コインベース、60人が退社へ──「政治色を持たない」CEO方針が生んだ結末

暗号資産の取引所世界大手コインベース(Coinbase)は結局、1200人の従業員のうち60人(5%)を失った。ブライアン・アームストロングCEOが発表した同社の新方針は、緊迫した政治状況に企業はどう対応すべきかについての議論を巻き起こした。

CoinDeskが入手した社内文書によると、アームストロングCEOは同社従業員のうち5%が先週提示した退職条件に応じたと社員に告知した。退職希望の締め切りは10月7日で、「他のいくつかの交渉」を終えた後、この数字は高くなると考えていると同CEOは社内文書に記した。

「我々の“政治色を持たないカルチャー”が、実際には何を意味するのかを明確にしようという議論が数多く行われていることは承知している。チーム全体で理解しようと皆が協力し、互いをサポートしている姿を見て感激している。乗り越えることは簡単ではない。だが結果として我々はより強く、団結したチームになるだろう」

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アームストロングCEOは、運営グループやマネージャーが新しいミッションをより良く理解できるような「もっとうまいやり方」があったかもしれないとも述べた。退職に応じた人の大部分は、社内の「少数派の人たち」ではなく、コインベースは「誰もが一員であると感じられる、多様性があり、インクルーシブな環境を築いていけるよう、この問題に注視し続けていく」と文書に書いている。

従業員の声

匿名を条件に取材に応じたコインベースの従業員は、退職に応じた社員はカスタマーサポートのような人材の流動性の低い職種ではなく、大部分がエンジニアだと語った。

もう1人の従業員は、退職した人たちの職種はかなり均一に分散していると述べ、退職者の人数を聞いて驚いたと語った。

「退職条件が良すぎるのではないかと心配していた」

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10月8日付の社内文書でアームストロングCEOは、新しいミッションは、従業員が「政治的問題が存在しないふりをする」必要があるという意味ではないと説明した。

「どのチームもそうであるように、我々は困難な時期にお互いを支え合い、最近の出来事について会話をする。会社として、ミッションを超えた、より広範なアクティビズム(改革主義、行動主義)には関与しないという決定を行ったに過ぎない」

リーダーたちも混乱

従業員は、コミュニケーションツールのスラック(Slack)の社員全員が参加しているチャンネルで政治の話をすることは許されず、政治の話をするためには別にチャンネルを作成しなければならない。だが何が政治的で、何が政治的でないかは不明確だ。

ある従業員は「先週から何も明確にはなっていない。リーダー的ポジションにいる人たちも、誰も定義できないようだ。他の従業員と同じ状況で、ブライアン(アームストロングCEO)の限られた発言から真意を引き出そうとしている」と述べた。

アームストロングCEOは文書の中で、なにが政治的なものかを分けるのは「曖昧な境界線」であることを認識していると述べた。

「我々の目標は、違反を見つけることではなく、明確になった期待に応えている従業員をサポートすること」

アームストロングCEOはまた、コインベースのカルチャーは将来、同社の成長とともに新たに示され、明確にされると述べた。

「#OneCoinbaseとして、すべての人と企業に経済的自由をもたらすという我々のビジョンを追い求めていくことにワクワクしている」とアームストロングCEOは文書を締めくくった。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸、佐藤茂
写真:ブライアン・アームストロングCEO(CoinDesk archives)
原文:5% of Coinbase Employees Take Severance Offer Over ‘Apolitical’ Stance
取材協力:Zack Seward