公取委が「銀行間送金の実態を調査」日経報道

個人や法人が銀行送金をする際、ほぼすべての取引は全銀システムを通じて行われる。この銀行間送金について、公正取引委員会が実態調査を始めたと日経が12月7日報じた。記事は、公取委が主に調べるのは「全銀システムへの接続状況と送金手数料の決め方について」と指摘している。

フィンテックスタートアップが数多く生まれ、かつQRコードなどを使ったキャッシュレス決済が盛んになる中で、銀行間送金の手数料や、全銀システムへの高い加盟料などが、スタートアップや消費者の負担になっていないかを確かめる狙いがあると見られる。

全銀システムとは──全銀ネットが運営、1200の金融機関が加盟

全銀システムは国内にあるほぼすべての金融機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農業協同組合)をつなぐネットワークで、一般社団法人 全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営している。

全銀ネットが公開した19年12月時点の資料によれば、全銀システムは1日平均約 650 万件、12 兆円余の振込取引などに伴う為替通知を処理できるという。

平日日中の為替取引に対応する「コアタイムシステム」に加え、平日夜間・土日祝日の振込に対応する「モアタイムシステム」が2018年10月から稼働。いずれも約1200の金融機関が加盟。店舗数では約3万にものぼる。

法人や個人が銀行口座間でお金を送ったり受け取ったりする場合、ほぼこの全銀システムを通して行われている。

全銀ネットの仕組み(「全銀ネットのご案内」より)

日経の報道によれば、全銀ネットへの加盟には多額の費用がかかるため、「資金力が十分でないフィンテック企業が接続しようとしても、難しいのが実情」という。

手数料は金融機関が決められるが横並び

また、銀行間送金の手数料は金融機関がそれぞれ決めているというが、ほぼ横並び状態だ。たとえば個人がネットバンキングで他行に振り込む手数料は、3メガバンクはいずれも原則として1回220円(振込額3万円未満)となっている。

資金移動業を営むフィンテック企業などにとっては、銀行間送金の手数料は、口座から出金手数料を含めて負担になる。こうした実態を把握して、フィンテックの推進と消費者の負担軽減などにつなげたい狙いがあると見られる。

日経によれば、公取委は大手行や決済系のフィンテック企業などを調査し、年度内にも調査報告をまとめる方針だという。

文・編集:濱田 優
写真:milicad / Shutterstock.com