ビットコインのマイニング難易度、過去最高を記録──新型と旧型マシンが混在する中国

ビットコインのマイニング(採掘)難易度が過去最高レベルに達した。

マイニングの難易度は2016ブロック毎に、またはおよそ14日毎に調整される。ビットコインネットワークのハッシュレート(演算能力)が上昇した場合、次のサイクルでは難易度は上昇する仕組みだ。なぜ難易度は上昇を続けているのか?

難易度は13日正午(協定世界時)、過去最高となる「17.35T」に到達した。Bitcoin.comによると、前回の調整時(7月1日)につけた「15.78T」から9.89%上昇した。

ビットコインの価格は7月に入り、9100ドル〜9500ドルの狭いレンジで推移する一方で、ハッシュレートは13日に記録的水準に上昇。マイニングに対する報酬が半減した5月以降、最新鋭のマイニング機器への投資が伸び続けていることを示している。

中国の雨期の影響

「中国・四川省が雨期を迎える間のネットワーク難易度の上昇は、ここ数年毎年起きている」と中央アジア最大のビットコインマイニングのホスティングプロバイダー、ビットリバー(BitRiver)のドミトリー・ウシャコフ(Dmitrii Ushakov)氏は話す。雨量が増える時期、中国のマイナーは比較的に安い水力発電の電力を使用してマイニングを行う。

中国は世界のマイニング能力の約65%を保有すると言われるが、同国における新型コロナウイルスの感染拡大によるサプライチェーンやビジネスへの影響は、払拭されたと、ウシャコフ氏は言う。

「過去2カ月間にわたって、出荷されたマイニング機器の数は急増し、その多くは現在オンライン状態にある」(ウシャコフ氏)

生き残り続ける旧世代マシン

ビットコインのハッシュレートが上昇した要因は他にもありそうだ。マイニング報酬の半減期前、ビットメイン(Bitmain)社製の「アントマイナー(AntMiner)S9」のような旧世代のマイニング機器は、利益を上げることが難しく、まもなく撤去されるだろうと考えられていた。しかし、現実と予想は一致しなかった。

ビットコイン・マイニングプール「BTC.TOP」のジャン・ジョアCEOによると、旧世代危機は低電圧モードにすることで、利益率を改善して稼働させることが可能だという。

夏の雨期の間、中国南西部の電力料金は1キロワット時あたり約0.03ドルという低価格になるが、ビットコインの現在の価格と記録的に高い難易度によって、アントマイナーS9は利益を出すことは難しい。しかし、ファームウェアをアップデートすれば、電力消費量をカットでき、利益率を20%改善することができる。「アンダークロック」と呼ばれる手法だ。

利益率を20%改善できるとは言え、実際、アンダークロックを行ったアントマイナーS9は、電力料金がたとえ0.03ドルであっても、利益は24時間で0.5ドルに満たない。

増えすぎたマイニング施設

薄利にもかかわらず、旧世代の機器を使うマイナーが多い理由の1つは、昨年以降に新たに建設されたマイニング施設の余剰が原因かもしれない。通常、中国南西部のビットコインマイニング施設の運営者は、特定の期間、一定量の電力供給を水力発電所から確保する。

「マイニング施設は(顧客に提供する)電力料金を0.03ドル以下、さらには0.02ドル以下に下げて、顧客を獲得しようとする」とジャン氏。あるいは、契約した電力は使い切るか否かにかかわらず、発電所に支払わなければならないため、自分たちでマイニングを行う施設もあるという。

一部の旧モデルは十分な採算が取れない状態が続いても、稼働を停止していないだろう。ジャン氏は、雨期が終わる10月頃に旧世代機器は段階的に撤去されると予想する。ビットコインの価格が大きく変動しなければ、夏を通してハッシュレートが変化することはないだろう。

また、ジャン氏は「その後、新たに設置された強力なマシンが生み出すハッシュレートは、S9のような旧世代マシンの撤去による低下を相殺できない可能性がある。そうなれば、マイニング難易度は下がり始めるだろう」と述べた。

翻訳:新井朝子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:CoinDesk archives
原文:Bitcoin Mining Difficulty Sets New Record High 2 Months After Halving