- エセナの利回り付きトークン「USDe」は、暗号資産市場が上昇するなかで永久資金調達率も上昇したため、時価総額が1カ月で10億ドル(約1540億円、1ドル154円換算)増加し、34.4億ドル(約5300億円)となった。
- USDeは現在、年率29%の利回りを提供しており、暗号資産市場が調整局面にあり米ドルのリスクフリーレートを下回っていた時期から回復している。
- DeFiの貸し手や取引所がUSDeを担保資産として上場し、同プロトコルの収益をガバナンストークン保有者に分配する計画があるため、成長がさらに加速する可能性がある。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領の選挙での勝利以降、暗号資産(仮想通貨)市場が急上昇するなか、暗号資産プロトコル、エセナ(Ethena)の利回り付きトークン「USDe」が投資家の間で再流行している。
DefiLlamaのデータによると、エセナのUSDeトークンには過去1カ月で約10億ドル(約1540億円)の新規資金が流入し、時価総額は34.4億ドル(約5300億円)まで増加。現在、7月の記録的な高値36億ドル(約5540億円)をわずか5%下回っている。
暗号資産市場が3月のピークから冷え込むなか、エセナは逆風に直面した。USDeは、価格が1ドルに固定された「合成ドル」として取引されている。USDeはビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を裏付け資産として使用し、それらを複数の取引所における同価値のショート永久先物ポジションと組み合わせている。この戦略では、永久資金調達率がプラスになっているときに裏付けデリバティブ資産から収益を生み出し、その収益の一部を利回りとして投資家に還元する。
8月と9月に永久資金調達率がマイナスに転じたため、USDeの利回りは米ドルのリスクフリーレートより低くなり、エセナの戦略は投資家にとって好ましくないものになった。投資家は7月から10月の間に、同プロトコルから12億ドル(約1850億円)を引き出した。
現在、ビットコインが史上最高値を複数回更新し、暗号資産市場が活気づくなか、プロジェクトのWebサイトによると、エセナはトークンをステーキングしている保有者に年率29%の利回りを提供している。
エセナ成長へのさらなる触媒
エセナのさらなる成長を促進する触媒はまだある。
DeFi(分散型金融)レンディング大手アーベ(Aave)は、利用可能な担保資産のなかに、ステーキングされたUSDeトークンを追加した。これにより、ユーザーはトークンを担保に借り入れを行い、利回りを得られるようになった。
「Aaveの統合により、来月中にUSDeの供給が数十億ドルに達すると予想される。また、来週には2つの中央集権型取引所(CEX)が、新たにUSDeを担保資産として上場する予定だ」とエセナの共同創設者兼CEOのガイ・ヤング(Guy Young)氏は、11月15日にXの投稿で述べた。
エセナはまた、プロジェクトのリスク委員会が前週にガバナンス・イニシアチブを承認したことを受けて、ガバナンストークン(ENA)保有者へのプロトコル収益の分配を開始する計画だ。この計画は、トランプ氏が選挙で勝利した後、暗号資産取引企業ウィンターミュート(Wintermute)が11月6日に提案した。業界関係者は、トランプ氏がDeFiプロトコルを支持しているため、トランプ政権下ではDeFiプロトコルへの規制がより緩和されると予想している。
|翻訳・編集:廣瀬優香
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|原文:Ethena Sees $1B Inflows as Crypto Rally Brings Back Double-Digit Yields