コメントすることで、出願者が「できるだけ良い印象を与える」のを助ける、新しい「意志決定ツール」を採用したのだ。

最終候補を絞り込んだら、評価基準を適用し、各チームをインタビュー。広範な精査を行う。

「数にはこだわっていない。本当に素晴らしい人たちと素晴らしいプロダクトに重点をおいて(中略)できるだけバイアスをなくすようにしたいんだ」と、スロス氏は語った。

求めるものに関してスロス氏は、成功するプロジェクトの核となるのは「それを支える人間」だと指摘。シード・クラブでは、プロダクト開発、あるいはコミュニティ先導において真の経験を持った人たちを探している。「従来から重視される創業者のマーケットフィットも、私たちにとっても極めて重要だ」と、スロス氏は付け加えた。

シード・クラブはさらに、既存のコードや開発ウィジェットをコピペするのではなく、まったく新しい方向に進むことをいとわない人、冒険心あふれる人も求めている。Web3が明確さに欠けることもあることを考えると、おそらく最も重要なのは、ビジョンを「伝える」創業者の力かもしれない。

Web3においては、人間とテクノロジーの間に衝突が起こる。暗号資産のあまりに多くの部分が、意志決定から人間を排除することや、プロセスを自動化することに向けられている。ビットコインは、米連邦準備委員会(FRB)経済を調整するのをやめさせたいと考えており、一方でスマートコントラクトは、機能を効率的かつ一貫して実行することを目指している。

シード・クラブは人間で構成され、人間のために作られてると、スロス氏は語り、「初期段階のプロジェクトに関して私たちが行なっている価値ある取り組みは、人間によってのみしかできないものだ」と、続けた。

開発の進捗をトラッキングしたり、報酬を与えるなど、「形式化」できる部分もあるが、「スマートコントラクトやソフトウェアにすぐに飛びついてしまうのは間違い」だと、スロス氏は考えている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:How to Get Into Seed Club, the ‘Y Combinator of Web3′