【イベントレポート】SMBCとHashPortが「ソウルバウンドトークン」で協業する理由とは?

【イベントレポート】SMBCとHashPortが「ソウルバウンドトークン」で協業する理由とは?

このところ世界的な注目が集まっている、他人に譲り渡せないNFT「ソウルバウンドトークン(SBT)」。そのSBTについてのイベント「譲渡不可能なNFT(SBT)がWeb3にもたらす新機軸 -SMBCとHashPortが切り開く未来」が2022年12月、都内で開催された。SBT事業での業務提携を発表したSMBCグループ常務執行役員の磯和啓雄氏、HashPort代表取締役の吉田世博氏らが登壇。SBTの本質的な価値や活用方法を語りあった。イベントはHashPortが主催し、coindesk JAPANがメディアパートナーをつとめた。

ソウルバウンドトークン(SBT)とは、そもそも何なのか?

HashPortのSBT担当マネージャー藪祐人氏

そもそもSBT(ソウルバウンドトークン)は、すっかりおなじみの存在になった「NFT」の一種。その最大の特徴は「他人に渡せない」という点だ。ウォレットに紐付く形で発行され、そこからは動かせない。

NFTの場合、「将来的に価格が上がって儲かるかも」という期待もあって買われるケースが多かった。だが、他人に譲り渡せないトークンに何の価値があるのか?

実は、トレーディング・アイテム的な意味合いで使われることの多いNFTと、SBTは利用方法が全く異なる。SBTに期待される役割のひとつには、たとえば、「授業の出席証明」がある。授業に出た人だけがもらえるSBTを所有していれば、「確かに○月○日に大学の授業に出た」と証明できるわけだ。仕組み的に「他人に譲り渡せない」ことがポイントとなるのだ。

「他人に渡せない」という特徴が活かせる分野はさまざまある。たとえばイベント・チケットの転売対策などにも活用できる。イベントではHashPortのSBT担当マネージャー藪祐人氏が、SBTの基本的な仕組みを解説した。

藪氏によると、SBTは大きく分けて2種類。(1)何らかのサービスを利用するための「パスポート」として使われるものと、(2)イベントの参加証明となる「バッジ」として使われるものに分類できる。

ブロックチェーンの特徴である「改ざん不可能」「追跡可能」「分散的」であるということ、そしてNFTが「所有の明確化」や「希少性の担保」をもたらし、さらに「譲渡不可能」という特徴が加わることで、このような使われ方が可能になってきたと、同氏は説明する。

従来こうした情報は、個々のサービスのDB上に格納されていた。そのため、他サービスで利用するためには、そのシステム同士がAPIなどで連携している必要があった。しかし、ウォレットとSBTという形であれば、サービスごとに密なシステム連携をする必要はない。

個人ユーザーは、たとえば「音楽ファン」として、ライブに参加するなどして獲得したSBTをファン・コミュニティで活用。一方、「社会人」としては職歴・経歴・スキルを証明できるSBTを勤務先や転職先に示すなど、場面場面に応じてSBTを使い分けて生活できる。藪氏は「人間はいろんな側面を持っている。ユーザー目線では、見せたい自分を見せたいコミュニティに対して表現することがSBTによって可能になっていく」と期待を込めていた。

どんな分野で使える?

SMBCグループデジタル戦略部上席推進役 下入佐広光氏

続いては、SMBCグループデジタル戦略部上席推進役の下入佐広光氏が「SBTを利用しやすい場面」について解説した。下入佐氏は、利用シーンを(1)本人確認の厳格度と、(2)トランザクション頻度とで分類。その結果、SBTとの相性がいいのは、ホテル宿泊、百貨店の会員登録、エンタメ・スポーツイベントのチケット購入、電子機器等の利用履歴証明など、「本人確認の厳格性がそこまで高くないが、データが参照される頻度はそれなりにあるもの」だと分析した。

イベント参加などで付与される「バッジ型」の利用シーンとしては、イベントに参加してもらえるSBTをコレクションしていき、(一定数集めるなど)特定の条件を満たすことで、限定コンサートに参加するチャンスが得られるような仕組みが考えらえるという。

複数企業による連携については、たとえば、(1)「リゾートホテルのユーザーSBT」を持っていれば特定店舗での買い物が割引される、(2)逆に「特定店舗のユーザーSBT」を持っている人はリゾートホテルに会員価格で泊まれるといった、仕組みが想定できる。下入佐氏は「これまでは『自分たちの顧客は囲いたい』という発想だったが、SBTを使えばお互いに優良顧客を送客しあう世界観も実現できる」と話していた。

SBTが利用される社会を、どう実現していく?

