暗号資産関連は1%未満、だが最近は急増──FinCENの不審行為報告

2013年以降、7万件以上の暗号資産(仮想通貨)関連の不審行為報告書(Suspicious Activity Reports:SAR)が提出されている。だが、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、一部の海外企業は不正行為の撲滅に十分取り組んでいない可能性があると強く警告した。

1万1000件のうち7100件

5月13日、FinCENのケネス・ブランコ(Kenneth Blanco)局長は米CoinDeskのバーチャルカンファレンス「Consensus: Distributed」において、これらの報告書の約半分は暗号資産企業にによって提出されており、FinCENは犯罪の可能性があるIPアドレスとウォレットアドレスを把握することができると述べた。

それでもこの数字はFinCENが2014年から2019年に受け取った1200万件以上の報告書のわずか0.59%にすぎない(2013年の数字はすぐには入手できなかった)。

2019年12月、ブランコ局長は、FinCENは2019年5月から12月までに1万1000件の暗号資産関連の不審行為報告書を受け取り、そのうち7100件は暗号資産企業によるものと述べた。つまり、最近では暗号資産関連の不審行為報告書は急増している。

FinCENはアメリカの厳しいアンチマネーロンダリング規制(AML)を執行するために金融業界全体からデータを収集・分析している。

海外企業に懸念

従来の金融機関からの優れた監視のみならず、暗号資産業界をカバーするFinCENの専門能力が向上したことによって、暗号資産業界の監督は容易になったものの、業界関係者からの自己報告は依然として「最重要」とブランコ局長は述べた。

しかしまだ未解決の問題も残っている。一部の海外暗号資産企業はマネー・サービス・ビジネス(Money Service Business:MSB)として登録されておらず、適切なアンチマネーロンダリング規制や不審行為の報告義務がない。

「アメリカ国外に拠点を置く企業が我々の規則を遵守せずにアメリカの人々とビジネスを行うことへの懸念はますます大きくなっている。アメリカの金融システムとアメリカ市場にアクセスしたければ、規則を遵守しなければならない。我々は規制の執行に真剣に取り組んでいる」

FinCENはまた、プライバシーコインとその提供企業にも大きな関心を持ち始めている。ブランコ局長は取引所が完全に規制を遵守していることを確認するために、アンチマネーロンダリング/テロ資金供与対策(AML/CTF)の検査を始めていると述べた。

「海外からアメリカの金融システムを利用するなら、アメリカの金融システムを強力なものにしている取り組みに従うことなく、実行可能な競争優位を得ることができると考えるべきではない」

翻訳:下和田 里咲
編集:増田隆幸
写真:Donna Burton/U.S. Customs and Border Protection/Filckr
原文:Less Than 1% of FinCEN’s Suspicious Activity Reports Since 2013 Mentioned Crypto