丸紅、“産業の背骨”をブロックチェーンで追跡──商社が進めるトレーディングのデジタル化

総合商社の丸紅が、多くの“産業の背骨”を担う「鋼管」のサプライチェーンを対象に、ブロックチェーンを使った実証実験を始める。原油、金属製品、穀物、化学品……。産業・経済インフラの根幹材料を扱う商社によるブロックチェーンの活用が、広がっていきそうだ。

丸紅は3月24日、来月から6月にかけて実証実験を行い、実際の運用に移行するかを検討していくと発表。対象となるのは、伊藤忠丸紅鉄鋼(丸紅が50%出資)が扱う鋼管トレード。鋼管は一般に、石油やガスの輸送パイプラインや、原油の掘削機材などに使われ、伊藤忠丸紅鉄鋼はその取引・販売を行なっている。

取引を行う鋼管のデータをブロックチェーンに書き込んでいくことで、情報を追跡できるようにする。今回の実験に使われるシステムは、丸紅が提携するシンガポールのブロックチェーン・ソリューションズ社が開発するという。

三井物産はデジタル資産運用でブロックチェーン

ここ数年で、商社やメガバンクが主導するブロックチェーンを活用した取り組みが、目立ってきている。伊藤忠商事が昨年、インドネシアで天然ゴムのサプライチェーンを対象にした実証実験を行うと発表すれば、今月19日には、三井物産がデジタル資産のマネジメントで、LayerXと共同で新会社を設立すると発表した。

物産とLayerXは、新会社を通じて、不動産などを証券化した資産の取引に、ブロックチェーンを使うことで、資産運用の世界を誰にとっても短なものにする取り組みを進めていく。新会社には、SMBC日興証券と三井住友信託銀行も参画する。

三菱UFJ銀行は、原油などが売買される際に必要な金融取引を、ブロックチェーンを活用してデジタル化する動きを本格化させている。当面は欧州とアジア域内の原油取引にフォーカスしていくが、将来的には北米市場もターゲットエリアに入れ、農作物や金属を含むコモディティ全般に広げていく方針だ。

文:小西雄志
編集:佐藤茂
写真:製油所のパイプライン(Shutterstock)