SMBCグループとしては、2023年3月にステップ1として、まずは自社の従業員向けにKYC領域の活用を目的としたSBTを発行。ステップ2として、他社とも共同しながらKYC領域や機能的購買での活用実験をしたうえで、ステップ3で、パートナー企業を幅広く募り「SBTエコシステム」の事業展開を狙うという。

目指す未来は、履歴書や卒業証明書などがSBTとして発行され、幅広い利用がされる社会。SMBCグループとしては、その実現のために「SBTの社会インフラ」を構築していく方針だ。

ただ、心配となるのは「プライバシー確保」。下入佐氏は会場からの質問に対し、「自分の情報を、この人には見せたいけど、この人には見せたくないというニーズを、どうやってシステム化できるかが、今回の取り組みのキモになるだろう」と説明。「いままでは、プラットフォーマー企業が情報をもっていて、情報をコントロールしているという世界観だった。これからは、個人がそこをコントロールできる世界観をいかにして作っていくか。その構築が一番やらなければいけないことだと思っている」と語った。

「情報を自分自身の手で管理していく時代に」

SMBCグループ常務執行役員 磯和啓雄氏

イベント後半はHashPort代表取締役の吉田世博氏とSMBCグループ常務執行役員の磯和啓雄氏が対談。協業の狙いなどを語った。

吉田氏は、いわゆるWeb3分野の現状について「具体的な活用例がどんどん出てくる段階になってきた」と指摘。大手カフェチェーンのスターバックスが、アメリカでNFTを活用したユーザー向け施策を開始したケースなどを紹介しつつ、「Web3を取り込む事例は日本でも今後、どんどん増えてくると期待している」と述べた。

SMBCグループ常務執行役員の磯和啓雄氏は、「自分の情報を自分で管理しようという発想は、すでに生活の中で顕在化したニーズになっている」と話す。しかし、個人にとってデジタル上の情報管理は、まだまだ理想的な状況とは言い難い。

磯和氏はスマートフォンで様々なアプリを利用する中で、「どこに何の情報を入力したかも覚えていないユーザーもたくさんいるはずだ」と指摘する。個人的な体験としても、複数の薬局で独自アプリをインストールさせられ、いま自分が飲んでいる薬を一覧したいときにアプリを次々と立ち上げて確認するはめになったことがあり、「これなら、紙のほうがよっぽど便利じゃないか」と思ったことがあるぐらいだと告白した。

こうした状況については、「ユーザー側も、今は我慢していても、これはおかしいというということに気づき始めているのではないか」と問題提起。個人がSBTを使って情報を自分自身の手で管理していくというニーズが今後、より顕在化してくるだろうと予測していた。

「インセンティブ」はどうする?

HashPort代表取締役 吉田世博氏

SBTのビジネス活用イメージの一例としては、吉田氏から、自社で手掛けたNFT「NISEKO Powder Token」の紹介があった。これは北海道のニセコスキー場の会員権NFTで、東急不動産が推進するニセコの発展プロジェクトの一環として行われた実証実験で使われたもの。このNFTを購入すれば、それぞれのNFTにランダムに割り振られた日、「スキー場が一般公開される前の早朝時間帯に、まだ誰も滑っていないコースを独占利用できる」という、特別な体験が可能になるという。

吉田氏は、「そこに価値があるとはわかっているものの、価値の定義がされておらず、購入もできなかったものを形にしようと考えた。さらにそこに紐づくコミュニティも作ろう、というプロジェクトだった」と背景を語る。従来、どうしても朝一番で滑りたい人たちは、寒い早朝に長時間並ぶ必要があった。そうしたニーズを「権利」としてトークン化すれば、ファンを惹きつけるインセンティブとして活用できるようになるわけだ。

HashPortとSMBCグループ、協業の狙いは?

それでは、このタイミングで、SMBCグループがHashPortと組んでSBT事業に乗り出す理由は何なのか?

吉田氏は、現時点でブロックチェーン技術が生み出している価値は、本来のポテンシャルの「ごく一部」にすぎないと指摘。真価を発揮できていない理由は「リアルな世界と、技術がうまく結び付けられていないからだ。まだまだデジタルな社会、それもブロックチェーンだけの社会で完結してしまっているところがある」からで、「ブロックチェーンは、もっと社会インフラと結びついていかなければいけない」と語った。

しかし、そうやってリアル世界の信頼を取り込んでいくためには、時間をかけて築き上げられてきた社会的な信頼性も不可欠となる。「そういう意味で、日本で一番信用されている金融機関の一つであるSMBCグループと協業の機会をいただけたのは、Web3界の発展や、分散化された社会の実現に向けて重要な一歩になるのではないか」と力を込めていた。

一方、磯和氏はブロックチェーン技術が一般社会に浸透する前段階である現在の状況について、インターネット黎明期と似ていると指摘する。「当時はインターネットを使っているというだけで胡散臭い目で見られることすらあったが、ちょっとずつ広がって、世の中に便利さがわかってきて、好回転が始まった」という。

現段階のブロックチェーンやNFTも、まだ「投機」のイメージを持っている人が多いとして、今は体力のあるプレイヤーたちが「えいやと漕がなければならない時期」(磯和氏)なのだと説明していた。今回の協業には、大手銀行という立場で率先して「旗を立てる」狙いがあるという。

もちろん、目指す社会を実現させ、ビジネスとしてもスケールしていくためには、幅広い社会的な協力が必要だ。吉田氏は「一社で囲い込みたいなら自社のデータベースで完結してしまうので、ブロックチェーンである必要すらない」「いろいろな企業が参加して、初めてSBTが価値を持つようになる」と強調。磯和氏も「われわれだけが儲かるプラットフォームを作りあげようとは考えていない。この旗のもとに、いろいろなステークホルダーが集まってくれれば」と幅広い協業を呼びかけていた。

|テキスト・編集:coindesk JAPAN
|写真:N.Avenue

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