FTXは顧客に全額返済する方針──取引所は再開せず

サム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)氏が経営していた、破産した暗号資産取引所FTXは、顧客に全額返済する予定だと表明した。裁判所の審理で明らかになった。

FTXの実際の破産時点が基準

しかし、返済を待っている人にとっては残念ながら、顧客資産の全額回収は市場がすでに混乱していたFTXの実際の破産時点を基準としている。この日付はアメリカのジョン・ドーシー(John Dorsey)破産判事が事前に承認したもので、一部の請求者にとっては争点となっている。

ビットコイン(BTC)価格は本記事公開時点で4万3000ドル(約623万5000円、1ドル145円換算)を上回るまで回復しており、2022年11月初旬のFTX破綻当時の約2万500ドルの価格から110%上昇している。

FTX債権者委員会の弁護士クリス・ハンセン(Kris Hansen)氏は1月31日の審理で、「こうした請求の多くは、申し立て日までの混乱した期間に価値が劇的に落ち込んだ通貨に基づいている」と述べた。

取引所を再開する計画を断念

FTXの弁護士アンドリュー・ディードリッチ(Andrew Dietderich)氏によると、米破産裁判所で検討されている返済手続きでは、請求者はFTXで資産を保有していて後に失ったことを示す証拠の提出が求められ、再編アドバイザーがこれらを精査することになるという。裁判手続きによると、FTXは買い手不在を理由に取引所を再開する計画を断念し、元顧客に対する補償に焦点を移した。

この日の法廷での取り組みは、複数の債権者陣営が個人投資家からこの最新のアプローチへの承認を取り付けられるようにすることで、訴訟を前進させることを目的としている。破産債権取引所Xclaimのデータによると、FTXの破綻を受けて約1500万人が合計300億~350億ドル相当のさまざまな暗号資産を失った。

ネイティブトークンFTTは下落

FTXのネイティブトークンであるFTTは、FTXの計画に関するニュースが出た直後に11%以上急騰したが、すぐに急落し、この日の下落幅は約15%となった。

バンクマン・フリード氏は昨年、2022年後半に経営破綻する前に顧客の資金を盗んだ罪で有罪判決を受けた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:Liz Napolitano/CoinDesk
|原文:FTX Expects to Fully Repay Customers but Won’t Restart Defunct Crypto Exchange