マイクロソフト、人工知能の問題点をブロックチェーンで解消へ

マイクロソフト、人工知能の問題点をブロックチェーンで解消へ

Brady Dale
公開日:2019年 12月 10日 06:00
更新日:2019年 12月 10日 06:00

マイクロソフト(Microsoft)は、顧客企業の人工知能(AI)に対する恐怖心を払しょくさせるための手段として、ブロックチェーン技術を売り込んでいる。

AIを警戒する消費者と同じように、企業も機械学習アルゴリズムが大量のデータセットに無差別に適用される「ブラックボックス」に全幅の信頼を置くことに対して不安を持っている。しかし、何千社もの企業のデータ管理を手掛けるマイクロソフトは、ブロックチェーンによって信頼および透明性が高まり、そのような懸念が緩和すると主張する。

それを支えるのは、アジュール・ブロックチェーン・データ・マネージャー(Azure Blockchain Data Manager)という新しいツールで、マイクロソフトがフロリダ州オーランドで開催した年次カンファレンス「イグナイト(Ignite)」で公表されたが、企業トークン作成のためのプラットフォームが発表されたことで霞んでしまった。

ブロックチェーン・データ・マネージャーは、オンチェーンのデータを取り出し、他のアプリケーションにつなげる。つまり、ノードからのトランザクションデータやスマートコントラクト内のトランザクションデータを、他のデータベースやデータストアに送ることができるのだ。これはAIを活用できるような分野であり、サプライチェーンの場合には、モノのインターネット(IoT)の情報を向けることができる分野である。

「製造業から、エネルギー業界、公共部門から小売業界まで、AIはすべての分野で事業をデジタルに変容させています」と、マイクロソフトのクラウドコンピューティング事業、マイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)のブロックチェーンエンジニアリング担当の主任プログラムマネージャーであるマーク・マーキュリ(Marc Mercuri)氏は述べた。「ブロックチェーンは、アルゴリズムから出入りするデータまで、すべてが確実に信頼できるものであるようにすることができます」

ダウンストリームデータ分析の信頼の要として機能することは、ブロックチェーンにとってはかなり抽象的で控えめなイノベーションのように聞こえるかもしれない。しかしブロックチェーン自体は、熱狂の最初の波に乗った企業に対して具体的な利益をほとんどもたらさなかった。

ブロックチェーン、AI、IoTによりデータを管理

AIが解析する前にデータの源を見るのに分散型台帳を利用することができる、とマーキュリ氏は述べた。つまり、「データがどこから来たのか、どこで変換されたのか、その変換に使われたのはどのようなコードか、その変換のインプットとアウトプットは何か」といったものを理解するためにだ。

ガートナー・リサーチ(Gartner Research)のバイスプレジデントで、著名アナリストのアビバ・リタン(Avivah Litan)氏は、このコンセプトを実現可能と考えている。

たとえば、ブロックチェーン、AI、IoTは、アルゼンチン産オーガニック牛肉の配送追跡に組み込むことができる、とリタン氏は説明する。

この場合ブロックチェーンは、参加者が配送のすべての条件と正確な場所につき合意することを可能にし、その先に分配戦略を伝え、そこでAIが役割を担うこともできる。

「ブロックチェーンなしでもそれは可能ですが、ブロックチェーンを使えば、共有された唯一の真実があり、変更不能な監査が可能になるので、AIモデルに与えるにはずっと良いデータ源なのです」と、リタン氏は指摘した。

マイクロソフトの当該分野への進出は今まで、JPモルガン(JPMorgan)のクォーラム(Quorum)など、企業向けバージョンを含むイーサリアムにつながるものであったが、今回の同社のデータマネージャーは、「台帳に捉われない」、つまり様々な種類のブロックチェーンと利用することができるように設計されている。

以前にはR3のコーダを使用

マイクロソフトが擁する顧客の1社で、契約管理のためのクラウドベースのプラットフォームであるアイサーティス(Icertis)は、イグナイトでのリリース前に「プレビュー版」でブロックチェーン・データ・マネージャーを試し、倫理的なサプライチェーン契約や、補助金を受けた特定の調合薬の利用法にまつわるユースケースを構築した。アイサーティスは、データ・マネージャーのビルド用にクォーラムを利用したが、その前にはメインのブロックチェーンとしてR3のコーダ(Corda)を利用していた。

信頼できるAIというコンセプトを示す例には、法的責任の制限や、特定の種類の障害回復条項を含む契約にまつわるものがある。AIモデルにデータを提供することで、エンドユーザーが契約の条件に合意した場合には、彼らにとってのリスク水準は予測可能なものとなる。

アイサーティスの共同創業者兼CTOのモニシュ・ダルダ(Monish Darda)氏は、目的はエンドユーザーにAIがなぜその結論に達したのかを見せ、データによるバイアスに陥る傾向がないことを証明することにあると話した。

「その決定に達するために利用されたデータを見ることができます」とダルダ氏は語った。

「私のモデルがそのデータによって訓練されたものであれば、トランザクションIDまたはブロックチェーンに書かれたトランザクションのハッシュを与えてくれます。そしてさらに深く検討して、『2年前に機械学習モデルで利用して、リスクの計算に影響を与えた10のデータポイントがある』と言うことができるのです」とダルダ氏は説明した。

KPMGも、信頼できるAIを活用へ

四大会計系コンサルタント企業の一角を占めるKPMGも、1月にブロックチェーンベースの信頼できるAIのリリースを予定している。

KPMGのアメリカ担当ブロックチェーン責任者のアルン・ゴーシュ(Arun Ghosh)氏は、機械学習の大部分は、データサイエンスではなく、データエンジニアリングだと語った。

「情報をきれいにして、照合し、統合し、それからアルゴリズムを実行するのです」とゴーシュ氏は説明した。「もともと変更不可能な信頼できるレイヤーを加えることで、データエンジニアリングのプロセスを圧縮することができるということが分かってきました」

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Original prop of the HAL 9000 from “2001 A Space Odyssey,” image via Shutterstock
原文:Microsoft Is Using Blockchain to Help Firms Trust AI