利用例が増加する中、FATFがデジタルIDのガイダンス案を発表

金融活動作業部会(Financial Action Task Force:FATF)は金融機関にデジタルIDシステムのグローバルな拡大に備えるよう求めた。

FATFは10月31日(現地時間)、デジタルIDについてのガイダンス案を発表、政府、規制対象の組織、その他のステークホルダーがアンチマネーロンダリング(AML)およびテロ資金供与対策(CFT)を実施するためのものだ。

ガイダンスによると、FATFは金融取引のプロセスがますますデジタル化する中、大きな問題となりつつあるセキュリティーと透明性の問題に対処することを目的としている。

金融包摂と取引監視をいかにサポートするか

FATFはウェブサイトに「焦点となる領域」として複数の質問を掲載し、民間のステークホールダーに2019年11月29日までにメールでフィードバックを求めている。

「焦点となる領域」には、デジタルIDがAML/CFTの実施に及ぼす可能性のある具体的なリスクが含まれている。すなわち、いかにしてファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)をサポートするか。トランザクション・モニタリング (取引監視)をいかにサポートするか。そして、FATFの記録保存要求の実施に対する潜在的な影響などだ。

特にガイダンスは、デジタルIDネットワークの成長をサポートするツールとして、分散型台帳技術(distributed ledger technology:DLT)を具体的に指摘した。例えばシビック(Civic)など、多くのブロックチェーン企業はすでにこの分野に狙いを定めている。

独立したデジタルIDシステムを可能にする明確なガイドライン・規制の策定を呼び掛け

ガイダンスの中でFATFは規制当局に「AML/CFTの目的で規制を受ける組織による、適切で、リスクを考慮済みで信頼性が高く、独立したデジタルIDシステムを可能にする明確なガイドラインもしくは規制を作ること」を呼びかけた。

一方、FATFは、仮想通貨取引所(ガイダンスでは、仮想通貨サービス・プロバイダー、Virtual Asset Service Providers:VASPsと言及された)のような規制対象組織に「情報に基づくリスクベースのアプローチを取り、顧客管理(カスタマー・デュー・ディリジェンス:CDD)のためのデジタルIDシステムをベースとする」ことを提案した。

全77ページのガイダンス案は、デジタルIDシステムの信頼性と独立性、顧客管理(CDD)を行う上での使用方法の可能性といった同システムに関連する多くの問題点を詳しく記した。

ガイダンス案はまた、国際金融システムにおけるステーブルコインの台頭に起因するマネーロンダリングとテロ資金供与のリスクに対するFATFの取り組みの一部でもある。

FATFは決済システムにおけるデジタルIDの重要性を強調した。デジタルIDはステーブルコイン関連の取引でステークホールダーの身元確認に使われる可能性がある。

2019年、FATFはブロックチェーン分野で活動を活発化させている。6月、FATFは仮想通貨取引所および他のVASPs向けのガイダンスを発表し、各国にデジタル資産の移動における厳格な顧客確認(Know Your Customer:KYC)プロトコルの実施を求めた

翻訳:石田麻衣子
編集:増田隆幸
写真:Digital thumbprint image via Shutterstock
原文:FATF Releases Guidance on Global Digital IDs as Use Cases Grow