仮想通貨調査企業エリプティック、SBI主導の投資ラウンドで24億円調達

ブロックチェーン分析企業エリプティック(Elliptic)は、SBIホールディングスが主導したシリーズB資金調達ラウンドで、2300万ドル(約24億3800万円)を調達した。

2019年9月4日(現地時間)の発表によると、今回調達された資金は、最近設立されたシンガポールオフィスや、今週開設される日本オフィスなど、エリプティックのアジアへの拡大を後押しする。

SBIインベストメントの海外投資担当執行役員、仁位朋之氏は、エリプティックの取締役会の一員となる予定。同氏によると、SBIインベストメントは資金調達ラウンドで1000万ドル(約10億6000万円)出資した。

投資ラウンドには、シグナルファイア(SignalFire)、オクトパス・ベンチャーズ(Octopus Ventures)、そしてサンタンデール・イノベンチャーズ(Santander Innoventures)を含む既存の投資家や、アルビオンVC(AlbionVC)などが参加した。(アルビオンVCのエド・ラッセルズ(Ed Lascelles)氏も、エリプティックの取締役会に加わる予定)

エリプティックの創業者兼CEOのジェームズ・スミス(James Smith)氏は、東京やシンガポールは活発な仮想通貨コミュニティーを抱えているだけでだけではなく、規制当局が技術的に発展しているため、魅力的だと述べた。そして、CoinDeskに次のように語った。

「シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)や日本の金融庁は、仮想通貨のことを熟知しています。日本には仮想通貨取引所向けの独自のライセンス体制も整っています。それらはすべて、仮想通貨の成長にとって本当に重要だと思います。一旦基本原則が定まったら、企業は身を入れて、革新を起こすことができますから」

アジアとその先

エリプティックは、人工知能と機械学習を活用して、ブロックチェーン上の不審なトランザクションを追跡し、発見する。スミス氏によると、エリプティックのサービスは、SBIの仮想通貨取引所VCトレードやカストディ事業など、SBIの仮想通貨事業全体、そしてSBIが投資するブロックチェーン企業や銀行、金融パートナー企業で利用される見込み。

「SBIと協力し、日本市場、そしてアジア市場を捉えるために懸命に取り組んでくつもりです」と、スミス氏は付け加えた。

2013年に創業されたエリプティックはこれまでに、5つのシードラウンドとシリーズAラウンドで合計1200万ドル(約12億7200万円)を調達している。シグナルファイアが主導した2017年12月のラウンドでは、500万ドル(約5億3000万円)の調達に成功している。

エリプティックの資金は、アジア以外だと、ソーシャルメディア大手フェイスブック(Facebook)の仮想通貨「リブラ(Libra)」や中央銀行デジタル通貨(CBDC)向けの監視サービスの開発に利用される計画。

スミス氏は、リブラに関して「デジタル通貨のより広範な普及に向けた大きな躍進になり得ると思います。弊社のプラットフォームもリブラに対応させるつもりです」と語った。

XRP要素

SBIホールディングスは、ブロックチェーン決済企業リップル(Ripple)のネイティブ仮想通貨であるリップル(XRP)にとって、最大の外部投資家でもある。

仁位氏によると、SBIはXRPの「熱心なファン」がかなりいる日本でXRPエコシステムを構築するという、野心的な計画を持っている。エリプティックがXRPの調査において最高峰であることも、エリプティックがSBIにとって魅力的な理由の1つ。仁位氏はCoinDeskに対して、次の通り語った。

「エリプティックの良いところは、他のアンチマネーロンダリング(AML)プラットフォームと異なり、XRPを追跡できることです。他の企業も検討しましたが、実際のところ、エリプティックの製品がAMLにおいて最高だと思います」

スミス氏はエリプティックはコインの種類に捉われずに監視するとしつつ、同社がアジアへと関心を向け始めてから、多くの顧客からXRPについて質問を受けるようになったと語った。スミス氏によると、リップルの台帳は膨大なデータをオンチェーンで保有している。マーケットメイカーの組み込まれ方や、それによって売買に関する情報が大量に生まれることが理由だ。

「リップルのブロックチェーンには膨大な量のデータがあります。データ量ではおそらく最大のブロックチェーンでしょう。大量のデータが保管されています。また、一部の仮想通貨とは少し異なった使われ方もしています。SBIのように、事業オペレーションの一部として利用している、金融機関がより多く存在しているのです」と、スミス氏は述べた。

仁位氏は、SBIの目標はXRPが2020年東京五輪にてグローバルな仮想通貨として披露されるのを見ることだと述べ、次のように続けた。

「東京オリンピックの開催時期には、多くの人が日本を訪れ、各地で買い物や旅行をするでしょう。その際に、エリプティックのようなプラットフォームに守られた安全な方法でXRPを利用することができるようになります」

翻訳:山口晶子
編集:町田優太
写真:Elliptic founder and CEO James Smith at Consensus 2018, image via CoinDesk archives
原文:Crypto Sleuthing Firm Elliptic Raises $23 Million in Fundraise Led by SBI