キャッシュレス決済・QRコード統一規格「JPQR」は普及するのか──全国展開スタートも手数料負担に『差』

キャッシュレス決済・QRコード統一規格「JPQR」は普及するのか──全国展開スタートも手数料負担に『差』

キャッシュレス決済の利用が増える中で、特に競争が激しくなっているQRコード決済。複数の企業のコード決済を利用できる統一規格「JPQR」は、これまで地域限定で導入されていたが、2020年7月から全国展開が始まった。総務省は7月14日、その普及を推進するため、吉本興業所属のお笑いコンビ「銀シャリ」を広報大臣に任命するイベントを開催した。

総務省は10万店の導入を目指すというこのJPQR。主要な「Pay」サービス事業者は参加しているものの、一部加盟店手数料の負担の面で、決済事業者の足並みがそろっていない。

「QRコード決済アプリの利用率は48%」インフキュリオン調査

6月末まで続いたキャッシュレス・消費者還元事業や、新型コロナウイルス感染拡大で外出の自粛、テレワークが浸透したこともあってか、キャッシュレス決済の利用は順調に増えている。

ぐるなびが6月に全国1000人を対象に行った調査では、「クレジットカード」、「電子マネー/QRコード決済」ともに全体の60%以上が週1回以上利用しており、「今後もキャッシュレス決済利用を利用したい」と回答した人の割合は91.4%だったという。なおコロナの感染拡大前後で、「現金に触れることに対して衛生上の抵抗がある」と答えた人の割合は27.2ポイント増えたそうだ。

またフィンテックスタートアップのインフキュリオンも6月末に調査を実施。こちらは全国2万人を対象に調べており、QRコード決済アプリの利用率は48%と約半数に上ったという。特に2019年3月には利用率が12%だったため、1年3ヵ月で36ポイントも増えたことになる。この調査では、クレジットカードの根強い支持率と、電子マネーの利用率が増えていることも分かっている。

インフキュリオン「決済動向2020年6月調査」

キャッシュレス・消費者還元事業は終わったものの、秋にはマイナポイント事業が控えていること、国がキャッシュレス比率をより高めたい意向であることから、今後もQRコード決済アプリの利用を含めキャッシュレス決済の件数は増えるだろう。

だがQRコード決済が今以上に広がるために越えなければいけないハードルが、「店舗側の負担」の問題だ。

複数のQRコードを表示してごちゃつくレジ周り、店員教育のコスト……

ご存じの通り、QRコード決済アプリはたくさん生まれている。au PAY、d払い、FamiPay、PayPay、メルペイ、ゆうちょPay、LINE Pay、楽天ペイ……このほかにもまだあるが、それぞれアプリは異なる。

たとえばQRコード決済の方式は大きく2種類ある。一つは店舗がコードを提示してそのコードを消費者が読み取る店舗提示型の「MPM方式」(Merchant Presented Mode)、もう一つが、消費者が決済用コードを提示して店舗側がコードを読み取る利用者提示型「CPM方式」(Consumer Presented Mode)だ。

複数のアプリをスマホをインストールしている人も多いだろうが、とはいえ「よく使うアプリ」は絞られてくるものだ。たとえばスマホのキャリアや生活圏にあるコンビニ・ドラッグストアなどで使いやすいアプリが異なるからだ。消費者の側は、複数のアプリをスマホに入れても、使いたいものだけ使えばいい。

大変なのは店舗側だ。いずれのサービスも似ているがアプリや使い方は異なる。店舗は導入、店員教育、オペレーションのコストがかかってしまう。さらには、それぞれのサービス用のQRコードをレジ周りに展示する必要もあり、ごちゃごちゃしてしまうのもデメリットといえるだろう。

こうした状況を改善すべく進められているのがJPQR事業だ。キャッシュレス推進協議会が2019年3月、統一QRコード・バーコード(JPQR)の仕様を策定。総務省や経済産業省が同協議会と連携してJPQRの普及を促進をしてきた。2019年8月からいくつかのPayサービスがJPQRに準拠したほか、和歌山県、岩手県、長野県、福岡県の4県では(のちに栃木県も参加)、実際の店舗で先行して利用されていた。

JPQRに申し込むと、店舗が複数のQRコード決済を受け付けられるようになる。こうした点はたしかに便利で、これらの県では約7000店が利用したという。

手数料率に差をつけるPayPay

「JPQR」広報大使任命式で登壇した大臣官房総括審議官の秋本芳徳氏(運営事務局提供)

そのJPQR事業がいよいよ全国で展開されることになった。6月22日からは店舗からの申し込み受付が始まり、7月から実際に全国での使えるようになったわけだが、普及には課題がある。それは「加盟店手数料」の問題だ。この点で、参加している決済事業者の足並みが揃っているとは言いがたい。

たとえばPayPayは、JPQRから申し込んだ店舗と、自社で独自に開拓した加盟店で「手数料率」に差をつける方針だ。日経などの報道によれば、JPQRのサイトから申し込んだ場合、手数料は2021年3月までは1.99%、4月以降は2.59%などになるという。一方、自社開拓の店舗は、売上高10億円未満なら当面無料になるという。

PayPayにしてみれば、こうした差をつけることで自社サービスを利用してもらいたいということだろう。だが旗振り役の総務省からすると、JPQR事業の主旨に沿っているとは言いがたい。

JPQR事業に参加している他のQR決済サービスの店舗の負担率はそれぞれ異なる。無料にしているところもあれば、3%程度とるところもあると報じられている。

各Payサービスの提供企業は、国が推進する統一規格に参加し消費者や店舗の利便性向上に協力しながらも、自社サービスのシェアを拡大したいというジレンマを抱えている。

そもそもQRコード決済は、ここ数年利用率が一気に増えたとはいえ、キャッシュレス決済の主力はあくまでクレジットカード。電子マネーの利用も増えているし、QRコードすら使わない決済手段が今後普及する可能性もある。QRコード決済そのものがいつまで使われ続けるか分からないが、激しいシェア争いがまだ続くことは間違いなさそうだ。

文・編集:濱田 優
画像:JPQR Webサイトより

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