ブロックチェーン基盤の「分散型金融」6つの特徴──金融庁 高梨氏が解説

フェイスブックのデジタル通貨「リブラ」が注目されるなど、ブロックチェーンを基盤とした「分散型金融」(DeFi)への注目が高まり、議論が深まりつつある。金融庁は、「分散型金融が広まれば現在の金融規制の有効性が薄まる」との認識を示し、新たなガバナンス体制の構築を主導しようとしている。

そもそも、分散型金融にはどのような特徴があるのだろうか。9月3–6日に開催された日経FIN/SUMにパネリストとして登壇した金融庁の高梨佑太氏(総合政策局総務課国際室課長補佐)による解説から、「分散型金融」の6つの特徴を確認しよう。

finsum
高梨氏(写真右)が登壇したセッションの様子

規制当局にとっての3つの主な目標

高梨氏は冒頭、金融規制当局にとっての主な目標として、「金融安定性を管理すること」「投資家と消費者を保護すること」「金融犯罪を防止すること」の3点を挙げた。

その上で、「規制は必要ないという考えもあるが、これらの目標は達成される必要がある」と述べ、金融システムにどの技術が使われるかに関係なく、公益達成の必要性を指摘した。

高梨氏が示した金融規制当局にとっての主な目標

さらに高梨氏は、「ブロックチェーンを基盤とした金融システムは規制の効力を及ぼすことを非常に難しくさせる。既存の金融システムに比較して、非常に異なった技術的特性を備えているからだ」と述べ、ブロックチェーンを基盤とした金融システムの特徴を、次に挙げる6つに分類して解説した。

ブロックチェーン基盤の金融システム、6つの特徴

高梨氏はブロックチェーンを基盤とした金融システムの特徴として、「分散型」「自律性」「匿名化」「不変性」「グローバル」「オープン」という6つの性質を挙げた。

ブロックチェーンを基盤とした金融システムでは、金融取引に従来の金融機関を通さず、個人などが直接取引できるようになる(分散型)。つまり金融システムから仲介機関が要らなくなる可能性がある。高梨氏も、当局がこれまで規制していた対象がなくなりうることを示唆した。

また分散型金融システムは第三者の関与なしに自律的に動き続ける(自律性)ため、問題があっても当局などが止めることができない。一度データが記録されたら、単一主体による変更はできない(不変性)。このことは、一度行った取引が恣意的に覆されないようにするために必要だが、事後に修正できなくもなる。

さらには国境・法域をまたぐため裁判や規制をすることが難しく(グローバル)、責任主体があいまいになる(オープン)といった特徴もある。

高梨氏は、匿名化技術が進展していることも指摘。分散型金融は仮名性と匿名性を備えうるため、追跡可能性は弱まっていく(匿名化)。匿名性が担保するプライバシーは、分散型金融で経済活動をするには重要だが、一方で金融犯罪を防止する上では問題になる。匿名性はプライバシーだけではなく、通貨の代替可能性や検閲耐性を向上させる。

高梨氏はこのようにブロックチェーン基盤の分散型金融の技術的な特徴を紹介した上で、「公益を達成するためにはどのような規制がありうるか」という問いを投げかけた。

高梨氏が登壇したセッションのテーマは「ブロックチェーンをベースとした金融システムへの処方箋 −プライバシーと追跡可能性の観点から」。ほかにチェイナリシスのジェシー・スピロ氏、アンブロック アナリシスCEOのアニー・ホー氏、メリーランド大学教授のイアン・マイヤーズ氏、米国財務省のドナルド・バトル氏が登壇。モデレーターをNECセキュリティ研究所の佐古和恵氏が務めた。

文・写真:小西雄志
編集:濱田 優