ステーブルコインの規制は必要、だが潰してはならない

ステーブルコインの規制は必要、だが潰してはならない

Brady Dale
公開日:2019年 10月 28日 06:00
更新日:2019年 10月 28日 06:00

ブロックチェーンベースの決済システムとステーブルコインの最近の進展は、国の規制当局と議員からの詳細な調査を招いている。

これらのプロジェクトの中にはメディアで話題となったものもあるが、議員が留意すべきは人民元を裏付けとしたデジタル通貨に関する中国人民銀行の提案。ウィーチャット(WeChat)やアリペイ(Alipay)といった同国の主な支払いプラットフォームで利用可能となる。

激化する国際競争

金融イノベーションの次の波をめぐる国際競争はますます激化している。中国、韓国、日本、そしてヨーロッパの多くの国々が、クレジットカードやスマートデバイスを通じたモバイルウォレットや非接触型決済の導入を急速に進めている。

アフリカ、中東、アジアでのモバイルデバイスのコモディティ化は、銀行口座を持たない、あるいは十分な金融サービスを受けていない消費者や企業に新たな能力と経済的エンパワーメントの機会への希望をもたらしている。

消費者は金融イノベーションを旧来の非効率性を打破し、アクセス手段を増やし、金融サービスのコストを下げる手段と考えている。仮想通貨はその極めて大きなボラティリティのため、主に投機の手段となっていたが、新たなステーブルコインは、より安全でより迅速な取引を求める消費者の要求を満たす方向に動いている。

十分な金融サービスを受けていない人々にとっての価値は、ステーブルコインのようなイノベーションをもとに構築された専門的な金融サービスプロダクトが提供するであろう有用性と使いやすさから明らか。

しかし、人々は依然として、資金の保護、データの管理、紛争処理に懸念を抱いている。したがって、コンプライアンスや消費者保護の懸念に対処するために、金融イノベーションに関する規制のフレームワークづくりを支援することは世界の主要先進国の利益になる。

これが、IMF、G20、FATFといった数多くの国際的な規制機関や国際組織が、消費者向けプロダクトになる直前の新しいメカニズムやイノベーションにまつわる問題に定期的に取り組んでいることだ。

希望とリスク

先日発表されたステーブルコインに関する主要7カ国(G7)作業部会のレポートは、金融サービスへの消費者の関わり方が急速に変化し、イノベーションが拡大し続けていることを明らかにした。

レポートは、金融規制当局は、お金や価値のデジタルネイティブな相互作用の変革を目指す、これらの新しい野心的なプロジェクトのための実行可能なフレームワークの必要性を理解していることを示した。摩擦を減らすためのイノベーションにおける公共部門および民間部門の大きな役割を予測しており、また、民間のモバイルネットワークが既に達成している、コストを下げ、支払いの信頼性とスピードを向上させる重要なネットワーク効果を認識している。

レポートはまた、市場操作の可能性、ステーブルコインが旧来の金融システムにもたらすリスク、明確な国際的規制のフレームワークの欠如に関して満たすべき規制当局の懸念も明らかにした。

その懸念とは、ステーブルコインシステムが──分散化された設計になっており、企業や非営利団体の集合体によって高い透明性のもとで管理され、アメリカ議会や国際社会によって規定されたルールや規制を遵守する一方で──銀行システムを弱体化させ、マネーロンダリングを助長し、グローバル金融システムに亀裂を生じさせる可能性があることだ。

通貨・金融政策における政府の主権が失われる可能性も、一部の議員にとって大きな懸念となっている。彼らは、本当にそうなるのか否かを検証し、またドル、ユーロ、円などのG7通貨に裏付けられたステーブルコインがこれらの主要通貨の有用性と効率性を世界的に高めるという潜在的な利益──あるいは、世界経済と金融システムに対する中国の影響力を拡大する人民元に裏付けられたステーブルコインと対立するものになるという利益を考慮しなければならない。

テクノロジーや金融サービスの領域で消費者の習慣が変化したことで、企業は世界経済における商品やサービスを売買方法の再考を迫られ、ステーブルコインに対する世間の厳しい監視の目は、これらのシステムを開発している組織に適切な規制を遵守することを求めている。これらの組織は、いかなる新しいシステムも安心、安全で、既存の金融システムを補完するものであることを明確にするために政府機関と協力する必要がある。

同様に規制当局は、ステーブルコインが既存の金融システムと並存し、規制環境のもとで存在するための道筋を示さなければならない。また、政府関係者や議員は、規制当局に規制環境を策定する時間と空間を与え、世界中の監督機関がグローバルに一貫したアプローチを取れるようにしなければならない。


ネイサン・カイザー(Nathan Kaiser)はアイガー法律事務所(Eiger Law)の創業者で、サイバースペースを主な研究テーマとするハーバード大学バークマンセンター(Berkman Klein Center for Internet & Society at Harvard University)のフェロー。プロフェッショナルとして、中華圏で20年間の経験を持ち、会社法、テクノロジーと法の融合をテーマとしている。

この記事で示された見解は筆者自身のものです。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Dollar bill image via Shutterstock
原文:Regulate Stablecoins – Don’t Squash Them