「ブロックチェーンビジネス投資の3つの着眼点」gumi國光会長がオンライン講演【ブロックチェーン推進協会・コンテンツ協会】

ブロックチェーンコンテンツ協会(BCA)の國光宏尚代表(gumi会長)が7月17日、「ブロックチェーン×VRが実現する、デジタルコンテンツの新しい経済圏とは?」と題してオンラインで講演した。同協会と、ブロックチェーン関連企業の業界団体ブロックチェーン推進協会(BCCC)のコラボイベント。國光氏はブロックチェーンビジネスに投資する際の着眼点について説明したほか、ブロックチェーンゲームが普及する上で必要なこと・課題などについての考えを述べた。

「新しい体験や見たことのないUI、UXをイチから構築した企業が勝つ」

國光氏が代表を務めるブロックチェーンコンテンツ協会(BCA)は、増え続けるブロックチェーンを活用したコンテンツについて、安心して利用できるよう事業者向けのガイドラインを策定したり、勉強会やセミナーを開催したりしている業界団体。ブロックチェーンゲームの開発会社や、ブロックチェーンを活用したアート管理サービスの開発会社などが名を連ねている。

一方のブロックチェーン推進協会(BCCC)は、より広くブロックチェーンビジネスに関わる企業が参加しており、代表理事はアステリアの平野洋一郎執行役員 社長CEOが務めている。

國光氏は冒頭、自社のビジネスの概要や考え方について説明。現代のビジネスで勝っている企業は、過去からの延長線上にあるものではなく新しい体験や見たことのないUI、UXなどをイチから構築したところだと指摘。自社でも「新テクノロジーファースト」を掲げ、スマホやXR(VR、AR、MRなど)、ブロックチェーンといった新しい技術や媒体でしかできないこと、そのテクノロジーならではのものを創造しようとしていると話した。

「すべてのエンタメ会社がサービス会社になった」

國光氏は数多くのブロックチェーン関連の事業への投資を手掛けているが、その際に注目するポイントとして、「トラストレス×自律的×非中央集権」「唯一性×トレーダブル×資産性」「トークンエコノミー」の3つを挙げた。

國光氏講演資料より

現代のインターネットのビジネスで強いのはトラストを担保する中央集権型のプラットフォーマーで、そこが手数料を取るというモデルだと説明。「トラストレス×自律的×非中央集権」という考え方は、ユーザー同士がつながることで「(プラットフォームを)中抜きしようという動き」とたとえた。

また「唯一性×トレーダブル×資産性」の項では、「ブロックチェーンのすごさは改ざんができなくなったことと言われるが、そこに価値があるのではない」とした上で、重要なのはコピーできないデジタルデータというものを生んだことだと指摘。「従来コピーできるものだったデジタルのデータに唯一性を持たせられたからこそ価値、資産性を持ち、トレードの対象となった。それがNFT(ノンファンジブル・トークン)であり、そこにこそDappsの本質がある」と説明した。

その上で、エンタメビジネスで過去に売っていたものは「データ」で、音楽業界はCD、映像業界はDVD、ゲーム業界はパッケージを売っていたが、コピーのコストはゼロに近づき、売れなくなったのだと解説。そこで起きたこととして「すべてのエンタメ会社がサービス会社になった。ゲーム会社はゲームを売ってるのではなく、サービスを提供している。これはNetflixも同じだ」などと述べた。

ブロックチェーンはデジタルデータの供給量を制限でき、データに価値を持たせられる

デジタルデータの唯一性について、仮想世界をつくって遊べるゲーム・マインクラフトを例に、「すごい家を造った人がいたとして、その家がブロックチェーンで管理されて世界に一つしかないこと(唯一性)が証明されれば、(高い値段で)買う人いるかもしれない」と述べ、これはゲームのアバターや武器などのアイテムについても同様だとした。

さらに、「モノの価値は需要と供給で決まる」と述べ、ZOZO創業者の前澤友作氏が所有するバスキアの絵を例に、「バスキアの絵のデジタルコピーはいっぱいあるが、それには価値がない。だが本物には100億円以上のもの値がつく」と指摘。

これらを踏まえて、ブロックチェーンの長所は、デジタルデータの供給量を制限できる点で、これによってデジタルアセットに価値を持たさられるようになったと説明した。

ブロックチェーンゲームが普及するために越えなければいけない壁

ゲームなどのブロックチェーンコンテンツの普及を阻む課題として、「イーサリアムがないと買えないこと。そのためには暗号資産取引所に口座つくらなければいけないこと」を挙げ、現状では、取引所の厳しいKYC(本人確認)を経なければNFTにアクセスできないことを問題視した。

ブロックチェーンコンテンツが広がるために必要なことについて、サービスなどが一気に普及する際のきっかけは同じであると前置きした上で、ゲーム、コミュニケーション、アダルト、犯罪、軍事の5つを挙げ、「最後の3つはともかく、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ(といった著名な経営者)もゲームをやった。インターネットでもゲームやコミュニケーションがあったからこそ広がった」と重要性を説いた。

さらに、新しいテクノロジー(に支えられたサービス)は初期は不安定なので使いづらいものと述べ、「それを理解して使ってくれるユーザーがいるかどうかも普及の上で重要だ」と力説。その例として、昨今注目されているビジネスのジャンルであるBtoBのSaaSについて取り上げた。SaaSが盛り上がっている理由は、クラウドが成長してきて安定性を増したことだと説明し、「AWSも最初は使いづらかったが、それでも使い続けるユーザーがいてくれたからこそ次第にサービスが洗練され、Azureとともに成熟して使いやすくなった」と振り返り、こうした歴史こそがSaaSビジネスの隆盛につながっているとの見方を示した。

「作りすぎると価値が暴落するのは銀行券も同じ」

講演の後、國光氏は同協会ゲーム部会の岡部典孝部長と掛け合いながら、会場からの質問にこたえた。

質問の中には、ゲームのキャラ・アイテムについて、「ゲームを運営する側の企業なら、価値のあるアイテムをいくらでも作れる(操作できる)のでは?」というものがあったが、國光氏は、「中央銀行が銀行券を擦りまくれば法定通貨の価値が暴落するのと同じ。供給量が制限されているからこそ価値があり、それはビットコインも同様だ」として、運営が自らアイテムの価値を下げるような行為をするはずがないと示唆した。

また中央集権型と非中央集権型のどちらの仕組みが正しいかという命題について、「これは難しいが、どちらにしても長いこと続くと制度疲労が起きてダメになる。緊張感をもってブラッシュアップし続けることが大事」として、中央集権型・非中央集権型いずれも長所があり、時代と環境によって選択されることが必要との考えをほのめかした。

文・編集:濱田 優
画像:ブロックチェーン推進協会/ブロックチェーンコンテンツ協会 ライブ配信より