仮想通貨企業が法を軽んじれば「痛い目に合う」:米FinCEN

仮想通貨スタートアップは、米国のアンチマネーロンダリング(AML)法を遵守しなければ、痛い目にあう。この点につき、曖昧なところはないと、米国で最も権威あるAML規制当局が述べた。

金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)のディレクター、ケネス・ブランコ(Kenneth Blanco)氏は2019年10月21日(現地時間)、仮想通貨業界に対して、事業立ち上げの際には、銀行秘密法(Bank Secrecy Act=BSA)やその他AML規制に注意を払うように警告した。FinCENは間違いなくそうするからだ。

DCフィンテック・ウィーク(DC Fintech Week)の初日にジョージタウン大学でスピーチを行ったブランコ氏は、司会のクリス・ブルマー(Chris Brummer)氏に対し、企業は法律を知らないことに対して弁解することはできない、と述べた。

「我々は皆に、イノベーションを起こすなら、それを実行する前、市場に届ける前に、確実に規制を遵守した方が良いと伝えています」とブランコ氏は述べ、次のように続けた。「確かにそうした方が良い。なぜなら率直に言って(中略)開発を行って、他の皆がそのために妥協して道を開いてくれるようなことはないのですから」

ブランコ氏はさらに次のように続けた。

「まず法律を確かに遵守するようにしたら、ビジネスを実行に移して市場に届けることができます。そうしなければ、実現はできません。(中略)BSAを遵守できなければ、困ったことになります(中略)遵守しなければならず、我々は主要な規制当局として、BSAの管理者として、企業がきちんと法律を遵守するようにします。もし遵守しないとなったら、苦い経験をすることになるでしょう」

FinCENは、企業が法律を遵守することが「できない」ということも受け入れない、とブランコ氏は述べた。BSAの要件を満たすことができないと考える企業は市場に出るべきではない、とブランコ氏は述べた。

「それがこの先、我々が期待するものです」とブランコ氏は述べた。FinCENが証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)と共に発表した最近の共同声明を理由の一部として、マネーロンダリングに関する執行行為が業界で見込まれる時期に、ブランコ氏の発言はなされた。

「エキサイティング」だが「恐ろしい」

警告を別にすれば、ブランコ氏はイノベーションの考えを称賛したが、スピーチを通して、国家セキュリティーのリスクとなる可能性も警告した。

「一部のイノベーションは本当に心躍るものです」とブランコ氏は述べ、次の通りに続けた。「良い点は、この種のイノベーションやアイデアを元にして、我々が社会を多くの方法で本当に守ることができたり、雇用の増大を享受することができるという点です」

一方でこれらの新しいツールが、犯罪者によって利用される可能性もあることは「恐ろしい」とブランコ氏は付け加えた。

「どんなイノベーションでも同じように、あなたがイノベーションを起こしている際にやってくる人の中には時々、間違った人、その隙を悪用しようとする人々もいるので、慎重になって、そのことを心に留めておく必要があるのです」とブランコ氏は警告した。

これら悪意を持った人々は、BSAのような法律に着想を得ている、とブランコ氏は述べた。社会は高齢者や、サイバー詐欺やその他のデジタル犯罪の影響を受けやすいその他の層を保護したい。

FinCENは反テクノロジーではない、とブランコ氏は付け加えた。FinCENはテクノロジーに対して中立的な姿勢を持っており、業界に対する警告にも関わらず、ブランコ氏はテクノロジーは前進を続けるべきだと考えている。しかしブランコ氏は、開発は責任を持って行われるべきという点も繰り返し主張した。

「イノベーションは(中略)責任を伴ったものであるべきで、合理的なものでなければなりません。時速190マイル(約305km)の車を開発して、『制限時速を変更しろ』とは言えません。そのようにはならないのです」とブランコ氏は述べ、次のようにまとめた。

「車の方が順応しなければなりません。そうでなければ、車道に出ることはありません。それが結論であり、それが伝えたいことです」

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Chris Brummer and Kenneth Blanco image by Nikhilesh De for CoinDesk
原文:FinCEN Director Warns of ‘Hard Time’ for Crypto Firms That Don’t Follow Law