暗号資産が反落する中、関税への懸念に代わって金利への懸念が高まる
  • リスク市場は3月6日、トランプ米政権が関税の脅しを撤回したにもかかわらず、低迷した。
  • 成長率の鈍化と同時に金利が上昇し、スタグフレーションが話題に上るようになった。
  • 7日に発表される米雇用統計は、さらに重要な意味を持つことになりそうだ。

トランプ米大統領による関税の脅しの撤回は、少なくとも米国時間3月6日の半ばまでには、リスク市場に期待された効果をもたらしていない。

米ニュース専門局CNBCに出演したハワード・ルトニック商務長官が、大統領はメキシコに対し、以前の貿易協定の対象となっているモノやサービスについては、25%の関税適用を免除すると述べたため、株式市場は急落した取引開始から反発し、ビットコイン(BTC)は9万1000ドルを突破した。

メキシコに対する好意的な姿勢は、後にトランプ氏のソーシャルメディアへの投稿によっても確認された。

しかし、市場の好調は長くは続かなかった。ナスダックは東部時間正午過ぎに2.3%下落し、セッション最安値をつけた。ビットコインも8万8500ドルまで後退し、過去24時間では1%近く値下がりしている。

速報:スタグフレーション

米政権から発信される絶え間ないニュースの波に紛れてしまっているようだが、先進国全体で金利が急上昇している。

アメリカによるヨーロッパへの軍事支援が縮小される可能性がある中、ヨーロッパ各地の政府は予算を狂わせるような防衛費の増額を宣言している。ドイツでは今週、過去最悪レベルの国債暴落が起こり、10年物国債利回りは40ベーシスポイント以上跳ね上がり、現在は2.83%となっている。

日本では、長期国債利回りは十年以上前から非常に低い水準だったが、10年物国債利回りが一夜にして6ベーシスポイント上昇し、1.51%となった。これは半年前の2倍以上の水準だ。

このような動きは、米国市場でも見過ごされてはいない。10年物国債利回りは、トランプ大統領就任以来約70ベーシスポイント低下していたが、この48時間で20ベーシスポイント以上上昇し、4.30%となった。

「最近の世界の債券利回りの動きを見て、私は警戒を強めている」と、レッカー・キャピタル(Lekker Capital)のクイン・トンプソン(Quinn Thompson)氏は語った。

トンプソン氏が特に懸念しているのは、成長が減速する中で利回りが上昇していることだ。

「我々はまさに、定義通りのスタグフレーションを目の当たりにしている。スタグフレーションは歴史的に見ると、リスク資産にとっては厳しいものとなってきた」と、トンプソン氏は続けた。

最新の米雇用統計の発表迫る

金利が大きく上昇したことで、7日の朝に発表される2月の米非農業部門雇用者数があらためて重要視されている。

エコノミストらは、1月の14万3000人増に対し16万人増と予想。失業率は4%で安定していると見られている。雇用統計はここ数カ月、予想を上回る傾向が続いており、最新の雇用統計も好調を示した場合、金利はさらに上昇し、リスク市場、特に暗号資産(仮想通貨)は新たな下落に転じる可能性がある。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Rate Fears Replace Tariff Fears as Crypto Pulls Back