「サトシの宝」が切り開いたトークンの新しいプロモーション方法──仮想通貨におけるゲーミフィケーションとは?

100万ドル相当のビットコインを賭けて、世界中に隠された鍵を探す「Satoshi’s Treasure(サトシの宝)」は、トークン発行のゲーミフィケーション・モデルを提供する可能性がある。

ビットコイン以外にも広がる「サトシの宝」

「サトシの宝」の共同クリエイターでプリミティブ・ベンチャーズ(Primitive Ventures)のエリック・メルツァー(Eric Meltzer)氏によると、テクノロジー好きを引きつけているこの宝探しゲームは、熱帯の島を拠点とする小さな、謎の企業が運営しているため、ゲームを支援したり、パズルを準備する人たちもすべての鍵の背後にある秘密を知らない。

世界中に隠された1000個の鍵の中から400個の鍵を集めた最初のプレーヤーまたはチームがビットコインを手にする権利を手にする。

今やこのゲームはビットコイン以外にも広がっている。

メルツァー氏は、テゾス財団(Tezos Foundation)がこの謎のスタートアップの最初のクライアントになり、12月からプレーヤーがテジー(Tezzie)を獲得するゲームがスタートすると語った。メルツァー氏によると、「サトシの宝」ではこれまでに鍵の約20%が世界中に配置されており、残りは2020年半ばまでに配置される予定だ。

この世界的な宝探しゲームは7カ月前に始まり、現在、ゲームについての情報が送られるメールの受信者は約5万人にのぼるとメルツァーは語った。この数字は、賞金や鍵の配置のために新しい支援者を積極的に集めたからのわずかに減っている。支援者には、ナバル・ラビカント(Naval Ravikant)氏、バラジ・スリニバサン(Balaji Srinivasan)氏、イデオ・コラボ・ベンチャーズ(IDEO Colab Ventures)などがいる。

エアドロップの新しい形態

一方、ブロックチェーン・スタートアップのクォーラム・コントロール(Quorum Control)は「サトシの宝」の鍵10個と、自社のネイティブ・ブロックチェーン「トゥペロ(Tupelo)」に関連した数十の賞金を備えた独自のテキストベースのビデオゲームをローンチしているところだ。

同社スタッフはこれを、新しいトークンまたはローンチ前のトークンへのアクセスのための「アーンド・エアドロップ(信頼や評判を獲得するためのエアドロップ)」と呼んだ。

「ビジネスモデルは、トークン配布を支援する方向に進化している」とプリミティブのメルツァー氏は述べた。

「我々はこのモデルを他のコインでも繰り返したいと考えている。エアロップモデルよりも優れていおり、人々を動かすことができると考えている」

念のために言っておくと、クォーラム・コントロールは「サトシの宝」のクライアントではなく、メインネットもまだローンチしていない。だが、仮想通貨プロジェクトのためのゲーミフィケーションを探求する新たな機会をプレーヤーに提供するものだ。

クォーラム・コントロールの共同創業者アンドリュー・ホルツ(Andrew Holz)氏は、この新しいテストネットベースの探検ゲーム「ジェイソンのゲーム(Jason’s Game)」は、古典的なビデオゲーム「ゾーク(Zork)」をモデルにしていると語った。

ゲームは、クォーラム・コントロールのウェブサイトにゲーム内仮想通貨ウォレットとともにホストされ、ユーザーはテキストで交流しながら、4つのレベルの謎解きとパズルに挑む。

開発者の新しいツール

勝者に100万ドルのビットコインの手掛かりを提供することに加えて、プレーヤーのウォレットにノンファンジブル・トークン(NFT)のような数字と文字が入るものもある。

「この(NFT)は、トークンを事前に取得する方法。トークンの約束手形のようなもので、最初の供給量は決まっている」とクォーラムのホルツ氏は述べた。同氏によると、約12万のトゥペロ・トークンが挑戦結果とスピードによってランク付けされる17人以上の勝者に配布される。

ホルツ氏は、2020年にメインネットがローンチする予定のトゥペロ・ブロックチェーンは、イーサリアム(Ethereum)などのネットワークと比べてユニークな構造を持つと語った。トークンはパブリックセールでは配布されないので、このゲームは認定投資家ではない人々が早期にアクセスできる数少ない方法の1つとなる。

「すべての情報を1つにまとめる必要がある大きなセントラル・チェーンを持つのではなく、各NFTごとに、クリエーターや履歴、あるいは必要な情報を何でも追加できる。これをイーサリアムでリアルタイムに実行しようとしても、パフォーマンスが追いつかない」

イニシャライズド・キャピタル(Initialized Capital)の共同創業者ギャリー・タン(Garry Tan)氏は、同社はトークンとともに、このスタートアップの株式も取得する予定と述べた。同氏の見方によると、このゲームは仮想通貨に詳しい人たちの間でブランド認知を高めながら、技術をテストする方法だ。

「イーサリアムやビットコインでは、すべてがパブリック・チェーンのなかにある。一方、トゥペロはフレキシブルなプライバシー設定を実現する」とタン氏は述べた。

「仮想通貨はまだ初期段階にあり、開発者やハッカーは、これらが初期段階にふさわしいツールであることを知る必要がある。このゲームのオーディエンスは、まさに正しいタイプの人々だ」

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸
写真:Quorum Control
原文:Promoting a New Token? Satoshi’s Treasure Wants You to Gamify It