エルサルバドルを新しい通貨システムの聖地と捉える欧米ビットコイナーたち──法定通貨のグレートリセットに備える

8月にエルサルバドルに到着して以来、私はほとんどの時間をエルサルバドルの人々と、ビットコインでの体験、そして、ビットコインが時間とともにどのように普及していくかに対する彼らの見解を聞くことに費やしてきた。

しかし、ビットコインが今後10年でこの中米の国を変革する可能性を最も感じているのは、現地在住の欧米人たちだ。彼らはこの国が40年前のシンガポールに似ていると考えており、ビットコインが将来の経済成長の起爆剤になると考えている。

通貨と国家の分離

私はニュージーランド出身のビットコインのアーリーアダプターであるフラン・スタジナー(Fran Stajnar)氏に、個人投資家がエルサルバドル経済にアクセスするための新しい方法を作りたいという彼の野望について聞いた。

スタジナー氏は以前、「Techemy.Capital」というデジタル資産投資ファンドを立ち上げ、パンデミックの最中にエルサルバドルのビーチに移住した。彼は現在、エルサルバドル投資へのアクセスを民主化するためのエルサルバドルETF(上場投資信託)に取り組んでおり、欧米の資本をエルサルバドル企業に誘導することを目指している。

彼はビットコインを通貨と国家の分離の最初の事例と見ており、ルネサンスにつながった政教分離と非常によく似た考え方の変化をもたらす可能性があると推測している。

情熱的なビットコイナーにとってエルサルバドルは、主要な行き先のひとつになっているとスタジナー氏は語る。特に新型コロナウイルスへの対応から、西側諸国は過度に制限的で権威主義的だと考える人もいる。スタジナー氏にとってエルサルバドルは、自由と、西側政府の政治に縛られずに生きる機会を象徴している。

希望の光

法定通貨の価値が下落する時代において、エルサルバドルは他の国々にとっての希望の光だとスタジナー氏は信じている。世界中の投資家は、将来、デフォルトの可能性がある欧米諸国の資産を保有することに伴うカウンターパーティリスクを考慮し始めている。

一方、BRICS諸国は代替システムを構築し、脱ドル化の世界的潮流を推進しようとしている(ただし、彼らはまだドルを捨てるわけではないと主張している)。一滴、一滴、そして洪水。

現在、エルサルバドルの株式市場であるエルサルバドル証券取引所(Bolsa de Valores El Salvador)には83社しか上場していない。大規模な政府系ファンドのような政治的アクセスがない限り、資本を投入する方法を見つけることは難しいのが現状だ。

スタジナー氏は、法定通貨に裏打ちされた欧米市場に対するヘッジとして、より多くの人々がビットコインに裏打ちされたエルサルバドル国内経済に投資できる方法を生み出すことを目指している。スタジナー氏は、ブケレ大統領の政策が2024年の再選を通じて維持されれば、2030年までにGDPが急激に増加する可能性があると考えている。

ビットコインの登場により、通貨はデジタルでプログラム可能なものになった。時が経てば、ベースレイヤーのビットコインネットワーク上に開発されるプロジェクトは爆発的に増加するとスタジナー氏は考えている。ビットコインは、いわば新しい価値ある「インターネットにとってのTCP/IP」であり、私たちはまだその可能性の表面に触れたに過ぎない。

法定通貨システムは1971年以来、インフレを経験しており、多くの人が考えるよりもはるか早くに「グレートリセット」が起こる可能性がある。賃金は商品やサービスのコストに追いついておらず、その結果、欧米では大きな貧富の格差が生じている。エルサルバドルは、すべての人にとってより公平な通貨システムを伴った「ビットコイン・スタンダード」の世界がどのようなものになるのか、その実験場としてユニークな立場にある。

世界秩序の変化

国家が「ビットコイン・スタンダード」を採用することの影響は、エルサルバドルの国境をはるかに越えて広がる。第二次世界大戦後、世界の法定通貨システムの基幹は米国債だった。各国は世界経済の中で機能するために石油を購入し、アメリカ主導の世界秩序に参加するために、米国債の備蓄を維持する必要があった。より多くの国が「ビットコイン・スタンダード」を採用し、法定通貨ではなくビットコインで互いの取引を決済し始めれば、グローバルな通貨システムが構築されるだろう。

アメリカは、システム全体の接着剤である米ドルを印刷できるという「法外な特権」を持っており、米ドルを印刷することで国内問題を解決したり、戦争資金を調達できる。

これによってアメリカは、軍事的にも経済的にも、おそらく歴史上最も強力な国に成長することができた。その代償として、国の債務負担はますます増大している。私が話をしたエルサルバドル在住の海外からやってきたビットコイナーたちは、長期債務サイクルの終焉が世界規模での通貨リセットをもたらすという歴史的パターンに精通している。

歴史上、法定通貨が破綻するときは、おおむね最初にハイパーインフレに陥るというパターンがある。ジンバブエドルやワイマール時代のドイツマルクはその顕著な例だが、通貨安の例は、ローマ時代のデナリウス銀貨で銀の含有量が徐々に減少していった歴史にまでさかのぼる。歴史は韻を踏んでおり、世界の政府債務が増加するにつれて、西側諸国のデフォルトや大幅なドル切り下げが起こり得る可能性は高まっている。

ビットコインは「プランB」として機能し、人々は永久にインフレを続ける法定通貨システムからの脱退を選択できる。エルサルバドルに住む先見の明のある欧米人たちは、世界の金融システムで何が起こるかを知っており、将来の購買力と自由を守るために行動を起こしたと考えている。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:mundissima / Shutterstock.com
|原文:Westerners See El Salvador as a Template for a New Monetary System